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2024年6月の記事一覧
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第13話 忍side ー 困惑
「今回の企画ポシャったんですか?」
『ちょいと上層部で資金のやり取りで問題が出ててね。企画自体は進んでいるんだけど、下請け業者の解雇が正式に決定になったんだ』
最悪だ。今回の仕事は某遊園地の立て直し事業で、3年プランの契約だったはず。しかし大元から具体的な話が俺達下の方に降りて来ないので結局一旦こちら側も撤退、という形になったのだ。
そうなると困るのは上層部ではなく、俺達日雇い労働者だ。上
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第14話 忍sideー 転職
警備のバイトを増やした事で俺の生活は何とか持ち直した。しかし長年建築関連で世話になっていた勝己さんの訃報を聞いたのはつい昨日の事だ。
死因は心筋梗塞。ヘビースモーカーだった勝己さんは相当肺もやられていたらしい。
心臓の手術もしているが、医者と嫁に止められてもタバコは死ぬまで止められないと言い張っていた。俺も他人事とは言えない。
麻衣にもタバコはやめろと言われていたが、口寂しくてどうしても
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第15話 隔てられた距離
私は霧雨荵さんと互いの利害の一致という事でお付き合いすることになった。利害の一致と言っても100%私が得をしているだけで、彼にとっての利益は謎のままだ。
彼が私を指名して、時間の許す限り延長してくれるので店には多額の金が入り、そのお陰なのかいじめは無くなった。
霧雨さんを敵に回すと営業に響くのだろう。もしかしたら私に手出ししないよう店長が全員に通達したのかも知れない。
結局は権力と金が無い
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第17話 忍sideー 子供
N大附属病院は意外と働きやすい場所で、俺みたいに資格を持たない奴にもみんな優しく接してくれた。
特に看護師さん達は動けない患者さんの世話をするのが大変みたいで、俺でもそこそこ役に立っているらしい。
何ヶ月働けるかな、なんてぼんやりと考えていたものが、気がついたらもう一年が経過していた。俺の後輩に当たる男性の介護助手も一人入ってくれたので、益々話しやすい環境になって万々歳だった。
丁度その
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第19話 捨てられないタバコ
私はいよいよ西東京市にある部屋を解約する為、隙間時間で片付けをしていた。
元々そんなに荷物のない部屋だったが、少しずつ広くなる様子を見ると、ケジメをつける時なのだと思い知らされる。
そんな矢先、珍しく雪ちゃんからLINEが来た。子育てで忙しい彼女は弘樹さんがお休みでかつ、子供を丸々面倒見てくれないと動けないはずだ。私もこの部屋に誰かを招くのはこれで最後と思い、雪ちゃんに住所を伝え彼女に西東
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第21話 忍sideー 親愛
俺は人生初めて健康診断を受けた。総合診察の担当は内科の藤堂先生なんだが、俺の名前を見慣れているはずの先生は不思議そうにパソコンを睨みつけた。
「田畑君って一人っ子かい?」
「親も死んでるんで、もう天涯孤独っスよ」
俺はいつものように軽く笑いながらそう話す。俺は母さんに絶縁されている身なのでこれはあながち間違いでは無い。
ただ、麻衣の事は誰にも伝えないでいた。全てを知っている弘樹も職場で
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第22話 忍sideー 襲撃
「ねえねえ、今度温泉旅行に行きたいよね」
「そうだな……」
「箱根くらいだったら行けるよね、日曜日はママさん達休み欲しがるから、平日なら休み合わせられるし」
「ああ……」
俺は澤村の話を聞きながら今日弘樹に怒鳴られた事を反芻していた。
あいつは普段全く怒らない癖に、俺と麻衣の話になると人が変わる。
今の俺に麻衣を守るチカラは無いし、あのシノブって奴が麻衣を守ってくれるのならばそれに任