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20050205 野球の語源

 野球という言葉を作ったのは正岡子規$${^{*1}}$$らしい。

 子規は野球にかなりのめり込んでいた$${^{*2}}$$。野球に関する歌$${^{*3}}$$も詠んでいる。更に日本に伝来したばかり$${^{*4}}$$の野球の解説も書いている$${^{*5}}$$。この解説を書いた時には「baseballの訳語はまだない$${^{*6}}$$」としていた。正岡子規の「野球」という言葉は、解説書を書いた時点ではbaseballを意味していたわけではないようだ。

 正岡子規は非常に多くの筆名を持っていた$${^{*7}}$$。その中の一つに「野球」があった。正岡子規の幼名が「升(のぼる)」だったことから「野(の)球(ぼーる)」$${^{*8}}$$と名乗ったことがあったようだ。他に「弄球」「能球」と名乗っている。前者は「球をもてあそぶ」は野球を指している$${^{*9}}$$のと同時に「ろうぼーる→のぼる」でもあったのだろう。後者はそのまま「のうぼーる」である。

 baseballの訳語として「野球」という言葉を当てはめたのは中馬庚$${^{*10}}$$(ちゅうまんかのえ$${^{*1}}$$)という人らしい。明治26年に第一高等中学校の野球部監督をしていた彼によって作られた$${^{*12}}$$。野球部史をまとめるに当たって作り出した$${^{*13}}$$らしい。baseballを直訳した「底球」では変だから「野球」としたようだ。

 正岡子規も中馬庚も「野球」という熟語を用いた$${^{*14}}$$。両者に何か接点はあったのだろうか。どちらも第一高等中学校$${^{*15}}$$で野球をやっていた。正岡子規が明治17年に入学して同23年に卒業している。中馬庚はそれよりも後に入学しているらしいが、詳細はweb上を調べた限りでは分からなかった。

 明治17年から25年までに書き留められた「筆まかせ$${^{*16}}$$」という随筆集に「野球」という雅号が出てくるらしい。中馬庚が野球部史を書いたのが明治27年なので、正岡子規が先に「野球」という熟語を作ったのは確かだろう。同じ学校なので正岡子規の号「野球」を中馬庚が知る機会はあったかも知れない。

 ところで「baseball」の語源は何だろう。なぜ「base$${^{*17}}$$」なのか。baseは古くから「競争での出発点や到着点に引かれる線」「安全地点」の意味$${^{*18}}$$があったらしい。これが基になっている。baseを「底」と訳して「底球$${^{*13}}$$」とするのは、やはり奇語と言わざるを得ないだろう。

*1 正岡子規
*2 正岡子規 野球
*3 正宗寺(子規と野球の碑)
*4 日本文学からみた野球黎明期ベースボールの日本への伝来
*5 日本文学からみた野球黎明期正岡子規とベースボール ※アーカイブされていない
*6 日本文学からみた野球黎明期ベースボールの訳語 ※アーカイブされていない
*7 ペンネーム図鑑(近代日本文学)~ま行
*8 野球体育博物館 - 野球殿堂 【正岡子規】まさおか しき
*9 話題の箱:ベースボールと子規
*10 野球体育博物館 - 野球殿堂 【中馬  庚】ちゅうま かのえ
*11 “野球”の名付親・中馬庚伝: 紀伊國屋書店BookWeb
*12 国立国会図書館:ギャラリー:常設展示 9. 野球 <YDM75750>中馬庚 前川善兵衛 明30.7
*13 中馬庚の碑
*14 小体ジャーナル28-4 正岡子規と「野球」
*15 東京大学 [東京大学の歴史]沿革略図
*16 筆まかせ抄
*17 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: base
*18 Online Etymology Dictionary: baseball

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