カムル

元・理学療法士のカムルです。退職後も人の運動変化に興味を持っています。世間では脳をコン…

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元・理学療法士のカムルです。退職後も人の運動変化に興味を持っています。世間では脳をコンピュータにたとえて、「脳が運動を変化させる」と説明されますが、多くの疑問があります。何とか腑に落ちる説明をしたい(^^;)

記事一覧

無料 脳卒中片麻痺の勉強会お知らせ!

問題解決能力をアップしよう! CAMRベーシック 無料 勉強会 テーマ:「脳卒中後遺症のリハビリ-もう一つの選択肢を!」  人の運動システムをどう理解するか?この理解…

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4日前

運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その4)

 前回から、患側下肢の振り出しが内転して軸足と一直線に並んでバランスを崩す方を例に分回しの歩行スキル修正の話をしています。  歩行スキル修正は、運動リソースの豊…

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6日前
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運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その3)

2. 協応構造創出の過程  身体の中に利用可能な身体スキルを探し、なんとか試行錯誤を重ねるうちに、課題達成のやり方である運動スキルが姿を見せ始めます。始めは創出の…

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13日前
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運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その2)

 今回から運動スキル学習の過程を明らかにしていきたいと思います。  運動スキル学習は、障害などで手や脚が動かなくなります。そうするとそれまで使われていた運動スキ…

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2週間前
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問題解決能力をアップしよう!CAMRベーシック講習

テーマ:「脳卒中後遺症のリハビリ-もう一つの選択肢を!」 日 時: 2024年9月15日 9時30分~13時30分 場 所: 安佐南区民文化センター会議室小 〒731-0122 広島市…

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3週間前

運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その1)

 人の運動システムの役割は何かと考えると、その時、その場でその人にとって必要な運動課題を達成することだと言えます。たとえばお腹が空けば食べるものを探し、危険が迫…

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3週間前
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自律的問題解決とは?(その6)

 前回は、全国の脳性麻痺学会で「硬さという陽性徴候が正常運動の出現を妨げている。だから硬さを改善することで正常運動が出現するのだ」という結果同士に因果関係を想定…

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1か月前
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自律的問題解決とは?(その5)

 今回は「外骨格系問題解決」を歴史的な視点で見てみよう、なんて少し大げさだが、これは振り返る価値があると思う。  それは僕が新人の頃(38年くらい前(^^;))、全国の…

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1か月前
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自律的問題解決とは?(その4)

 今回は「外骨格系問題解決」の続きである。  前回までで、外骨格系問題解決は弛緩状態の体に支持と運動の機能をもたらすために使われると述べた。更にそのメカニズムに…

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1か月前
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自律的問題解決とは?(その3)

 前回は、運動システムの自律的問題解決の基本的なやり方である「探索利用スキル」を紹介した。  運動システムが何か必要な課題を達成しなくてはいけないとき、あるいは…

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1か月前
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自律的問題解決とは?(その2)

 人の運動システムには、機械と違って「自律的問題解決」という作動上の特徴があると前回述べた。  機械では部品が壊れてしまうと、止まるか誤作動を起こして本来の機能…

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2か月前
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自律的問題解決とは?(その1)

 腓骨神経麻痺になると鶏歩という歩行が現れる。下垂足になるので、歩行時につま先が床に引っかかって転倒しないように膝を高く挙げる。これが鶏(にわとり)の歩き方に似…

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2か月前
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人の運動システムの作動の特徴(その7)「課題特定性」

 CAMRでは、セラピストの設定する課題は以下の3つに分類されます。   ①要素課題   ②動作課題   ③行為課題  要素課題は、従来学校で教わったような筋肉を太らせ…

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2か月前
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問題解決能力をアップしよう!

 私たちが学校で習う問題解決方法は、「悪いところを見つけてそれを原因とし、治して元に戻す」というものです。  たとえば歩行不安定があると悪いところを探して下肢筋…

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2か月前
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人の運動システムの作動の特徴(その6)「課題特定性」

 今回から人の運動システムの作動の特徴として「課題特定性」を説明します。  これはたとえばCarr & Shephardが示したように、背臥位で筋力強化すると背臥位では確かに筋…

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2か月前
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人の運動システムの作動の特徴(その5)「状況性」

 前回はCAMRで「運動障害を持つ」とは、まず身体リソースが麻痺や怪我で貧弱になることです。その結果運動認知は不適切になり、環境リソースも使えなくなり、それまで使っ…

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3か月前
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無料 脳卒中片麻痺の勉強会お知らせ!

