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【どうする家康】もう“のび太”しない。家康、成長ゆえの大敗北⁉鬼脚本すぎてバスタオル必須に。第17回「三方ヶ原合戦」雑感

NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第17回の雑感です。
(※本記事は一部有料です。ドラマレビュー箇所はすべて無料でご覧いただけます)
前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)

鬼脚本、ここに極まる。地獄の「三方ヶ原合戦」開幕……そして終結⁉

週の真ん中を過ぎ、まだ余韻がヤバイですよ……。なに、あの終わり方。ほんともう鬼脚本すぎるんですけど!(※褒めてます)

史実としても、徳川家康が大敗を喫したことで知られた「三方ヶ原の戦い」でしたが。もう、往年の大河に慣れ親しんだ人なら負けるのはわかってるのよ。逆に、大河初心者勢の方はどうだったでしょう?圧倒的な戦力差を誇る武田を前にして、でもひょっとしたら「どーせ家康が主人公だから、勝つんでしょ?」なんて思って見てた方もいらっしゃるやもしれません。

あるいは、勝てなくとも「一矢報いることはできたんじゃないか」と考えた方だっていたと思います。正直、僕もそれを期待してたようなところもあったんですけど。でも、まさかの惨敗よ……しかも今回、合戦をしてるシーンは一切描かれなかったですね。

ちょっとマニアック話で言えば、「魚鱗(ぎょりん)の陣」という、戦闘に特化した陣形で待ち構えていた信玄。対する家康は、地の利を生かして「祝田の細い崖道」へ信玄を追い込もうとしていたので「鶴翼(かくよく)の陣」で挑んだのですが。これが映像で再現されたのはすごかった。

これ絵で見ると分かりやすいんですけれど、「鶴翼の陣」って、敵を包囲するような陣形なんですよ。兵が多ければ多いほど威圧できる。でも家康の兵って、このとき少なかったじゃないですか。正確な数は不明ですが……。

三方ヶ原の戦いでの両軍の戦力差は、武田軍約3万、徳川軍1万1000(『三河物語』)とされるが、正確なところは分かっていない。

 徳川の軍勢1万1000には織田信長からの援兵3000が含まれている(「朝倉義景宛武田信玄書状」)が、当時の織田軍の状況からみて数が少なすぎるとの指摘もある。

「三方ヶ原の戦い」は偶発的に起こった合戦だった?|歴史人

とにかく武田軍に対して圧倒的に少ないのには違いなかろうと。その少ない兵力で、敵を包囲するための「鶴翼の陣」で、太刀打ちできます?ジャンケンで例えるなら、信玄がチョキ出してるところに、パーを出しながら「オラー!」なんて挑みかかってるような感じです。あのさ家康くん、ジャンケンのルールわかってる?みたいな。

家康の作戦、すべて裏目に。三段構えで「挑まずにはいられない」流れに

でも、しゃあないっすよ。家康の作戦はぜんぶ裏目に出てました。そもそもマトモに戦っても勝てる相手じゃなかった。だから「自分をエサに、籠城に持ち込む」というのが家康の策でしたが、信玄はハナから家康なんて相手にしてなかった。

第16回のラストの信玄の台詞には「敵は、織田信長!」「まずは、その路上にある小石をどかさねばならぬ」とかあったじゃないですか。家康なんてマジで小石扱い。じゃあ、その小石が路上に出てこずに、城に引っ込んでいたら?どかすまでもないですよね、素通りしちゃうでしょう。言ってみれば、前回のラストシーンから伏線は張られてたわけですね。

でも、「それなら戦わなくていいし、良かったー!」なんて家康に安心させてやるつもりもない。そもそも家康は同盟相手の信長から「信玄をくい止めろ」と言われていました。素通りさせたらその約束が果たせない。

