マガジンのカバー画像

お気に入り

19
保存版✨
運営しているクリエイター

#エッセイ

震える

震える

「あっ、雨!」
 カメラやビデオを濡らさないように、すばやくシートをかける。
 1998年2月26日、正午。

 大学生のわたしは先輩たちと、カリブ海のアルーバ島※1を訪れていた。ずっと憧れていた皆既日食※2を見るためだ。

 パラつく雨空を見続けるわたしたち。ため息。太陽は雲間から顔を出すが、すぐにまた雲に隠れてしまう。ため息。上空は風が強いようだから、まだ可能性はある。晴れますように!

 ア

もっとみる
頭痛と痒みとイライラと。【漢方医放浪記】

頭痛と痒みとイライラと。【漢方医放浪記】

 しばらく元気だったんですけど、と申し訳なさそうに診察室に入ってきたのは、線の細い青年でした。見るからに胃腸の弱そうな彼は青白い顔をしていて、時折ぎゅっと瞬きする様子から、頭痛の存在を感じました。

 2年ほど前、長年の片頭痛を患う彼の治療をしました。起床時からひどい頭痛があって生活に支障があった彼には冷えを伴う水毒の頭痛があって、呉茱萸湯と五苓散の同時内服が著効しました。

 今年は湿度が高いか

もっとみる
生涯ベスト2:物語へ至る道

生涯ベスト2:物語へ至る道

もし人生に2冊だけ選べと言われたらこの2冊だと思う本があります。

本は若い頃からずっと読んできて、心に残るたくさんの出会いがありました。だから順序をつけるなんて出来ない。

でも “特別な本” を選んでごらん、と言われたら、この2冊を選びたいと思います。

星野道夫 著 『ノーザンライツ』

パール・バック著 『母の肖像』

ノーザンライツに出逢ったのは、たしか表参道にある大きな本屋さんでした。

もっとみる
【天職だと感じた瞬間】私の場合

【天職だと感じた瞬間】私の場合

OLを退職し、旅人を経てライターとなった私が、歌うことを仕事にし始めて、今年で20年になる。ちなみに、ライター期間はとても短い。書くことが大好きだったにも関わらず、何かやりたいこととはズレている感覚があった。そして私は歌うことにした。幼少の頃から予定したきたことだ。

今、私はジャズ歌手をしている。
それを言うと「カッコイイ」とか「すごい」と言われることが多いが、自分でそう思ったことはただの一度も

もっとみる