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散文

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#天使

孤独な天使

2012年5月7日に、ぼくは自殺しました。そして目が覚めたら、ぼくは天使になっていたのです。いま、ぼくの背中には翼が生え、指の先まで内側から美しく光り輝いています。どうやらここは天国のようです。青空があり、心地のよい風があり、透明な太陽の輝きに満ち満ちています。朝があり、夜があり、もちろん美しい夕暮れもあります。ここにはみんながいます。両親や兄弟、友人や、大好きだったペットたち、あるいは、目も当て

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天国のラジオ vol.2

天国のラジオ vol.2

毎週土曜日 AM9時
天国で放送中のラジオ番組

タイムチャンネル

あらゆる優しさと幸運が重なったとき
まれではあるが地上の人も
その放送を聞くことがあるという

窓辺のソファに腰掛けて
窓を流れてく雨を見ていた
通りを走る車を見ていた

悲しい夜 どうしようもない悲壮感

今日ぼくは
愛も金も夢も希望も失って
なにもかもを無意味に思う

だからこそいま
自分を棺桶にしまうみたいに
この店に足を

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天国のラジオ

天国のラジオ

毎週土曜日 AM9時
天国で放送中のラジオ番組

タイムチャンネル

あらゆる優しさと幸運が重なったとき
まれではあるが地上の人も
その放送を聞くことがあるという

アメリカンコーヒーと
やわらかなトリュフチョコレート

美しい空にカーテンを開け
木箱のような小さなラジオを
日の当たる窓辺に置いた

揺れてほほ笑むイエローのチューリップ

目を閉じれば海が見える
耳をすませば波音が聞こえる
こころ

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天使の音、トライアングル

天使の音、トライアングル

ある朝 空から音がした

トライアングルを鳴らしたような
高く清らかな銀色の音

なにかに呼ばれた気がして
クリアな冬の青空をみあげた

空がわたしを呼んでいる
風がわたしを呼んでいる

それは約束された朝だった
こんなところにあったんだね
探していた白い扉は

噴水のまわりに吹くような
澄んだ空気が通り過ぎていく

なにかを忘れていると思ってた
とても大切なことなのに思い出せない
いろいろなこと

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その部屋には天使がいて

凍えた黒い瞳を見開いて
あなたは細い椅子に座っていた

痩せた青白い頬に
悲しく光がさす

壁に塗られた深い緑色の闇
冷たく閉ざされた窓

あなたの膝には白い天使がもたれていた

薔薇色の頬をあなたの膝にのせて
顔を曇らせながら
天使はなにも言わずに寄り添っていた

あんなに無邪気な天使が
はしゃぐことも遊ぶことも忘れ
笑顔も捨ててあなたと共にいる

あなたと同じ痛みを感じるために

その部屋には

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