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テーマ:「脳卒中後遺症のリハビリ-もう一つの選択肢を!」

 人の運動システムをどう理解するか?この理解の仕方によって、その後のリハビリは随分と変わってきます。
 医療的リハビリのセラピストは学校で、人の運動システムを構造とその構成物の機能から学びます。たとえば「骨・関節は力に支持と方向を与えます。筋肉は力を生み出し、末梢神経は身

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運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その4)

運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その4)

 前回から、患側下肢の振り出しが内転して軸足と一直線に並んでバランスを崩す方を例に分回しの歩行スキル修正の話をしています。
 歩行スキル修正は、運動リソースの豊富化と必要な運動スキル学習の二通りの訓練を同時に並行して進めます。
 前回は体幹と股関節の柔軟性を改善するところまででした。つまり運動リソースの豊富化です。
 一方で柔軟性が改善しただけでは、十分な基底面を確保できない方達もいますので、この

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運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その3)

運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その3)

2. 協応構造創出の過程

 身体の中に利用可能な身体スキルを探し、なんとか試行錯誤を重ねるうちに、課題達成のやり方である運動スキルが姿を見せ始めます。始めは創出の段階でまだ一定の構造をしていないバラバラのやり方が見られるのが普通です。

 分回しの歩行スキルの場合、初期には健側への重心移動だけが見られたり、重心移動をしないで体幹を反らせて患側下肢を前に振り出そうとしたりして上手く行かないなどの状

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運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その2)

運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その2)

 今回から運動スキル学習の過程を明らかにしていきたいと思います。

 運動スキル学習は、障害などで手や脚が動かなくなります。そうするとそれまで使われていた運動スキルが低下・消失してしまいます。

 そうなると改めて、障害のある体で必要な課題達成のための運動スキルを新たに生み出す必要があります。この障害で変化した体で新たに必要な課題達成のための運動スキルを生み出していく過程がCAMRで言う「運動スキ

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問題解決能力をアップしよう!CAMRベーシック講習

問題解決能力をアップしよう!CAMRベーシック講習

テーマ:「脳卒中後遺症のリハビリ-もう一つの選択肢を!」

日 時: 2024年9月15日 9時30分~13時30分

場 所: 安佐南区民文化センター会議室小

〒731-0122 広島市安佐南区中筋一丁目22番17号

TEL(082)879-3060  FAX (082)879-3061

受講料: 2,000円(4時間の受講料です) 

参加資格: PT・OT・ST

募集人員: 10名

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運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その1)

運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その1)

 人の運動システムの役割は何かと考えると、その時、その場でその人にとって必要な運動課題を達成することだと言えます。たとえばお腹が空けば食べるものを探し、危険が迫ればそれから逃げることが必要な運動課題となります。

 人が意識しなくても、運動システムはこれらの必要な課題達成を自律的に最速で、あるいは安全に、効率的にやってのけようとします。もちろんその結果はいつも上手く行くわけではありませんが・・・・

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自律的問題解決とは?(その6)

自律的問題解決とは?(その6)

 前回は、全国の脳性麻痺学会で「硬さという陽性徴候が正常運動の出現を妨げている。だから硬さを改善することで正常運動が出現するのだ」という結果同士に因果関係を想定するという矛盾のアイデアを多くのセラピストが当然といった風に主張していたと述べた。
 そんな中で一人のおじさんセラピストが「そのアイデアはおかしい」と言っていたのが印象的だった。
 もっともそのアイデアがなぜおかしいと明確に説明できるように

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自律的問題解決とは?(その5)

自律的問題解決とは?(その5)

 今回は「外骨格系問題解決」を歴史的な視点で見てみよう、なんて少し大げさだが、これは振り返る価値があると思う。
 それは僕が新人の頃(38年くらい前(^^;))、全国の脳性麻痺学会に出席すると、「筋の硬さが問題である。この筋の硬さが正常な運動の出現を邪魔しているのだ。過緊張こそが脳性運動障害の主症状なのだ」などと多くの人が発言していた。僕もその頃は素直なもので、「ああ、筋の硬さという症状が出現する

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自律的問題解決とは?(その4)

自律的問題解決とは?(その4)

