亀井惺司

恐怖のカイジン一族と虫、魚、鳥、花の強化服を纏った戦士たちの戦いを描いた王道ヒーロー小…

亀井惺司

恐怖のカイジン一族と虫、魚、鳥、花の強化服を纏った戦士たちの戦いを描いた王道ヒーロー小説「バタフライマン」、怪獣バトルコメディアドベンチャー小説「ギガントシャーク」を連載しています。

最近の記事

ギガントシャーク 第六話 隻眼事変

 ギガントシャーク一行はギリシャ共和国に向かっていた。大型クルーザーと巨大な鰭が波を切っていく。シャークは卵焼きの味が忘れられないようで、上機嫌だった。 「なぁマーク。教えてくれよ。豆ツブの料理って奴をさ。」 シャークは船に擦り寄りながらマークな尋ねる。 「まぁ待て。クソデカ食材がまた手に入ったらだ。つまり怪獣を倒さなきゃだな。」 「よし!殺しまくるぜ。」 「物騒な言い方だな。」 「ミスティさん。次の行き先は?」 「ギリシャよ。神話に出てくる怪物の多さから見てあの国はきっと怪

    • ギガントシャーク 第五話 鏡島の伝説

       ギガントシャーク一行はアリゾナからまた無茶な航路で日本海にある孤島、鏡島に向かっていた。シャークはサメたちを連れ、気持ちよさそうに海原を行く。船の中の厨房ではマークが鼻歌を歌いながら料理を作っていた。 「何作ってんだ。」 ブレットが船の厨房に入って来る。 「卵焼きだよ。前に日本で食べて気に入って、作り方を覚えたんだ。できたのがそこにあるから感想を聞かせてくれ。」 「どれどれ。ほう。こりゃいける。前日本に来た時行った朝メシだけ出してくれる食堂の味に似てるな。」 「そう。あそこ

      • ギガントシャーク 第四話 暴角、襲来

        この日、マーク、ブレット、ミスティはジープに乗ってアメリカ、アリゾナ州の広大な荒野を走っていた。 「ふぅ。アメリカに戻るのは久しぶりだぜ。」 「俺たちずーっとアフリカらへんにいたからなぁ‥」 「楽しかったなぁ。ライオンのオデコにタッチしたり、カバにギリギリまで近づいたり‥」 「ブレットのやることはいつも危なくてヒヤヒヤするよ。」 「今はそれより危ない仕事してるけどな。バカでかいスーパー害獣と戦ってる。」 「そしてコイツも一緒。」 赤い砂の荒野から巨大な背鰭が飛び出す。ギガント

        • ギガントシャーク 第三話 翼ある蛇

          ギガントシャークとサメたち、ミスティ、ブレット、マークは南米グアテマラに向かっていた。この地のアティトラン湖周辺でコンドルほどもある巨大なスズメバチが確認されたのだ。 「今度はそのデカい虫を退治しに行くのか?」 ブレットがミスティに尋ねる。 「いいえ。これはおそらく前兆に過ぎないわ。詳しいことはまだよくわかっていないのだけれど、怪獣が現れる前には巨大な節足動物も姿を表すことがあるの。まるで古生代にいたようなね。」 「本当かなぁ‥」 マークが首を傾げる。 「本当だぜ。オレ様の体

        ギガントシャーク 第六話 隻眼事変

          バタフライマン 第19話 深紅の暴れ薔薇

             暗い地下の基地の中、誰も座っていない玉座の前で青いローブの女、ブルーシャークは主君が死ぬ間際に残した黒い羽根を握りしめていた。その顔は悲しみと怒りと狂気が混じり合ったような鬼気迫る者であった。 「レイブン様が…レイブン様が逝かれてしまった‥」 ブルーシャークはそう一人呟いた。と、その時 「お邪魔しまーす。」 おかっぱの頭に緑の縁の丸眼鏡をかけ、だぶだぶの白衣を来た少年が入って来た。 「あれあれ~。レイブンは?」 少年はおどけた口調で言う。 「ツリーフロッグ!何の用でここ