そして、遠江の民が見ているという状況ですね。千代が「徳川さんは、武田が怖くて素通りさせたらしいよ」なんて言いふらしてましたし。これでは民の信用だって地に落ちるというもの。支持率0%の県知事に誰が付いていきたいと思います?そうなればまた一揆ですよ、「三河一揆」ならぬ「遠江一揆」が勃発してしまいます。

何より恐ろしいのが、このまま武田を進軍させれば、その先にある本領の岡崎が攻め滅ぼされてしまうだろうという状況。戦の前に瀬名がいる築山を訪れたとき、「ここには、指一本触れさせぬ」と家康も言っていたじゃないですか。その約束も果たせなくなってしまう。

だから過去の大河では「武田に無理やり戦いを挑んでボロ負けしたバカな家康」像も描かれてたりしたこともありましたが、今作は違った。完全に詰んでしまったような状況で、どうやっても信玄に挑むしかなかった八方ふさがりの家康像というのが描かれました。これは「新解釈」と言ってもいいのではないでしょうか。

第1回をリフレインするような「どうする?」展開にOPテーマも流れる胸熱演出。そこで「BAD END」を描くか普通⁉

ただ、「もう行くしかないから行っちゃうよ!」なんて飛び出してしまう愚かな家康くんでもありませんでしたよね。また小手を噛むようなしぐさをしながら必死に考える家康くん……あれですよ。第1回で「上手にできますように」と瀬名が願いを込めて小手に接吻をしてくれたときから、家康くんのクセになっていたやつです。

あれが今では、「家康が策を巡らすポーズ」になっていたんですね。『99.9-刑事専門弁護士-』の深山大翔で言えば、両耳に指を突っ込んで「ポンッ」と栓を抜くような仕草。例えばあんな推理場面のあるドラマなら、登場人物のいろんな会話のシーンが流れる中で真相に辿りつくような映像となるところですが。『どうする家康』では、ここで第1回の桶狭間で「どうする⁉」「どうする⁉」と家臣たちに言い寄られたシーンが蘇りました。

言わば、第1回のリフレインです。あの時は弱くて、ただ耳をふさぐだけだった殿。だけど今は、しっかり家臣たちの声を聞きながら熟考に熟考を重ねます。そして策を思いつけば、「それなら勝てる!」と一斉に飛び出す家臣達。

BGMにはOPの華やかな音楽。もう、王道中の王道ですよ。ベタだけど、ここは「泣け!」と言っているようなシーンなんです。あのとき何もできなかった殿が、ついに強敵・信玄に戦いを挑んだ。もうヘタレで泣き虫なのび太くんの家康はいません。大河ドラマの主人公がそこにはいました。

だけど……だけどよ。

また今回のレビューの最初に書いたような、惨敗の状況ですよ。こんな皮肉がありますか?桶狭間では織田勢に包囲されて、何もできなかった松平勢。でも、お陰で命拾いできました。

今回は、挑んで大敗北……「これなら、弱いままの方が良かったじゃないの」なんて感想を抱いた方もいるやもしれないです。ドラマ的にも、そういう側面を描きたかったような印象を受けちゃいましたね。

例の、CGの馬に乗って駆け急ぐシーンもありました。ただ、第1回で殿の心象風景を描き出すような暗く物々しい背景ではなかったですし。明るい青空です。そして、ちゃんと本物の馬が大地を蹴って走っているカットも映されていました。第1回よりファンタジー感はだいぶ抑えられていたように思えます。殿の成長と共にリアリティのある映像になるなんて……やっぱりヘタなCGも狙い通りだったんじゃん!w

ただ、そこから戦闘シーンも一切描かずに惨敗シーンのみ。そして次回が「真・三方ヶ原合戦」なんて、「ウワ、やられた!」と思った方は僕だけではないでしょう。

もちろん、これについて不満を書かれている方の意見もSNSではたくさん見ましたよ。「三方ヶ原、一瞬すぎるやないかい!」とか。「また何やかんやで終わらせる気やないか!」みたいな。いや、ちょっと落ち着こうよ……次週が「真・三方ヶ原合戦」なわけでしょう?つまり、そこで今回の「真相」描かれることになるのではと。