 今回は「外骨格系問題解決」の続きである。
 前回までで、外骨格系問題解決は弛緩状態の体に支持と運動の機能をもたらすために使われると述べた。更にそのメカニズムについて説明した。
 今回はその弛緩部分を硬くするという問題解決が、新たな問題を生み出すという「偽解決」について説明したい。
 前回述べたように脳性運動障害の主症状は弛緩性の麻痺ではないか。弛緩性の麻痺では手脚は水の入った袋のような状態である

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自律的問題解決とは?(その3)

自律的問題解決とは?(その3)

 前回は、運動システムの自律的問題解決の基本的なやり方である「探索利用スキル」を紹介した。
 運動システムが何か必要な課題を達成しなくてはいけないとき、あるいは課題達成に問題が発生したときは、いつもこのやり方が現れる。つまり「身体の内外に利用可能な運動リソースを探し、課題達成のためにそれらの運動リソースの利用方法である運動スキルを生み出して課題を達成する」というわけだ。
 運動システムはこのように

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自律的問題解決とは?(その2)

自律的問題解決とは?(その2)

 人の運動システムには、機械と違って「自律的問題解決」という作動上の特徴があると前回述べた。

 機械では部品が壊れてしまうと、止まるか誤作動を起こして本来の機能を果たさなくなる。しかし人の運動システムでは麻痺などの問題が起きても、問題解決を図ってなんとか機能を維持しようとする。

 前回紹介したように腓骨神経麻痺があって下垂足が起こっても膝を高く挙げることで安全に歩行しようとする。(鶏歩)片麻痺

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自律的問題解決とは?(その1)

自律的問題解決とは?(その1)

 腓骨神経麻痺になると鶏歩という歩行が現れる。下垂足になるので、歩行時につま先が床に引っかかって転倒しないように膝を高く挙げる。これが鶏(にわとり)の歩き方に似ているのでこう名付けられている。

 運動学の本などを見ると、これは「異常歩行」(歩容が異常である)とされている。

 しかし単に「歩容が異常である」と評価されるのを見るとガッカリする。下垂足によってつま先が床に引っかからないように人の運動

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人の運動システムの作動の特徴(その7)「課題特定性」

人の運動システムの作動の特徴(その7)「課題特定性」

 CAMRでは、セラピストの設定する課題は以下の3つに分類されます。
  ①要素課題
  ②動作課題
  ③行為課題
 要素課題は、従来学校で教わったような筋肉を太らせたり、関節の柔軟性を改善したり、あるいは徒手的療法で痛みや脳卒中後の過緊張を改善したりするような身体リソースを改善する課題です。
 あるいは歩行安定のために杖やピックアップ、歩行器、手すり等の環境リソースの提案を考慮することなどです

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問題解決能力をアップしよう!

問題解決能力をアップしよう!

 私たちが学校で習う問題解決方法は、「悪いところを見つけてそれを原因とし、治して元に戻す」というものです。

 たとえば歩行不安定があると悪いところを探して下肢筋力低下が見つかります。それで下肢筋力を改善して、元の安定した歩行に戻そうとするわけですね。

 多くの整形疾患や廃用症候群、徒手的療法などでも非常に有効な問題解決方法なのです。

 しかし、脳性運動障害の麻痺のように治せなかったり、悪いと

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人の運動システムの作動の特徴(その6)「課題特定性」

人の運動システムの作動の特徴(その6)「課題特定性」

 今回から人の運動システムの作動の特徴として「課題特定性」を説明します。
 これはたとえばCarr & Shephardが示したように、背臥位で筋力強化すると背臥位では確かに筋力が増強するのですが、座位で調べるとそんなに筋力強化の効果が見られないという現象が有名です。
 どういうことか考えてみましょう。ここでもまず機械と比べてみます。腕を挙げるロボットの腕を挙げるためのモーターが壊れてしまいました

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人の運動システムの作動の特徴(その5)「状況性」

人の運動システムの作動の特徴(その5)「状況性」

 前回はCAMRで「運動障害を持つ」とは、まず身体リソースが麻痺や怪我で貧弱になることです。その結果運動認知は不適切になり、環境リソースも使えなくなり、それまで使っていた運動スキルが失われて必要な生活課題達成力が失われてしまうことです。

 だからまずは「改善可能な身体リソースはできるだけ改善する必要がある」ということでした。

 学校で習うように「低下した、悪化した要素を見つけて改善し、元に戻す

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