          バタフライマン 第19話 深紅の暴れ薔薇

          ギガントシャーク 第二話 その名はギガントシャーク

          エジプト近海にて 「お、おいサメ!船にぶつかるぞ!」 「何だって?ぬぉっ!」 ちょっとした客船ほどの船が目の前にあった。甲板には背の高い金髪の女性と白衣の科学者たちが何人かいる。 サメ怪獣は船を慌てて避けようとする。 「ちょっと待ってちょうだい。」 女性がサメ怪獣を呼び止めた。 「あなた、言葉はわかる?」 「あぁ。話せるぜ。」 「私たちに同行してくれる?」 「オレ様にはこれから行くところがある。悪いが相手してる暇は‥」 「どこに行くの?」 「日本の北海道だ。怪獣が目を覚ましそ

          ギガントシャーク 第二話 その名はギガントシャーク

          ギガントシャーク 第一話 「怪獣の目覚め」

          20xx年、大西洋沖合ー ある漁船がこれまでに前列のない異常な現象を確認した。突如起きた嵐の中、漁船は港へと向かっていた。その途中、魚群探知機にとんでもない数の大魚の群れが映り込んだのだ。 「これは‥」 船長は慌てて海の方を見た。そこにあったのは見たこともない光景だった。海面から突き出した無数の逆三角の背鰭ーサメの大群だ。 ホホジロザメ、アオザメ、イタチザメ、シュモクザメ、巨大なジンベエザメまでもが群れをなしてまっすぐ進んでいく。船員たちは茫然とその様子を見つめていた。 「お

          ギガントシャーク 第一話 「怪獣の目覚め」

          バタフライマン 第18話 銀の海豚と邪教の漁村

           レイブンが倒れる少し前、遠洋に浮かぶワダツミ島では、記録的な不漁が続き、多くの島民が飢えていた。ある曇り空の日、漁師たちが少ない獲物にため息をつきながら網を引いていると、突如として海上に人影が現れた。その人物は長身でどこの国の物ともつかない奇妙な服を纏っていた。その服には鯖の模様に似た紋様が刻まれており、彫りの深く、青白い不気味な顔をしていた。 「お、おい。あれ。」  一人の漁師がそれに気づき、水平線を指さす。 「怖がることはない。私は海の使い、そして鯖の化身だ。そな

          バタフライマン 第18話 銀の海豚と邪教の漁村

          バタフライマン 第17話 大鴉、堕ちる。

          レイブンはついにブルーシャーク以外の部下を全て失った。もはや玉座にふんぞり返っている場合ではなかった。 「吾輩は行くぞ。」 レイブンは立ち上がった。 「ご武運を祈っております。レイブン様。」 ブルーシャークは一言そう言った。彼女はレイブンの勝利を確信していた。彼を神格化していたからだ。彼の絶対的な強さの前には「繭」の戦士もかなうはずがない。それが彼女の揺らぐことのない確信だった。 (まずは貴様からだ‥カラスマ・ミドリ!)   街のはずれの国防軍基地にはいくつもの戦車や戦闘機が

          バタフライマン 第17話 大鴉、堕ちる。

          バタフライマン 第16話 銀の海豚と化け鯨

          港に一組の男女が佇んでいた。女の方は隣の男を憧れの目で見つめていた。彼女は数か月前にこの男と交際し始め良好な関係を築いていた。女は近いうちにこの男と結婚したいと思っていた。彼女の両親もそれを快く歓迎してくれた。男は女の耳元で愛の言葉をささやき、急に女の体を抱き寄せた。大柄な男はそのまま堤防の上に上がると、女を抱きかかえたまま ―海に飛び込んだ。 そのころ、女の両親は彼女が男と共に出かけて行ったきり、一向に帰ってこないことを不思議に思っていた。彼女は夜遊びをするような人間ではな

