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父の容体があまりよくないと、母から連絡がきた。癌かもしれない、と。ここ数年あまり体調がよくなく、10キロも瘦せてしまったそうだ。
私は兄との2人兄妹。念願の女の子の生まれた私を父はとても大切に育ててくれた。母からは、女性としての恥ずかしくない言葉遣いや立ち振る舞いを。習い事にもいくつも通わせ、受験前には週5で塾にも行かせてくれた。母からももちろん愛情を注がれていたが、父からはさらに多くの愛情を無条件に受け取っていた。
「おとうさん。ありがとう。」
私が幸せになると誓った結婚式での手紙の言葉だ。父は泣いていた。
幸せになると言って家を出て嫁いでいったのに、それを叶えることができず、また実家に戻ることもせず私は一人世帯を新たに作り、今に至る。
今私は家族で色々な頭を抱えるような問題を抱えていて、もう1年以上になるが、それでも少しずつ光が見えてきて、見えてくるのに焦ってしまい、そのたびに父につらく当たった。
父は、いつだって私の味方だ。
私が幸せになるようにを、一番願っている人だ。
わかっているのに、なかなか進まない現状に苛立ち父を責めた。返信はなく、その代わりに母から父の容体について聞いた。
どうして私はこんな歳になってまで、そんな言い方をしてしまったのだろう。
BeautyJapan日本大会には、両親を誘った。体調次第で来てもらえるかわからないが、せめてランウェイを歩く姿だけでも見てもらいたい。
体調を自分自身が崩し大会へのモチベーション自体がスピードダウンしていたが、この話を聞き、そう思うようになった。
わたし、まだ何も親孝行できていない。困らせたり、頼ってばかり。この歳になってもまだ、なにも返せていないんだ。
父は何もいらないという。私が笑っていれば、幸せでいてくれればそれでいいのだと。
だけど私だって父に笑ってほしい、幸せでいてほしいのだ。
人の命は、いつか朽ちる。そんなことはわかっている、でも、それでも私は父にもっときちんと親孝行をしたい。
幸せでいることが父への親孝行ならば、私は幸せになりたい。
それは父のためでもあり、自分のためでもある。
BeautyJapan日本大会では、私は全力を出し切れるか今わからない、わからないけれど私がこんなに頑張っている活動を、ちゃんと近くで見てもらいたいんだ。
そのために、もうひと踏ん張り。もうひと踏ん張りする。父に私が幸せそうでよかったと、思ってもらえるようになるために。
山口葵
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