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つむ
2024年2月19日 05:03
青い空と大きな魚が泳いで光るところが見たい。水槽ではなくあの懐かしい大きな海を泳ぐところが見たい。なのに一昼夜水槽の中ばかりを眺めている。水槽だと思ったらただの生簀。明日には命はないだろう随分立派な蟹や海老。明日もあるだろう水草。なんだかなぁ。先日まではよく泳ぐ貝だった私も今では石ころとなんら変わらない。キラキラ光る自慢の殻は水草が張り付いて重くなり気を抜けばガシガシとこじ開け
亀井惺司
2024年2月3日 23:25
レイブンとその側近ブルーシャークの前に、白いパナマハットを被り、銃を持った長身の男が立っていた。「それで、俺に何をして欲しいと?」男は銃を手でくるくると回しながら言った。「スパグナムよ。お前を見込んでの頼みだ。ユウカゲ村にかつて『繭』の戦士を輩出したアキツ家がある。そこの一人息子、アキツ・リュウジを殺してこい。お前の力を使って村でひと暴れしてみたいと思わないか?」「お安い御用さ。ちゃちゃ
漆
2024年2月16日 20:08
※其の八からの続きです。気軽にお付き合い下さい。 稽古終了後。いつも通り1年生の私たちが道場の清掃をしている間、先輩方は反省会や着替えてさっさと帰宅する。今日は試合稽古だったので1年生同士でもバチバチとやりあった。なので、いつもとちょっと違った空気を感じながら私はモップで床を拭く。「くっそ! 先鋒の座を藤咲に奪われちまったか」モップに力をいつも以上に入れて八神が床を拭く。「でも、蓮
吉岡果音
2024年2月13日 21:26
第九章 海の王― 第111話 永遠の関係、それが幻想だとしても ――「アンバー様。あたたかいうちに、どうぞお召し上がりくださいませ」 それは、深海でのパールとの戦いの、一週間ほど後のある日。 紫の空に、ぽつりぽつりと星が生まれ始める。食欲をそそる肉の匂いを運ぶ、たなびく白い煙。 白銀は、主人であるアンバーのためにと夕餉の準備をしていた。「アンバー様。この木の実のスープもどうぞ。滋
2024年2月20日 21:45
第九章 海の王― 第112話 最期の時間くらい ――「これは、あのときの術……」 四天王パールは、うつろな瞳で呟いた。 四天王アンバーの術「封印の鎖」が、パールの尾の部分からすぐに全身へと広がっていく。 やがて、パールの動きが止まった。「よかった……。一応、術が効いているようですね」 冷静な声でアンバーは呟く。「この前のときより、私自身の状態はよいですが、やつの力自体が格