6割方アートがわかるようになる話

アートは、「はじめてやるスポーツ」に近いと思う。

やったことのないスポーツをやると、
普段使い慣れていない筋肉を、使った感じがする。

アートも同じで、「普段人間が使っていない感覚」を使う。

だから、一見難しい。
ルールを知らないゲームは、慣れるまで面白さがわからないようなもの。


例えば、エンターテイメント作品は、
「すごい(驚き)」「楽しい」「綺麗」「おもしろい」「ワクワク感」「感動」「共感」
といった感じにうったえてくる。

デジタルアート・ミュージアムの
『チームラボ ボーダレス』も、エンターテイメントの要素がたくさんある。

ただ、アートの要素もたくさんあって、例えば、
「浮遊感」「没入感」「距離感」「懐かしさ」「量感」「光の感じ」「鮮やかさ」「美しさ」「わびさび」
といった感覚が動く。

ディズニーランドの「隠れミッキーを探せ」みたいに言うなら、
「自分の中に隠れた感覚を探せ」みたいな感じ。


朝日に照らされた海の印象と、
夕日に照らされた海の印象は違う。

楽しいことがあった日の雨と、
辛いことがあった日の雨は、冷たさが違う。

そうした内面的なことは、科学よりもアートのほうが、うまく表現できる。

「人の感覚をアップデートするためのきっかけ」を与えるものが、
アートだったりする。

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現代アートらしい作品に、デュシャンの『泉』がある。

これは、そこらへんで買った便器を持ってきて、
適当なサインを書いて、美術館に置いただけの作品。

(『泉』アルフレッド・スティーグリッツ撮影)

「なぜ便器…??」と思うのは当然で、
どんなに真顔に美術鑑賞をしている人でも、
「なぜこんなところに便器…」と思っている。

この作品で使うのは、「思考」と「疑問」。

美術館に市販されている便器が置いてあったら、
誰でも「なぜ?」と考える。

デュシャンの狙いはそこで、「アートは何かを考えるためのきっかけ」と彼は考えていたからそうした。

アーティストには、それぞれのテーマがあって、作品を作っている。

「もしかしてこの人は、こういうことを感じているのかな?」とアーティストのテーマが発見できると、自分の世界が広がる。

アートを鑑賞するときに意識するのは、これぐらいで大丈夫。
ちなみにアートの歴史を知ると、8割方理解できる。

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付録1:アートの資産的価値

アート作品の中には、「なんでこんな高いの!?」と思うものがある。

というのもアート作品は、ヨーロッパにおいて、
不動産(土地や家)より資産価値があると思われていた。

昔は戦争で、土地や家、下手すれば国まで奪われることが多かったから、
軽くて持ち運べる宝石やアート作品は、金よりも安定した価値があった。

2015年度で言えば、アートの市場規模は約7兆円。音楽メディア市場規模が1.6兆円だから、その大きさもわかる。


それで、価値が高いアートはどんなものかまとめると、次の感じ。
①新しいことをした人の作品
②長いことアーティストをやっている人の作品
③名門大学を出ていたり、有名なギャラリーのお墨付きを受けていたりと、実績がある人の作品

つまり、「歴史」がアートの価値につながる。

①は例えば、「キュビズム」という新しい技法を発明したピカソのように、
「今までにない価値を生み出した」から評価される例。

②の例だと、20歳のアーティストより、70歳のアーティストのほうが、長いことアートをやっているから、
「経験値がものをいう」という感じ。

③は一番わかりやすいが、言うなれば、
「東大卒」というだけで就活うまくいったり、モテたりするのと同じ。


美術品を売っているギャラリーは、
アーティストの将来を見込んで作品を集めているから、信頼できる。

30歳、40歳になって、お金の余裕が出てきたら、
まずは5万円程度の作品を買ってみるといいかもしれない。

同年代のアーティストの活躍を見ることは、
見知ったアスリートや芸能人の成長を聞くときのような、誇らしさもある。

作品を買うことで、アーティストに貢献しつつ、
年を重ねるとともに、資産的価値も上げるという楽しみ方もいいかも。

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付録2:作品のテーマと表現

今まで見てきた作品で、どんなテーマがあったか思いつく限り羅列してみた。

「○○の感じ」と、丸に言葉を当てはめてみるとわかりやすいかも。

・時間 ・重心 ・形 ・色 ・手触り
・注意(注目) ・音 ・連続 ・速度
・温度 ・水 ・植物 ・糸 ・私(自我)
・欲望 ・憧れ ・消費(浪費) ・取引
・身体 ・偶然性 ・生命 ・記憶 ・感情
・痛み ・幻 ・天気 ・朝焼け ・信仰
・知覚 ・ズレ ・死 ・性 ・海 ・山
・動物 ・境界 ・家族

などなど。
例えば「運動」というテーマをとって、「極端に日常動作を遅くする」ことをしてみると、
「身体動作には固有のまとまりがある」ことに気づく。

「まばたき」や「寝返り」を遅くすると、その行為を維持できずに、別の行為に変わる。
「歩く」と「走る」は別のこと。


ちなみに、美術史にのっている有名な分類では、主に以下のような感じを活用している。

写実主義は「見えたまま」の感じ
印象派は「光の感度」
キュビスムは「側面の形」
シュルレアリスムは「夢」
コンセプチュアル・アートは「文脈」
インスタレーションは「体験」

歴史に残る作家は、「新しい表現方法」を自分で作り出している。

上手くデッサンするだけなら、美大に入れる人なら、誰でもできる。

だから現代のアーティストは、他の人とは違った「個性」を出すように、
その人なりの表現方法を作り出している。


若いうちにアートに触れるなら、
「美大の芸術祭or卒業展示」がオススメ。

お金をかけずに、たくさんのアート作品を鑑賞することができる。

もしかしたら、その人たちの中から、
新たに歴史を刻むアーティストが現れるかも。

よろしければ、フォローかサポートお願い致します。 https://www.instagram.com/?hl=ja 夜勤シフトかつ経験値が積めない仕事に準じているため、生活の余裕と自己研鑚が必要だと認識しています。