ひょっとしたら、一矢報いた瞬間もあったかもしれないですし。何より、「殿を守れおめえの大好きな殿を」なんて本多忠真が言うシーンも予告では流れていましたね。嗚呼、叔父上……ですよ。これフラグどころか、確実にもう家臣の誰かは死んでいる。既に「〇〇ロス」が始まっているんです、今回のラストで。

鬼ぃ!!まじで鬼脚本……!(※褒めてます)

信長との“逢瀬”も見所だった?「一蓮托生」から「一心同体」へ

最後に、信長との関係の変化にも触れておかねばなりません。これまでは姉川では「あいつにこき使われるのは、もうたくさんじゃ!」なんて叫んでいた家康くん。それでも浅井の誘いには乗らずに信長との関係を維持できたのですが。

今回は自分がピンチのときに、信長からは兵を送れないなんて言伝を叔父の水野信元から受けていましたね。まるで三河平定戦のときの今川氏真のようではないですか……。

しかし、そこで今回は自ら「鷹狩り」と称して信長を岡崎・西尾まで呼び出すことにした家康くん。そこに信長が姿を現すや「呼べばおいでになるんですね」なんて、家康くん的には意外そうでしたけど。同時に、もう信長が自分との鷹狩りが好んでいたことを知っていたような感じでもありました。

そこでようやく、信長から兵を出してもらえることに。ただし「5,000」を要求する家康くんに対して、信長は「3,000」と頑として譲らない。痺れをきらして「徳川と織田は、一蓮托生であることをどうかお忘れなきよう!」だなんてまた大げさなことを言う家康くんですが。

でもそれに対する信長、「俺とお前は一心同体。ずっとそう思っておる」なんて返しました。しかも、それを言うときの動作がヤバイんです。倒れた木に腰かけた家康くんの前に自ら腰をかがめ、家康くんの手を握ってそれを自分の肩に置く。そして、家康くんの首を引き寄せてから言うんですよね。

SNSには「手に接吻をするんじゃないかと思った」だとか「唇を奪う気か」など、またBL勢が湧いていましたけど……そう連想しちゃうのも仕方ないってwまぁ、ガチでやったらそれこそ「大河なのにやりたい放題」になっちゃいますけど……。

そこから家康くん、信長の前に自ら跪いて、潤んだ目で信長を見つめていました。これ、完全に心奪われちゃってるんだよ。ようやく「口から出まかせ」ではなくて、本当の意味で信長のことを「兄」として慕うようになったんですね。

その後の信長は、城に戻って藤吉郎に浅井・朝倉攻めの算段をさせていました。「みつきほどありゃあ、すぐに」と答える藤吉郎に、明智の口から「ひとつきじゃ」と言わせていましたね。これは単に藤吉郎を急かせたいのではなく、「家康を助けるためのひとつき」だと、どんなに鈍い視聴者の方だって気づいたことでしょう。

信長、決して自分からは言わないし、周りの登場人物たちにとってはわかりにくいんですけど、それを俯瞰で見ている視聴者には「すべては家康への愛」ということに気づける構図。だからもうね……なんて言うんでしょうね。オタク的には「早く結婚しろ!」と言いたくなりますねw(それ完全にBLだってばよ)

そんな信長の元にも、三方ヶ原の直後には「家康が死んだ」なんて知らせが史実としても伝えられていたと言いますから。そのとき信長がどんな顔をするのか……それも次回の楽しみではあります。

こうやって振り返って見ると本当に辛い展開の中にも数々のドラマが描かれていて、合戦シーンはないけど、ゾクゾクする瞬間がたくさん描かれた回でしたね。これで次回、どんなことになるのか……涙でマトモに画面を見れんかもしれんわ。バスタオル用意して。

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