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今日の芸術【黒のキャンバス】

今日の芸術 あいみょん

あいみょんの楽曲の中ではあまり知られていないかもしれないこの曲は、私にとっての創造性を引き出す中でとても刺激を与えられる歌になっている。

なんだって芸術になる。なんだって芸術にしてしまえ。

他人のいうこと、批判など気にせず突き進め、掘り起こせ、自分の芸術を。

そんな曲だ。

その中でも、特に好きな歌詞がある。

上手くいきすぎる恋愛なんて 燃え上がりもしないだろう
地獄のような修羅場があるから
生々しく愛し合う

山あり谷ありの人生の方が
山にも谷にもいけるだろ
絵の具が揃ってちゃ 面白くないだろう

最初から綺麗に揃えられている絵の具でさあ描きなさいと言われても、なんだかつまらない。波乱万丈の人生であることを美しいと、そんな人生だからこそ描けるものがあるのではないか、という解釈の出来る歌詞だ。

あいみょんはこの歌詞の中で「目の前にあるキャンバスに何も書かなくてもいい、それも芸術だ」と歌っている。

私はこれをずっと聴いていた昨年は、目の前は暗闇ばかりで、持ち合わせているのは白ではなく真っ黒なキャンバスだった。


「くれよんのくろくん」という絵本がある。

この絵本では、カラフルにお絵かきを楽しまれどんどんと小さくなっていく色々な色のクレヨンたちの中で、「黒」だけが使われずに残っていき、「くろくん」が寂しさや悔しい思いをしているというもの。

そこで、感情が爆発したくろくんがみんながカラフルに描いていたものを黒で全て塗りつぶしてしまうのだ。他のクレヨンたちは驚いたり、怒ったりしていたはずだ。

真っ白な紙に彩られた、カラフルなクレヨンで描かれた1枚の絵はくろくんによって、真っ黒になった。

だけど黒く塗りつぶされた絵は、「削りだす」ことにより、再び色々なところに他のみんなのカラフルな色が蘇ったのだ。

真っ黒の紙の中、まるで花火のように美しく。

私が「今日の芸術」を聴いていた時にふと、この絵本のことを思いだした。

私には今、真っ黒なキャンバスしか持ち合わせていないけれど、過去を思い返してみると楽しかったこともあったし、愛し愛された記憶もある。

目の前はこんなに暗く薄黒いけど、煌めいていた経験は私の中にずっと残る。心の中にあるきらめきは、今はぼんやりとして見えなくなってしまっても、確かにそこにあり続けるのだ。

つまり、私のこの今のキャンバスには、本当は色々なカラフルやきらめきが埋もれていて、それを今は自分で黒く塗りつぶしてしまっているだけなんだろう。

真っ黒なキャンバスで描く私の文章や絵も、美しいという人たちがいた。鮮烈で素晴らしいと。そう、それも芸術だった。

それでもきっと、きらめきや彩りが蘇るような、そんな世界を生み出せるようにいつかまたなるはずだ。黒の奥に、それらは隠れているのだから。

今は使い切ってしまい黒しか持っていない私のカラーを、また少しずつかき集めて、削り出して、黒の中から光を描こう。

それはきっと、私の中の光り輝く芸術になる。
そう信じて。


過去に書いた記事からの引用加筆修正記事です。鮮やかな共感覚アートを描くようになった今読み返すと感慨深いものがあるな。

時々ふとスキをいただくことがあるのだけど、とても長い記事だったのでひとつだけ。気になる方は是非読んでみてください。

山口葵

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