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詩集

31
詩を綴っていくマガジンです。
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#現代詩

揺れる光。

揺れる光。



ゆらゆらと、揺れる光。
届きそうで、届かない。

わたしの心を、もっと軽くして。もう一度、手を伸ばす。

Shaking light. 
It seems to be reachable, but it cannot be reached.
Lighten my heart and reach out again.

雪の残した余白(詩画集)

雪の残した余白(詩画集)

一夜明けて
東京は晴天
雪景色と水たまり
雪かきに勤しむ人

強くなる日差し
空気の質量が軽くなる
見上げれば
薄青い空

ここは東京
小さな雪は
ハラハラと落ちて
儚く消えた
そして
手のひらほどの
空白が残った 
その重さは
21グラム
魂の質量と同じ

薄青い空
宇宙一軽い水素と
生命を育む酸素の
美しいリズム

みずみずしいほどの
現象が
目の前にある
これが
命というものかしら

奇怪な生き物(詩画集)

奇怪な生き物(詩画集)

「奇怪な生き物」

品川駅。冷たく硬い道に、突如現れた奇怪な生き物。
目の前を素早く横切った姿にゾッとして足を止める。カマキリの変種系。巨大なアメンボ。自身の吐く糸に絡まったタランチュラ。なぜこんな生き物がここに。人工物と有機物の間に存在する違和感。
隅っこで動かなくなった彼奴に恐る恐る近づくと、何重にも絡まった埃の綿だった。

ひとしきり失笑した後、彼奴を動かしていた風が、私の体に触れてきた。台

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暗闇の8ビート(詩集)

暗闇の8ビート(詩集)



雪の降る車窓をぼぉと見ていたら、向かいの隅に座る一人の女学生に目が止まった。
彼女は目を閉じうつむいて、膝に置いたポシェットに、小さくリズムを刻んでいた。
イヤホンから流れる音に合わせて、ドラムの練習をしているのだろう。

最初は、シンプルな8ビート。しかしだんだんとリズムは複雑化していき、ペダルの動きまで加わってくる。
相変わらず微動だにしない身体のほんの一部が、まるでムクドリが必死に羽ばた

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稀有の雨音(詩画集)

稀有の雨音(詩画集)

独り 
聴きて
落ちたる雨音に
ただ
筆を動かして

突然
静を切り裂く
来訪者に抗えず 
乱れ波立ち
湧き上がる
漆黒の熱

遠のいた雨音が
再び
脆弱な魂を
何事も無く
包み込み

もはや
気力失せ
この白紙に
穢れを残す
罪深き所業

後に残るは
鈴虫の音

いつだって心は自由(詩集)

いつだって心は自由(詩集)

大好きなスナフキンの
キーホルダーをカバンにつけて
「自由」にそっと寄り添う

愛しの彼は
森の奥深く
焚き火をしながら
ひとり
アコーディオンを奏でて
遠くの故郷を想う

帰る場所があるから
孤独は
自由に昇華する

アトリエの棚の上に
アコーディオンが
置いてある

その昔
長野の骨董屋で
衝動買いをした
その楽器の音色を
わたしは
数えるばかりしか
聴いていない

しがない部屋で
吐く息も白

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火花(詩画集)

火花(詩画集)


21:45
1日が終わる


目の前で
大きなハイエースが
急ブレーキ

上か下か
動いてるのか
止まってるのか

めまいとともに
ただ
怒りが込み上げる
そんな日もある

疲れている

喜びの時間は
失われた時間

削られている魂

火花が散る

まるで
父親のゲンコツのような
火花が

父親は
もういないのに 
ふいに
ゲンコツをくらわすのは
誰だ

3ヶ月前
新しい習慣を取り入れた

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白き世界(詩画集)

白き世界(詩画集)

白き世界
あいまいで
かつて愛した人も
もはや
どこにも見当たらず


といえばそうかもしれぬ
命という手応えすらも
こぼれ落ちるように
何もない

白き世界
包み込まれて
気分は悪くない
それもまた
消えゆくものとして

かつて
信じていたものを
思い出せず
ただ
わかるという感覚だけ

再び眠りにつけば
これでほんとのおしまい
さようなら
わたしの日々
ありがとう

(白き世界・了)