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短歌のような、詩のような
お題:恋煩い
・涼感誘う風鈴の鳴りや恋しく隣り見、手酌
・紫苑に妖し、咲く衣へ袖通す、君を眺め
・帰り道、振り返れど日常あらずは独りゆえ
・石梁を建てらば叩きたくなる天の邪鬼
・待ち惚けツラさ感じて気泡ない炭酸水
・渡し損ねた指輪に沁みる潮の香り
・こほり砕けて溶ける恋の落雁
・ペンで引いた赤線、半端に破れた1頁
・捕まえたいのは雲間の月に隠れた小夜啼鳥
・戯曲を愛する人、ボクは演者の名札
140字 恋愛詩(5作)ちょっぴりダーク
深呼吸をする前に膨らんだ感情を
僕だけに教えてほしい
捕まえて、そっと耳に囁いて
温めた蜜を溶かして作った王冠を
頭に乗せてほら
暗い夜空に飛散した星々は
明るい朝を運んでくる
沈んだ夕陽をその手で隠してくれ
我が儘な僕のために
きみの声で目覚めたい
きみの声で目覚めたい
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強請って起こした本能の在処
きみの奥に座る漆黒の月
天井がない空を指先でなぞり
仰ぎ見た僕にかける終わりの
娘が電話越しに言う。「お父さん、来月渡す物、決まったの?」
俺はカレンダーを見て「そんな日もあったなぁ」と返したら、こっ酷く怒られてしまった。
アドバイスを貰って買ってきたが、きっと俺は照れることなく、妻にほらよと渡すだろう。
(短い読切小説)
周波数の塗装に洗剤のメトロノーム
有塩なカタストロフィに瞑る目蓋
猫にカチューシャ
マイノリティなふくらはぎ
飾るは木苺のソプラノ
低音シャギー
(詩)
桜の海が沈んで言葉の線に触れ
息継ぎする魚の群れに落ちる
かじかむ指先と空の岩場
発火する心には導火線がない
右脳を抱きしめてパンジー
サメの弓に横たわる養老の砦
(詩)
消炎が狼煙の灰白月夜に嗤う
木曜のウサギは黒い毛皮で参上
然るべき安穏とした夕餉に立席
作用は赤黒の余命
ぱちぱち鳴る徘徊の手のひら
忘却が破れたアサツキに最奥
(詩)
光が手を伸ばして降りる
私の視線は別の方向へ行く
奈落の底に咲いた花の美しさに見惚れた
暗い涙が満ちて湖を作る
(詩)
色白の足が見える。黒いレギンスから出ている細い足首に、かとなくそそられてしまう。
同居人の由芽子は朝からリビングのラグの上に体育座りし、爪をぱちん、ぱちん、と切り落として、スーパーのチラシの上にばら撒く。テレビを見る俺の存在はこのときだけ透明人間だ。
(140字小説)