ぼぶちゃん.

アラサー女子。ハイボールと日本酒が好き。

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記事一覧

私と決別する日に【序章】

女は男の腕の中で素肌の温もりを感じながら無表情で彼の甘い言葉を復唱していた。 この時間が続けとも終われとも願わない。 それは女の人生に対する見解と同じだった。 「…

ぼぶちゃん.
2か月前
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小説【幸せを知る不幸】

「ハズレだったね。」 私は花の蜜を吸い終わると同じ蜜を吸っていた友人に言った。 私たちは花の密を主食にしている。 物心ついた時からそうしていたので何の不思議もな…

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小説【都合の良い幻想】

「好きです。付き合って下さい。」 3分前の出来事だった。 会社を出てから家に着くまでの最初の路切前。 顏も名前も知らない男性からのいきなりの告白。 ...言葉すらでな…

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小説【赤い薔薇】

私は赤い蔷薇の花が好きだ。 見た者を一目で惹きつけるその魅力的な赤色が堪らなく好きだ。 少し狂暴な棘を持っているけれど、そこもまたこの子の魅力。 私は一生、この…

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小説【不幸の上の幸せ】

「死ね...!!」 私は大きな手から間一髪で逃げ出した。 あれに当たったら潰されて、間違いなく私は死んでしまう... 私を殺そうとした人を見ると苦しそうな顔で腕を掻い…

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小説【生まれた使命】

私はお母さんの為に造られた。 お母さんはある日突然、この世で1番愛していた我が子を事故で失った可哀そうな人だった。 每日泣いて過ごすお母さんを見かねてお父さんが…

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小説【3周を周り終えたら】

気がつくと私は平地の上に立っていた。 此処はどこなのか、何故此処に居るのかは疎か、いつから此処にいるのかさえ、私は理解できなかった。 此処には私以外に生きてる物…

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私と決別する日に【序章】

私と決別する日に【序章】

女は男の腕の中で素肌の温もりを感じながら無表情で彼の甘い言葉を復唱していた。
この時間が続けとも終われとも願わない。
それは女の人生に対する見解と同じだった。

「つけなくていいよね。大丈夫。男の子でも女の子でも可愛いはずだよ。」

男が快楽を得たいが為だけに放った言葉ではなく、きちんと妊娠を望んでの発言だと女は理解した上でピルの飲み忘れがないことを頭の中で再確認した。

「中に出していいよ。」

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小説【幸せを知る不幸】

小説【幸せを知る不幸】

「ハズレだったね。」

私は花の蜜を吸い終わると同じ蜜を吸っていた友人に言った。

私たちは花の密を主食にしている。
物心ついた時からそうしていたので何の不思議もない。

何を基準に普通を定義するか分からないが、多分…私は普通に幸せだ。

「もっと美味しい蜜ないかな。」

花の蜜には当たり外れがある。

美味しくないものは吐き出したいくらいだが、私たちは一度吸い始めると満腹になるまで吸うことをやめ

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小説【都合の良い幻想】

小説【都合の良い幻想】

「好きです。付き合って下さい。」

3分前の出来事だった。

会社を出てから家に着くまでの最初の路切前。
顏も名前も知らない男性からのいきなりの告白。
...言葉すらでない。

おそらく私より若いだろう。

だけど、自信があるのか重く考えていないのか
余裕がある分、実年齢より上に見えるのだろうと私は頭の中で推測していた。

「聞いてますか?!」

男性は少し強めの口調で言うと私の顔を覗き込んだ。

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小説【赤い薔薇】

小説【赤い薔薇】

私は赤い蔷薇の花が好きだ。

見た者を一目で惹きつけるその魅力的な赤色が堪らなく好きだ。
少し狂暴な棘を持っているけれど、そこもまたこの子の魅力。

私は一生、この子だけを愛していくのだろう...

私は今日もあの子のご飯を買って行くために花屋に寄った。

「いらっしゃいませ。」

いつもの店員さんといつもと変わらない店内。

だが...

「今日入荷したばかりのお花があるんですよ。よかったら見て

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小説【不幸の上の幸せ】

小説【不幸の上の幸せ】

「死ね...!!」

私は大きな手から間一髪で逃げ出した。
あれに当たったら潰されて、間違いなく私は死んでしまう...

私を殺そうとした人を見ると苦しそうな顔で腕を掻いていた。

...私は人の血を吸ってしか生きることが出来ない。

いや、生きることはできる。
生きているだけなら人の血を吸う他にも方法はある。

でも、生きている喜びは愚か、実感さえも持てなくなってしまう。

何も、人に悲しい想い

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小説【生まれた使命】

小説【生まれた使命】

私はお母さんの為に造られた。

お母さんはある日突然、この世で1番愛していた我が子を事故で失った可哀そうな人だった。

每日泣いて過ごすお母さんを見かねてお父さんが私を造った。
顔も声も体格も全て〝その子〟そっくりに仕上げられていた。

だけど

「あの子はこんなんじゃなかった...!」

お母さんは毎日、私を叩いた。
お父さんはそれを知っていたが、興味がないのか言い出せないのか、見て見ぬ振りだっ

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小説【3周を周り終えたら】

小説【3周を周り終えたら】

気がつくと私は平地の上に立っていた。

此処はどこなのか、何故此処に居るのかは疎か、いつから此処にいるのかさえ、私は理解できなかった。

此処には私以外に生きてる物はいない。


ただ何処までも続いているかの様な平地と薄気味悪いくらい綺麗な橙色の空。

そして、正確に刻を刻んでるであろう時計がたくさん落ちている。

...だが不思議と恐怖も不安も感じなかった。

此処に来て3日。
いや、正確には此

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