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静寂都市サッポロ

ギュッ ギュッ ギュッ ギュッ
ミシ ミシ ミシ ミシ

冬は毎日、降り積もったフカフカの雪を、防滑のビジネスシューズで踏み鳴らし出勤した。

あの日々を、時折ふと思い出す。

シーーーーーーーーーーーーーーン

冬の札幌の夜は猛烈に静かだ。
雪が振動を吸収するからだという。

あの夜がたまらなく好き。

夜中、小腹が減ってコンビニまで歩く。
吐く息が白すぎる。
VAPE吸ってんのかってくらい。

メリメリメリメリメリメリメリメリ

全ての車がEV車の如く静かに走る。

スターウォーズに出てきても違和感ないくらいデカい除雪車が作業している時は少しうるさいが。

すすきのに出かけてみよう。

街にはうるさい静寂がある。

道民は雪の日に傘をささない。
フードをかぶって歩くのだ。
服や髪についた雪は手ではらえば落ちる。
これぞパウダースノー。
これを知ってしまうと関東の雪は大根おろしにしか見えない。冬にさんまが食いたくなる。

フードをかぶっていると、雑踏の音がボンヤリとだけ聞こえてくる。うるさいけど静かだ。

幻想の中にいるような気分。
あ、鼻水が垂れてきた。

寒いというより冷たい。
体がブルブル震えることは少なかった。
代わりに顔が白くなり鼻が赤くなる。

フードをかぶる人の群れを、ニッカおじさんが優しく見守る交差点。路面電車が走る。旧型車両のほうが趣がある。マシンの音は嫌いじゃない。

白銀の世界にセコマのオレンジが映える。
あのカツ丼と100円パスタに何度救われたことか。セイちゃんは命の恩牛だ。

静寂都市サッポロ。

雪が溶けるまでの間だけ、
この世に現れる至福の楽園。

あゝ帰りたい。北海道の夜。

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