ある同僚の思い出と「実朝の和歌」
ずいぶん前ですが、日本史にメチャメチャ詳しい同僚がいました。
かつて大学でそういう勉強をしていて、院でまた学びたい気持ちがあると話してくれました。
当時NHKで放送し、人気を博していたのが司馬遼太郎「坂の上の雲」。原作もドラマも不朽の名作だと思っています。ただ私はどうしても乃木稀典の描かれ方に納得できなかった。↓を読んでいたからです。
抱いた疑問と自分なりの見解を彼にぶつけたところ「ぼくも同じ意見です」「よくご存知ですね」と驚かれました。
私よりもずっと日露戦争の実情に精通していて、いろいろなことを教えてくれました。吉田松陰と土方歳三が好きな点でも意気投合し、仕入れ室で女性誌や幼年誌に付録を挟みつつ、よくその種のテーマで盛り上がりました。
巷では幕末トークをする際に「維新志士派」と「幕府派」に分かれる傾向があると聞きます。しかし我々はどちらも「両陣営ともに尊敬できる人とダメな人がいる」という考え方でした。
やがて書店員を辞めて学業の道へ進み、何年か前に理学療法士になったと聞きました。いろいろ苦労したのでしょう。元気でいてくれることを願っています。
彼は短歌も好きでした。ちょうど「坂の上の雲」の話をしていたときに、↓を勧めてくれました。
正岡子規。なんとも痛快な人です。
古今和歌集の選者のひとりである紀貫之を「下手な歌よみ」と一刀両断。でも口角泡を飛ばすような熱い論調に触れると、門外漢の私でもなんとなく「その通りかも」と引き寄せられてしまう。そして彼が「好きで好きでたまらぬ」と絶賛した源実朝の↓が脳内にインプットされました。
時によりすぐれば民のなげきなり八大竜王雨やめたまへ
一連のニュースを見るたびに、同僚の姿とこの歌が頭を過ぎります。皆さまどうかご無事で。
作家として面白い本や文章を書くことでお返し致します。大切に使わせていただきます。感謝!!!