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ぼくゼロ監督と母の往復書簡

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『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 〜空と木の実の9年間〜』監督の常井美幸です。これから、主人公のお母様の小林美由起さんと、9年間のできごとを振り返っていくエッセーを始めます。同じで…
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#親子

母から監督へ。その14(我が子の胸オペ)

ここ数回は、とこちょ。とくみちょ。の生い立ちや美由起と美由紀とみゆきと美幸についてと続き、先週はとこちょ。からくみちょ。への質問にお答えしました。
さて、今週はまたぼくゼロ完成までのあれこれに戻ります。

前回は、自宅ロケのお話しをしました。
主人公の胸オペ前日の自宅ロケで、映画のタイトルにもなった「ゼロ」という言葉が主人公の口から出たんです。
『自分は今、マイナスにいるからプラスに行くにはまずゼ

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往復書簡)監督から母へ聞いてみたいこと

これまで6回にわたって、ぼくゼロ母「くみちょ。」の生い立ちについて書いていただきました。私(監督、とこちょ。)は、一気に読めなくて、ときどき深呼吸しながら文字を追いました。あまりに私の生きてきた道と異なるので、想像力や理解の範疇を超えているところもたくさんありました。
そこで今回は趣向を変えて、私からいくつかくみちょ。に質問をしたいと思います。きっとみなさまにとっても、くみちょ。の生き様と、それが

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母から監督へ その11(孫ができても変わらぬ父)

ぼくゼロ書籍化を目指して、とこちょ。とリレー形式で続けている「監督と母の往復書簡」。
今は、お互いの生い立ちについてを書いています。
前回のとこちょ。の回では、とこちょ。が国際結婚をされた理由も解明されたし、生きて来た道のりが私の世界とは全く異なる事を知りました。

ぼくゼロの母は、なぜ子供からのカミングアウトに動じなかったのか?
幼少期から25才まで実母から5番目の母までの事を書いて来ました。

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母から監督へ その10(強くなる事を誓った)

ぼくゼロの母は、なぜ子供からのカミングアウトに動じなかったのか?
前回は2番目の母(継母)3番目の母(二人目の継母)について書きました。
今回は4番目の母と5番目の母について書いていこうと思います。

高校2年か3年の頃、学校から帰宅すると見知らぬ女性が父と一緒に家にいました。父から「新しいお母さんだから」と紹介されたのを覚えています。
その人は、バツイチで子供二人は別れた旦那さんが育てているとの

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母から監督へ その10(まっすぐ生きる事を決めた)

前回はとこちょ。が生い立ちを描いてくれました。
とこちょ。とは10年以上のお付き合いですが、初耳のことばかりでした。
私はとこちょ。のことを、ほとんどしらなかったんだな〜。
みんな何かを背負って、それでも一生懸命に前を向いて、生きている。
私はずっと、そういう人を応援し続けてきたのかも・・・と思い出しました。

それでは、くみちょ。の生い立ちの続きです。
武蔵小杉駅前での「人さらい」事件の後、祖母

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母から監督へ その8「くみちょ。の生い立ち」

くみちょ。(ぼくゼロ主人公の母)は、なぜ子供のカミングアウトを受け入れられたのか?
くみちょ。は複雑な環境で育ったことを、前回お話ししました。
具体的な生い立ちを少しずつ、お話しいたします。

笑っていたかと思うと、突然、鬼瓦みたいに険しい顔つきになり怒鳴りつける父。
私はいつも、父の顔色を見ていました。

空腹で泣いている私を放置していたネグレクトの実母。
やたら厳しく当たる2番目の継母。
オー

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母から監督へ その8「くみちょ。って何者?」

前回のとこちょ。(監督)の記事の中に、『初対面の時から「このお母さん只者ではないな」と思っていました』という文章がありましたが、確かに少し変かも。

「カミングアウトしてきた子供をどのように受け入れてきたのですか?」という質問を多くいただきます。カミングアウトしてきたからとかそういう事ではなく、いつも同じ姿勢で子供と向き合ってきました。それは、もう真正面から、真剣に、ただ自分の思いのままに・・・

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監督から母へその6

「禁断の自宅ロケ」

2010年のこと。「性別に違和を覚える子供たちが、小中学校で辛い思いをしている」その現状と課題を伝えるニュースリポートを作りたいと、NHKワールドに提案をしたとき、耳を傾けてくれるプロデューサーは少なく、とても苦労しました。

それから2年後の提案は、打って変わってとんとん拍子に進みました。2012年9月、まずNHKワールドにて、ニュースリポートを放送することができました。さ

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