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発達障害ノート

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#コミュニケーション

「困り感のないASD」について。

「困り感のないASD」について。

「カサンドラ症候群」(←配偶者と情緒的な交流が持てないために心を病んでしまう既婚者)の配偶者の多くは未診断のASD当事者とされています。
本人の困り感がないためにASDの自覚もできないので診断や適切な支援につながらず、配偶者だけが困り感を抱えて苦しむという状態です。
最近このような方のツイートをよく目にするのですが、失礼ながら個人的な第一印象は「ASDなのに困り感がないっておかしくない?」というも

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ASDを「自覚する」ということ。

ASDを「自覚する」ということ。

自閉症スペクトラム(ASD)は感覚や認知特性、思考パターンなどが多数派の定型発達者と異なるために、しばしば無意識のうちに定型の人たちにとって不可解で違和感のある言動をとることがあります。
そのため、職場の上司・同僚や配偶者・パートナーなどASD当事者と深く関わる立場の定型発達者からは「自分のASD特性を自覚してほしい」という声がよく聞かれます。
しかし、ADHD(注意欠如・多動性障害)やLD(学習

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受動型ASDの「内モード」について。

受動型ASDの「内モード」について。

最近「カサンドラ症候群」と呼ばれる、ASDの配偶者と情緒的な交流が持てないために心を病んでしまう定型発達者(特に女性)が増えていますが、興味深いことに彼女たちが指摘するASD配偶者の殆どが「受動型」なのです。積極奇異型や孤立型に比べて比較的問題の少ないと言われる受動型ですが、一体彼らの何がパートナーを苦しめるのでしょうか?どうやら仕事や社交の場で定型発達のようにふるまう「外モード」を離れて、家族や

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ASDと「共感」について。

ASDと「共感」について。

自閉症スペクトラム(ASD)当事者の感情への関わり方については以前の記事でふれましたが、ASD当事者は自分の感情を他人と共有しようとせず日頃の会話においては相手の話の事実のみに関心が向いているように見えることがあります。このため、事実と自分の感情を交えて会話し相互理解を深めるコミュニケーションのスタイルに慣れている定型発達者はASD当事者と話をすると話の「事実」だけに着目して反応されるので戸惑いを

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ASDと「感情」について。

ASDと「感情」について。

よく「定型発達者は事実と感情を交えて話すがASD当事者は事実のみを話す」と言われます。そのことがASD当事者とのコミュニケーションにおいて定型発達者が戸惑ったりストレスに感じる点であるように見受けられます。
これは、
ASDは自分の感情を心の中にしまって一人で解決し、定型者は自分の感情を他者と共有することで解決する
という傾向から来ているものと思います。
しかし私はその「一人で解決する」のはASD

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異文化・異感覚という視点 ~自閉スペクトラム症(ASD)の人と心のつながりを深めるために~(長崎大学生命医科学域教授 岩永竜一郎)#つながれない社会のなかでこころのつながりを

異文化・異感覚という視点 ~自閉スペクトラム症(ASD)の人と心のつながりを深めるために~(長崎大学生命医科学域教授 岩永竜一郎)#つながれない社会のなかでこころのつながりを

 対人関係に困難をもつことの多い自閉スペクトラム症(ASD)の人は、人とのつながりにも制約が生じやすくなります。ASDの人の特性を理解すれば、お互いにもっとつながりを深められると話すのは、発達障害のある人の身体感覚について研究されている長崎大学の岩永竜一郎先生です。そのカギは「異文化・異感覚」の視点にありました。

「心のつながり」に思うこと この特集テーマが「つながれない社会の中で、心のつながり

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