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今年の秋はじめて知った、金木犀の味

金木犀を食べたことってありますか?

夜が少し過ごしやすくなってきて、リンリンと虫が鳴き出して。帰り道にふと、どこからか漂ってくる香り。毎年「ああ、いよいよ秋だ」と思うきっかけ。

そう、あの金木犀。

私は今年はじめて食べました。
それは、金木犀シロップを使ったケーキ。

初めは正直、よくわからなくて。
生地のバターの香りやクリームの甘さを味わいながら、「うーん、金木犀はどこにいるんだろう」と噛みしめること数秒。

ふわっと、たしかに香ったんです。
「いる!金木犀!」と、思わず声に出してしまうほど。

ひとくちずつ、その余韻を確かめるようにいただきました。金木犀のシロップを味わう、初体験。


それは金木犀の“味”というべきか、“香り”というべきか。でも、味と香りって密接につながっていますよね。ほぼ同じと言ってもいいかもしれない。


昨年の終わり頃、私は流行りのウイルスにかかって、まったく匂いがしなくなりました。

楽しみにしていた、良い香りのシートマスク。蓋を開けても、何もしない。あれ?控えめなやつなのかな。チョコレートの大袋を開ける。ひとつ食べる。なんだか違和感。そういえば、これって袋を開けただけですごく香りがしなかったっけ?夫に渡してみる。「めちゃくちゃチョコの香りするよ」

…ああ、これが噂のアレか。
ついになってしまった。

それから数日、食に対して全く楽しみがなくなってしまって。それは、風邪で鼻が詰まってわかりづらい、のレベルじゃない。2種類あるサンドイッチ、どっちがいい?と聞かれて、「どっちでもいい、だってどっちを食べてもわからないから」と自分で言って悲しくて泣きました。これはいつまで続くんだろう。クリスマスも年末年始も、何食べたって一緒じゃないか。本当に匂いがしなくなるって、こういうことなんだ。

幸い、数日で回復して、また味も香りも楽しめるようになった時どれだけ嬉しかったか。
もう二度とこんな体験はしたくない、と心から思いました。


味と香りはセット。
香りあってこその食体験。

たとえばシンプルな食パンを食べた時の、ふわっと広がる小麦の香り。もちもちサクサクの食感も大切だけど、繊細な香りまで感じられた時にこそ、本当に豊かで美味しいと思うのです。

ケーキを食べて、わずかに香った金木犀を感じることができた自分は、すごく幸せ者だなと嬉しくなりました。

気持ち良すぎる秋晴れの中、外のベンチで食べた金木犀の味。
忘れられない食体験です。

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