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「マブラヴ」アニメ化に尽く失敗したシリーズ

アダルトゲーム界で不朽の名作として語られる「マブラヴ」「マブラヴオルタネイティヴ」だが、アニメ化では尽く失敗している。
今回は失敗した理由や原因を考察したい。

断っておくが、アンチ記事ではない
EX、UL、AL、TE、TDA、シュヴァルツェスマーケン等々、外伝作品の原作ライトノベルなどシリーズ全て履修済みだ。その辺の自称ファンよりシリーズへの解像度は高いと考えて頂いて構わない。

最初の失敗「トータル・イクリプス」

シリーズ初のアニメ化作品である「トータル・イクリプス(以下TE)」での失敗は大きく2つある。

・アニメーション作品としての完成度の低さ
・元々ファンの間でトータル・イクリプスの評価が低い

つまり元々、評価が芳しくない原作を低いクオリティでアニメ化してしまったのだ。これでは失敗すること必至だ。

「トータル・イクリプス(2012)」

アニメ作品としての完成度を語る上でまず触れておきたいのが、2012年当時でも見劣りする作画水準だろう。
これらの作画はBD版で大きく修正された。だが、そもそもファンアイテム的な要素が強い円盤で改められても、世間一般の評価は覆らないのである。

軍の艦船がおもちゃみたい

基本的にキャラクターの顔がアップになる場面はほとんど作画が怪しい。

「クリスカ」の顔…
ユウヤ」の顔もおかしいぞ?

また、戦闘シーンも紙芝居のようになる場面もあった。

第9話より※アニメである

上記の通り、非常にクオリティの低いアニメとなっている。
戦術機のCGや見せ場となるシーンも中にはあるのだが、総合すると及第点にも程遠い出来栄えだ。

さらなる失敗の要因として、TEがそもそも不人気作品ということも挙げられる。TEは元々、マブラヴオルタネイティヴの外伝作品としてアージュ、ボークス、ホビージャパン、エンターブレインが合同で立ち上げた企画である。
そして、立体模型のジオラマ写真やイラストと合わせたサイドストーリーをテックジャイアン誌上で連載していたものがTEの原作だ。

後に文庫化されたTE

TEは他のAL世界を舞台とした外伝作品と比較して、一番オルタネイティヴ本編と時間軸が近い。だが、内容は新型機開発とそれに関わるテストパイロットのドラマという地味なものだ。
通常、本編と一番近い外伝作品は非常に美味しいポジションにあると思う。では何故?TEはその立ち位置を活かせなかったのか。
当時マブラヴは、ボークスから「A3」というブランドで立体物展開をしていた。

ボークスから販売されていたA3シリーズの一例

つまり、TEは立体物展開の販促という側面がとても強かったのだ。企画を立ち上げた合同メンバーの中には当然ボークスの顔もある。また、模型雑誌を出版しているホビージャパンの顔ぶれも存在する。
マブラヴは映像化よりも前に、戦術機の立体化という方面で商品展開が先行していた。それ故、最初の外伝作品であるTEも立体物の商品展開が行いやすい新型機開発という地味なストーリーになったと考察できる。

本編が人類の存亡をかけて、一刻の猶予もなくBETAと争っている傍ら、後方基地での新型機や新兵器の開発に纏わるドラマは些か茶番である。立体物展開の都合を優先した物語が、ファンの支持を得られなかったのも納得である。

加えて、TEはその後の外伝作品の中でも一番独立性が低い。つまり、本編ありきの内容である。本編の予習が必要な作品を単独で、しかもアニメ化第一弾に据えたのは明確な失敗である。
放送当時、ファンや初見の視聴者からも評価が芳しくなかったのはこのような理由があるからだ。

「シュヴァルツェスマーケン」及第点だが…

「シュヴァルツェスマーケン」この作品自体のアニメ化は及第点だった。
1クールという短い期間で、駆け足気味ながら原作を全て映像化した点は評価したい。TEのように作画や演出面の不安はなく、手堅く纏まっていて凡作くらいのクオリティはあった。

「シュヴァルツェスマーケン(2016)」

原作小説も仮想戦記を手掛けてきた内田弘樹氏により、東西冷戦とBETA大戦という大きな2つのテーマを見事描き切っている。

「シュヴァルツェスマーケン」原作

このように、シュヴァルツェスマーケンはアニメ化や無論、原作についても全く異論はない。だが、これもTEと同じく外伝作品特有の問題を抱えている。それは初見さんお断りの感が強くあることだ。

