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小説【赤い薔薇】

私は赤い蔷薇の花が好きだ。

見た者を一目で惹きつけるその魅力的な赤色が堪らなく好きだ。
少し狂暴な棘を持っているけれど、そこもまたこの子の魅力。


私は一生、この子だけを愛していくのだろう...



私は今日もあの子のご飯を買って行くために花屋に寄った。


「いらっしゃいませ。」

いつもの店員さんといつもと変わらない店内。


だが...

「今日入荷したばかりのお花があるんですよ。よかったら見て行って下さい。」



私は全く気にならなかった。
他の花なんか知らないし、知りたくもない。


首を横に援る私に店員さんは微笑んだ。

「ちょっと待っていて下さいね。」



そう言うとカーテンの奥に入って行った。
このまま帰ってしまおうかとも思ったが、店員さんに申し訳ないので、私はその場に残ることにした。


「お待たせしました。」



こ、これは...


あの子とは似ても似つかない淡いピンクとハートの形。

可愛い...



「タイツリソウです。毒があるので気を付けて下さいね。」


毒??!毒があるのか...
こんな可爱い見た目で...

私は唾を飲み込んだ。


「こ...これ、ください...」

私は家にタイツリソウを連れて帰るとずっと見ていた。
赤い薇には悪いと思ったがこの子から目が離せない。


もしかしたら私はこの子と出会う為に生まれてきたのかもしれない。

そうだ…そうに違いない。

だって今日、お店に行かなかったら出会えてなかったのだから_



だが、ずっと見ていると淡いピンク色が物足りなく感じてきた。
毒に触れるわけにもいかないので、この子は、ずっと優しいのだ。



あ...


私は久しぶりに赤い薔薇を見た。


_綺麗だ。


いつ見ても赤い薔薇は美い...

私はやはりこの子が好きだ。

そうか、それを知るために私はタイツリソウを好きになったに違いない...!



暫く赤い薔薇を眺める生活がまた続いた。

赤い薔薇に、この生活に...不満はなかった。

だけど_

「新しい花はありませんか?」

私は花屋に毎目通うようになっていた。

何かが満たされない。
店員さんは首を横に振るばかりだった。



私は下を向いて家へと足を運んだ。

ん?

なんだ、この懐かしい落ち着く、それでいてドキドキするような香りは...



私は上を見上げた。


この花...
緑のしっかりとした葉っぱの上に鮮やかな黄色の花が咲いている。


金木犀...?
こんな香りがするのか...

私は鼓動が高鳴るのを感じた。



好きだ_




私は今、胡蝶蘭と一緒に暮らしている。

2つの感情と共に...

タイツリソウを見た時点でそれは避けられなかったのかもしれない。



でも後悔はしていない。




だって
私は今、全力でこの子を愛している_

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