いきなりプロポーズ。大きな鯛をポンと置いて、よかったら食えよ、おれ、おまえのこと、好いてるから嫁になってくれや。
漁師町の海岸で網を手直しするお婆ちゃんがいた。この町で
民宿をやっている多美子さんだ。
この多美子さんが、
「絶対に主人には内緒だよ」
と言いながら、昔話をしてくれた。
「自分で言うのは、恥ずかしいけど、わたしゃ、若い頃は、この町一番のベッピンさんと呼ばれた。だから、今の主人の前にも恋人はいたよ。漁師でね、赤銅色の顔をしたそうそう、リポビタンDの宣伝でファイトーって言ってる兄ちゃんのような男やった。名前は、えーと、これは内緒、秘密のアッコちゃんや。もう正月も1週間後に迫った年