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運動スキル学習-運動スキルが創造されるまで(その4)

 前回から、患側下肢の振り出しが内転して軸足と一直線に並んでバランスを崩す方を例に分回しの歩行スキル修正の話をしています。
 歩行スキル修正は、運動リソースの豊富化と必要な運動スキル学習の二通りの訓練を同時に並行して進めます。
 前回は体幹と股関節の柔軟性を改善するところまででした。つまり運動リソースの豊富化です。
 一方で柔軟性が改善しただけでは、十分な基底面を確保できない方達もいますので、この方達には必要な運動スキル学習を追加します。運動スキル学習は運動課題を通して、課題達成に必要な筋力も改善していくので、必要な筋力や筋活動などの身体リソースの豊富化になります。
 運動スキル修正のためには、適切な運動課題を出して患者さんにその課題をクリアする過程で必要な運動スキル修正を図る経験をしてもらいます。患側下肢を振り出したときに内転して基底面を広げられないのが問題なので、「患側下肢を外側に振り出す」ための運動課題を出します。
 たとえば板跨ぎ課題で、軸足側前方に別の板を置いて、その板を「ふまないように」という運動課題を出します。できるようになると次第に板を患側に少しずつずらしていきます。(動画で見ると簡単に理解できますが、文章だけでは難しいですね(^^;)講習会では動画で紹介しますので興味ある方は講習会へ)
 この運動課題も多様な条件を設定して行うと、「異なった状況下でも同じ運動結果を生み出す」という健常者に見られる能力、「状況性」という特徴を改善することに役立ちます。(「状況性」は他のエッセイを参照してください。ノートにもいくつかのエッセイで説明しています)
 この運動課題は健側軸足には「支えながら重心移動する」という運動を要求しますので健側軸足を中心に立って重心移動をすることに関係する下肢や体幹の筋肉群の活性化や筋力強化という筋力系の運動リソース豊富化の意味も持ちます。
 工夫された課題を通して運動リソースの豊富化と運動スキル練習を同時に進めていくわけです。これを繰り返すことによって、筋力や柔軟性、持久性などの身体リソースを改善し、運動認知を適切化し、また運動スキルを改善・修正していくわけです。
 また訓練を進めながら、「運動変化を評価する」ということを考えておく必要があります。
 今回は分回し歩行の運動スキルを改善するので、当然歩行パフォーマンスの変化を知る必要があります。
 僕は歩行開始時より10メートル歩行検査で、歩数・時間を測定するようにしていました。この二つを測定するだけで歩行に関する平均歩幅・歩行速度・歩行比・歩行率などの四つのパラメータを得ることができ、客観的に歩行変化を追えるようになります。歩行能力の変化を追うのに簡単で便利なのでお勧めです。
 さて次回は運動スキル学習の最終段階である「新しい運動スキルへの切り替えと熟練」の段階を説明します。
(その4に続く)

※毎週火曜日にはCAMRのフェースブックページに別のエッセイを投稿しています。
 最新作は「運動課題を達成するのは、筋力ではない!-運動スキルの重要性(その6)」
以下のURLから
 https://www.facebook.com/Contextualapproach

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