          バタフライマン 第16話 銀の海豚と化け鯨

          バタフライマン 第15話 野生児

           夜のメタモル・シティの通りで、酔っぱらった男がフラフラとした足取りで帰路についていた。彼は呑気に鼻歌を歌いながらマンホールの蓋の上を通りすぎた。すろと、足が動かなくなった。 「ん?」 男は腑抜けた声でそう言いながら足元を見た。そして恐ろしいものを目にする。先程のマンホールの蓋が開き、その隙間から毛むくじゃらの細い腕が出て、男の足首を掴んでいたのだ。 「な、何だこりゃ!」 男は抵抗も空しくそのままその手にずるずると引きずられて行き、マンホールの下へと消えていくのだった。 下水

          バタフライマン 第15話 野生児

          バタフライマン 第14話 鉄血の老戦士

          ミドリカワ樹海の真ん中を通る山道を二人のハイカーの男が歩いていた。かなりの距離を歩いたところで、一人が疲れを感じて立ち止まった。そしてふと樹海の方を見た。そしてそこにあり得ないものを見た。青白いドレスを着た貴婦人が樹海の奥に立っていたのだ。こんな場所で、行方不明者も時折出るこのミドリカワ樹海にそんな服装の人物がいるはずがない。彼は自分が夢か幻覚でも見ているのではないかと思った。彼はその貴婦人の顔に強い恐怖感を覚えていた。その目は人間の物ではなかったのだ。まん丸でどこを見ている

          バタフライマン 第14話 鉄血の老戦士

          バタフライマン 第13話 茜さす弓矢

           レイブンとその側近ブルーシャークの前に、白いパナマハットを被り、銃を持った長身の男が立っていた。 「それで、俺に何をして欲しいと?」 男は銃を手でくるくると回しながら言った。 「スパグナムよ。お前を見込んでの頼みだ。ユウカゲ村にかつて『繭』の戦士を輩出したアキツ家がある。そこの一人息子、アキツ・リュウジを殺してこい。お前の力を使って村でひと暴れしてみたいと思わないか?」 「お安い御用さ。ちゃちゃっと片付けてくるぜ。」  スパグナムと呼ばれた男はそう言うと、またも銃を手で回し

          バタフライマン 第13話 茜さす弓矢

          バタフライマン 第12話 足長屋敷の怪

           メタモル・シティ大学では前期の講義が終わり学生たちが憑き物が落ちたような顔で門の外に出て行く。カラスマ・ミドリの教え子の一人であるヒイラギ・ルミは大学が休みの間、収入を得ようと思っていたため、アルバイトを探していた。そして電柱に張られたこんな張り紙を見つけた。 「女中求ム 高給 経験不問 ○○番地ノ西洋館ニテ   足長」  ルミは怪しさの漂うこの張り紙を一瞬訝しんだが、その給料は今まで見てきたどの仕事よりも高給だった。そして意を決してその家に行ってみることにした。そのあくる

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          バタフライマン 第11話 悲しみの海の闘士

           南の海に浮かぶマルテルーズ島にジョゼという漁村があった。藁でできた家が立ち並び、島民のほとんどが漁業に従事している。ここにヒアワサ・ペズという青年がいた。ヒアワサは村でも評判の銛の名手で、その腕前は百発百中であった。今日も彼は魚籠の中にどっさりと入ったブダイやハタを得意げに持って海から帰って来た。桟橋に上がると、筋肉質な坊主頭の男が笑顔でヒアワサに話しかけた。 「今日も大漁だな。ヒアワサ。」 「お前こそ結構な量を捕ったじゃないか。」  この男はアントンと言って、ヒアワサの子

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          バタフライマン 第10話 先代蝶戦士の初陣

          メタモル・シティが新都市計画によって開発される何十年も前、この地はアケビという農村であった。畑と農家が点在する何の変哲もない穏やかな村で、店と言えば個人経営の商店のみ。その中心の一際立派な西洋風の屋敷が、カラスマ家であった。そこで暮らしていたのが。若き日のカラスマ・キイチである。彼の父にしてミドリの祖父、カラスマ・カヅキは大変尊敬を集めていた人格者であり、地主にして莫大な資産を持ちながらそれを私利私欲のために濫用せず、慎ましやかな生活を送っていた。その息子であるキイチもまた、

          バタフライマン 第10話 先代蝶戦士の初陣