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思春期エッセイ集

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思春期時代の短編エッセイ。 ・思春期草創期の幼稚園時代 ・思春期早期の小学校低学年時代 ・思春期前期の小学校高学年時代 ・思春期中期の中学校時代 ・思春期後期の高校時代までを描…
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#忘れられない先生

消えた「もみあげ」を描く

消えた「もみあげ」を描く

初対面の人間に、特技を聞かれたときに困ってしまうのは「自慢しすぎていないか」、あるいは「格好つけすぎていないか」という要素を考えすぎてしまうからだ。

その点、僕は特技を聞かれれば、「フラフープを回すことが得意です」とか、「自分でセルフ散髪することが得意です」と即答することができる。フラフープを回すことより、「ギターが弾ける」とか「カラオケ」、「リフティング」とかの方が断然格好いいのだけれども、僕

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好きな季節についての1分間スピーチ

好きな季節についての1分間スピーチ

1分間、教卓の前に立ってスピーチをする。所謂、「1分間スピーチ」というものが小学5年生の頃に存在した。

授業がすべて終了し、いよいよ放課後になろうとする直前の「帰りの会」にて毎回児童一人が教卓の前でスピーチを行う。30人とかそこらのクラスであったため、毎月一度は回って来る。

月一で訪れるその日は、まるでジョーカーが自分の手元に回ってきたような、陰鬱な気分になる。学校に行きたくないな、と思ったこ

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ファーストネーム呼びの黄色い先生

ファーストネーム呼びの黄色い先生

かれこれもう六年も前だ。高校二年生に進級した春。一年生の秋口に二年次の文理選択が決定し、新しく文系クラスが創設された春だ。

僕が通っていた高校はマンモス校だったけど、その分「コース」が細分化され、所属していたコースは三クラスしかない。そのうち理系が一クラス、文系が二クラスである。理系の人たちはクラス替えの前にクラスメイトを知ることになるため、あの「ドキドキ感」を味わうことはできない。一方僕たち文

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愛を教わったあの日の補講

愛を教わったあの日の補講

彼の奥さんというか家内というか細君というか妻のことを、彼は「ワイフ」と呼んでいた。

定年ももう近い、あるいはもう過ぎている白髪の男性ベテラン英語教師である。

その教師のことをここではKと呼ぶ。

Kは僕が高校3年生に進級したときに赴任してきた。新人のおじいちゃん先生だ。

新人といってもこれまでのキャリアを聞いたら教育界のトップを走るような人で、すごい人という印象を持っている。だから新人とは言

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まじめにふまじめ

まじめにふまじめ

学校とはどんな場所でしょうか。十中八九、皆「勉強をするための機関である」と答えるだろう。しかし、学校というのは勉強以外にもさまざまなことを教えてくれた機関だったと思う。

僕が中学3年のときの掃除の時間のことである。「今日も隅々まで掃除しましょう」とか言うやる気のない放送委員の声が廊下に響きわたる。人に掃除を指図するならお前が一番やれよと思いつつ、その日もおもむろに箒へと手を伸ばす。

ただ、その

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