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読書、連想文としてのリアリティー

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本を読んで、感じる。考える。そして、何かしら自分の生活に影響がではじめる。書かれていたことを実践したり、日常の味方が変わったり。考現学を知って、日常観察の楽しみが増えた。芸術家の… もっと読む
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記事一覧

素材と遊ぶを実践する 「ゼロからトースターを作ってみた」読書連想文

素材と遊ぶを実践する 「ゼロからトースターを作ってみた」読書連想文

表紙には一見何かわからない白めのドロドロ。その内側には錆び色の塊が写し取られた写真がある。著者のThomas Thwaitesが言うにはこれは「トースター/The Toaster」らしい。トースター(彼にとってはポップアップ式の)が彼にとっては現代資本主義の象徴らしく、それをじぶんの手で作る、その挑戦と記録がこの本である。

村井理子さんの軽快な訳もあって、一度本を開いたら、ページを捲る手を止める

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「人新世の資本論」に関する実践試行箱

「人新世の資本論」に関する実践試行箱

「人新世の資本論」を読んだ。冒頭の文章は、315pを原文ほぼそのままで、私なりのエッセンスを加えたものだ。

それぞれの章ごとに気になったこと、や、思いついたことをノートを残しておく。この投稿はまさしくノートであり、都度、更新していこうと計画している。

総評(一読目)2023/01/12

一度読み始めてしまえば、非常に読みやすい。マルクスについて不勉強なので、著者の議論や、そもそもの単語を誤解

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深呼吸の必要、急がないこと。

深呼吸の必要、急がないこと。

いつも持ち歩いている本がある。鞄にお守りのようにしてしまいこんで1年が経つだろうか。『深呼吸の必要』、長田弘さんの詩集だ。とある日の昼過ぎ、高円寺の小杉湯にいった。その日は、たまたま小田原の知り合いの農家さんの育てた柑橘のお風呂があって、切なさを取り除いた懐かしさを感じた。銭湯の休憩スペースでは、何冊かの本が売られていて、買ったのがこの本だ。117ページには大きな余白の中に二つの柑橘の挿絵が描かれ

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「明るい部屋 / ロランバルト」喪と悲しみ、苔むす岩の信仰を断ること(読書連想文05)

「明るい部屋 / ロランバルト」喪と悲しみ、苔むす岩の信仰を断ること(読書連想文05)

日々の中に散発する悲しさがあります。愛していた人の記憶をふと思い出す。夢の中、実態のない体を抱きしめる。相手の頬に指をそえた記憶に、目が覚めて。夢遊病の中に戻りたい、そんな空虚なあたたかさと、落差に悲しさを覚えます。ロランバルトの『明るい部屋』を思い出すと、ぼくにとってそれは喪について考えることであります

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この本は写真論の古典と言われいます。写真

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「考現学入門 / 今 和次郎」読書連想文04

「考現学入門 / 今 和次郎」読書連想文04

「ブラタモリ」を愛せるような人には、ぜひ手に取って欲しい。この本から溢れ出る探究心。奇人・変人の域に達しており、南方熊楠を思い起こす。「考現学」とは、柳田國男の「民俗学」が古い昔の物や事象を扱うのに比べて、こちらはいま現在の物や事象をリアルタイムで研究する学問として創世された画期的なもの。

自殺場所分布図の作成から、道を行く人の髪型の観察、とある食堂カケ茶碗の観察など、その興味の範囲は非常に多岐

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「自分の薬をつくる/坂口恭平」読書連想文03

「自分の薬をつくる/坂口恭平」読書連想文03

パステル画家、小説家、建てない建築家、総理大臣etc...。様々な肩書きをもつ坂口恭平さん。躁鬱病と長い間付き合ってきた彼は、2019年の秋、じぶんの薬を手に入れたことによって躁鬱病の薬を断つ。そして、2020年秋。ついに1年間の間、鬱になることなく日々を過ごすことができた!とツイッターで報告していた。

この本「自分の薬を作る」は、彼自身が自分のために調合した薬のこと。そして、様々な悩みをもつ人

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「山奥ニート」やってます。 / 石井あらた | 読書連想文02

「山奥ニート」やってます。 / 石井あらた | 読書連想文02

本の紹介

携帯電話の電波も十分に入らない和歌山県の山奥。そこにある限界集落に移り住んだニートたちの日々の生活を記録したノンフィクション。著者の石井さんははもともと教員志望。教育実習先でのパワハラの経験からひきこもりに。アルバイトをするも損害を請求され、働いたことでお金が減る。普通の労働はじぶんにあってないと感じ、あるとき知ったNPO法人「共生舎」の運営する家に住むことに。のちのち、廃校となった小

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「こといづ / 高木正勝」読書連想文01

「こといづ / 高木正勝」読書連想文01

ありがたい本が届いた。ありがたい言葉と一緒に。誕生日のプレゼントに、とMさんから、この本を送っていただいた。その言葉は私の心の中にとっておく。しかし、Mさんが届けてくれたメッセージは、私が高木正勝さんに感じていることと似ていた。私は高木正勝さんの『Girls』という楽曲と映像。それに出会ったときに、心が沸き立つという体験をした。心を掴まれる。比喩ではなく、私は心を掴まれ、世界にこんな人がいたのか。

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