本作はオルタネイティヴ本編から数えて、18年前の東ドイツを舞台とした設定となっている。ユーラシア大陸がBETAにより陥落する前の、最前線となったヨーロッパ方面での戦いを描いているのだ。

TEと比較して、時間軸は本編よりも遠く、外伝作品としての独立性はあちらよりある。しかし、本作もオルタネイティヴの予習無しには全てを楽しむことはできない。

これは例え話だが、Fateシリーズは外伝作品からも楽しむことが出来ると考える。何故なら、大枠の聖杯戦争という設定が作品毎にリセットされるからだ。だが、マブラヴのシナリオはある種の仮想戦記やサーガとしての側面が非常に強い。
したがって、本作もTEと同じく本編ありきの欠点を、アニメ化に際して払拭出来ていない。シュヴァルツェスマーケンは原作やアニメのクオリティは問題ないのだが、映像化戦略では同じく失敗している。

遅すぎたアニメ化と訴求力のない「マブラヴ」ブランド

2021年10月、満を持して「マブラヴオルタネイティヴ」がアニメ化された。
だが、このアニメ化にも2つ問題点があった。

・遅すぎたアニメ化
・マブラヴというコンテンツの訴求力のなさ

「マブラヴオルタネイティヴ(2021)」

まず初めにアニメ化が遅すぎた点である。
先ほど述べた通り、仮想戦記やサーガとしての側面が強いマブラヴシリーズで、本編のアニメ化に時間を要したことが映像化戦略での最大の失敗だ。
オルタネイティヴのアニメ化は原作ゲームの開発時から企画が進行していたらしいが[1]、何故本編から映像化しなかったのか理解に苦しむ。
※オルタネイティヴのアニメ化に15年かかった理由を解説している動画も存在するが、出典の怪しい主観的情報であるため考慮に値しない。

また、マブラヴというコンテンツが既に訴求力を失っている点も失敗の大きな要因だ。
過去「マブラヴ」と「マブラヴオルタネイティヴ」が不朽の名作や超大作として持て囃されたことは疑いようのない事実である。しかし、それはあくまでアダルトゲームとしての評価だ。
マブラヴが本編のアニメ化に業を煮やしている内に、フォロワーである「進撃の巨人」等が人気を博したりと、後発作品が世に出ている今、当時のまま超大作として世間一般は受け入れてくれただろうか?
正直、今となってみればコンテンツ自体が陳腐化し、時代遅れと言わざるを得ない。

制作陣はかつてのヒット等から、超大作として振る舞っているが、実際顧客はそう捉えていない。この温度差がマブラヴの映像化戦略全ての失敗の根本だ。

最後に

”かつて”持て囃された名作アダルトゲームであることは間違いない。だが、今となってはアニメ化戦略の度重なる失敗により、ブランド力はないに等しい。
オルタネイティヴ放送前に電撃オンラインの記事中で、シリーズ統括プロデューサーであるtororo氏が今後の展望を語っている[2]
普通に考えて、最後の手段だったオルタネイティヴのアニメ化がこの体たらくでは、今後10年、20年シリーズを続けていくことは不可能だ。

また、新作である「マブラヴINTEGRATE」「マブラヴレゾネイティヴ」の発表がされている。だが、発表から数年経っても具体的な発売日は未定だ。
現在エイベックス傘下にある「aNCHOR」という企業がアージュ作品のIP管理を行っている。
エイベックス資本となり、開発体制が一新されたにも関わらず旧来のアージュ的フットワークの開発スピードには諦観の念を持たざるを得ない。

ここからは個人的な思いだが、原作者はYou Tubeの公式チャンネルで次回作の構想を垂れ流したり、またイベント等の対談でやたらと制作秘話を話したがる傾向にある。しかし、ファンとしては作品がプレイしたいのであって、制作陣の自分語りなどどうでもよいのだ。
公式チャンネルに声優や作家を招き内輪で楽しんだり、よく分からない広報にブログ運営させたり、宣伝にかこつけて制作陣が遊んでいるように見え、作品を私物化してサークル活動しているように映ってしまう。
この点もシリーズに対して失望を感じる理由だ。

出典

[1]

[2]


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