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人の運動システムの作動の特徴(その7)「課題特定性」


 CAMRでは、セラピストの設定する課題は以下の3つに分類されます。
  ①要素課題
  ②動作課題
  ③行為課題
 要素課題は、従来学校で教わったような筋肉を太らせたり、関節の柔軟性を改善したり、あるいは徒手的療法で痛みや脳卒中後の過緊張を改善したりするような身体リソースを改善する課題です。
 あるいは歩行安定のために杖やピックアップ、歩行器、手すり等の環境リソースの提案を考慮することなどです。
 身体リソースや環境リソースなどの運動リソースの改善や提案についての課題になります。
 多くの場合、この課題はセラピストが自分自身に課す課題となります。患者さんに出会って評価を行う過程で、「改善できる身体リソースは何か?提案するべき環境リソースは何か?どう改善するか?どう提供するか?」をセラピストが考えていくことになります。
 特に痛みや脳性運動障害後の過緊張は、患者さん自身で解決することが困難です。こんな時、セラピストがマニュアルセラピーで痛みを改善したり、過緊張を上田法などの徒手的療法で改善したりすると、その後の動作課題や行為課題の中で、持っているパフォーマンスを十分に発揮できます。
 もし痛みや過緊張をそのままに動作課題・行為課題を行っても、痛みや柔軟性低下のために身体リソースを課題達成のために十分に利用することができなくて、訓練効果は小さなものになります。
 日本ではこれらの徒手的療法は学校で教えられないため、卒後に各自で身につけて行く必要があります。
 動作課題は、主にベッドサイドから訓練室レベルの運動課題で、要素課題と並行して進められます。
 寝返る、座る、立ち上がる、歩くなどの基本動作を行います。
 他のシリーズで述べましたが、運動スキル学習は第一段階で、課題達成のための基本的協応構造を生み出し安定させます。第二段階で、様々な条件下でその課題を行い、予期的知覚情報を生み出し、それを使って効果的で適切な運動スキルを創造していく練習をします。
 基本動作練習を行うことで、障害によって変化した運動認知を適切にアップデートし、色々な協応構造を試行錯誤し、予期的知覚情報を用いたコントロールの方法を経験・学んでいきます。
 また同時に、課題達成の中で負荷をかけたり、繰り返したり、課題の強度を上げたりすることで、身体リソースの改善も行われます。
 動作課題は、訓練室での中心的な運動課題で、身体リソースを改善し、基本的な協応構造と様々な予期的知覚情報の利用についての練習を行うことで、運動スキル学習を進めて、次の段階である行為課題を行う上での基礎となります。
 行為課題は、従来のADL訓練に当たります。目的は必要で達成可能な生活課題の達成力を改善し、身につけることです。
 この中には患者さん自身が必要な環境リソースを見つけて、工夫する訓練なども含みます。というのも患者さんは障害を持ってから、自信を無くし、家族に必要以上依存的になっている場合もあります。だからセラピストが発見・工夫して与えるだけではダメで、患者さん自身が探索、発見、工夫、達成成功へと自ら問題解決する過程を経験し、自信を付けることも大事です。
 ざっと説明するとこんな感じです。文章では難しいかも知れません。実際に例を挙げて見てみると、多くの臨床家が「それなら俺も似た様なことをやっている」という感想を持たれることが多いのです。
 多くの優れた臨床家は、自ら色々な工夫をして実はシステム論的な発想から問題を解決していることも多いのです。CAMRはシステム論を基に、誰でもすぐにシステム論的な問題解決の手法を使えるように体系化・言語化したものです。これが多くの優れた臨床家の経験と一致することがわかったきました。
 CAMRの講習会では、実際に患者さんの動画を使って説明しますのでわかりやすいですよ(^^)
 このシリーズはここまでです。CAMRではもう一つ「自律的問題解決」という人の運動システムの重要な作動の特徴があるのですが、これは長くなるのでシリーズを変えて紹介することにします。(終わり)
※毎週火曜日にはCAMRのフェースブックページに別のエッセイを投稿しています。
 最新作は「運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その7)-生活課題達成力の改善について」
 以下のURLから
 https://www.facebook.com/Contextualapproach


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