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「東京喰種」で学ぶ、多様な視点を持つことの大切さ

 ✔東京喰種という作品 

 見た目は同じ人間でありながら、人しか食すことができない「喰種」と、普通の人間という二種類の「種」が対立する「東京喰種(トウキョウグール)」ですが、この作品はともすれば、鬼滅の刃や進撃の巨人のように、ひたずらに「グロい」「残酷」な点ばかりクローズアップされやすいです。

 「人が喰われる」設定なので、東京喰種にしろ、鬼滅にしろ、進撃の巨人にしろ、そういうシーンが多いのは、どうしても苦手な人がいるのは仕方のないことだとは思います。ですが、これらの作品を「残酷」というだけで毛嫌いして見ないのは勿体ないように感じます。

 東京喰種は、絵もキレイですし、セリフも文学的で、作者の知性とセンスを感じます。キャラクターも魅力的なので、血を見るのが苦手でない方なら、特に何も考えずに見ても面白い作品なのですが、みみのすけのおススメの見方は、それぞれの立場に立って物事をみる、それぞれの背景を鑑みながら見ることです。

 最初は、私も世界観を楽しむ感じで、あまり深く考えないで見ていたのですが、要所要所で、容赦なく立場の違いからの独善的な思考と行動の愚かさと、残酷さを突き付けてくるので、見ていてなんとも苦しい気持ちにさせられました。

✔立場が変わると「正義」は変わる

 例えば、月山習(CV:宮野真守)という、美形で資産家の子息でありながらの「グルメ」と呼ばれる喰種がいますが、彼の言う「人の命…?僕ら(喰種)は平等な肉袋。むしろ生命全体で見れば、人間の方が多の命を積んでいる。だが彼らと違って、僕らは人しか殺さない」というセリフは、ハッとさせられます。

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 「人間を喰らう存在」というのは、人間の立場で見れば、絶対悪でおぞましい存在でしかないのですが、確かに生命全体で見れば、人間は地球上でもっとも多くの種類と量を喰らう存在で、そのために、生態系を破壊までしてしまう事を考えると、生命全体にとってはどちらが迷惑な存在なのかは自明です。

 似た話として、「約束のネバーランド2期」2話でも、狩りの場で、エマが、生きるためには自分も命を奪う必要がある、という事実に直面するシーンがありましたね。違う視点で物事を見る、とは、こういうことだと思うのです。

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 どちらが正義か悪かという話ではありません。「自分と相手のそれぞれの立場」という複数の視点を持って物事を考える事は、人間関係を円滑にするにも、仕事をうまく運ぶためにも、必ず必要なことです。

✔基本的に、人は自分の立場でしか思考しない

 また、喰種の中には、躊躇なく人を殺す者もいれば、それをエンターテインメントにする者もいるし、密かに自殺者や行き倒れを食す者もいます。人間同様、様々な価値観を持ったグールがいるので、善良な者もいれば、悪人もいるという点で、喰種と人は身体的特徴以外では、食べる「モノ」が違うというだけの「種の違い」でしかありません。

 一方で、「喰種対策局」通称CCGという、グールを狩る組織があり(鬼滅の刃の「鬼殺隊」的な)そこには、殺したグールの「赫子(かぐね)」から作った「クインケ」という武器を操る喰種捜査官がいます。

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 CCGきっての凄腕の真戸捜査官は、見た目からヤバめの感じですが、見た目通りのゲスい人物です。とにかく喰種を憎んでいて、喰種に対しては1ミリの容赦がない、だけなら分かりますが…見ていてかなり不快感を与えるような、不必要に残忍なことを平然とやる人物です。

 ですが、真戸は、捜査官としては優秀な上、部下にはそれなりに配慮できるので、CCG内では部下や同僚から尊敬されている人物です。なので、人間視点では、家族や友人など大切な人を、喰種に喰い殺す喰種に対して、残忍なことをしたからと言って、咎められるものではないのです。

反対に、殺人を犯したこともない、善良なごく普通の母親が喰種というだけで殺害されるのは、喰種視点で見ると非常に理不尽に感じます。同時に、善良だろうがなんだろうが、喰種というだけで、残忍に殺害する真戸捜査官は、同様に捜査官だった奥さんを、喰種に殺されたことで喰種を憎んでいた、という事実もあります。

 単純に善と悪では割り切れない、それぞれの立場や状況を、一番突き付けられるのが、シーズン1の6~7話です。捜査官が喰種に対して「貴様らはなぜ存在している?残されたものの悲しみ、孤独…貴様はそれを考えたことがあるか?」と尋ねるシーンがあると思うと、カットが変わり、今度は、喰種が捜査官に対して「訳もなく命を狙われる恐怖、あんたに分かる?大切な人が虫けらのように殺される、その気持ちが分かる?」と尋ねるのです…それぞれが理不尽な事実に、身を焼くような怒りを抱いて、吐き出すように言うセリフです。

✔「両方の立場を理解できる人」は希少で、故に人一倍苦悩する。しかし…

 往々にして人は、自分の立場だけ理解してもらうことを望むもので、相手の立場を慮れる人は極めて少ないです。そして悲しいことに、自分の立場だけ理解してもらいたい人間は、両方の立場を理解する人間の事を理解できないので、異質な存在として警戒し恐れがちです。

 結果、主人公のカネキ(CV:花江夏樹)のように、両方の立場を理解する人は、それが故に、一番苦しみ理不尽な目に合ってしまうのが現実です。そしてそれは、そうできる人が少ないから、理解をされにくいからです。

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 しかし、それができる人が希少なのは、それがその人の「個性」であって、そうすべき責任を背負っている特性なのです。ですから、そうすることの大切さを、周囲の人たちに諭し、伝える役目を負っているのではないでしょうか。

 両方の立場で見ることを一番阻害するのは感情で、その思いが強いほど、阻害します。互いの立場を理解するのに必要なのは「理性」で、理性は人間にのみ備わっている性質です。感情的な人ほど、人間関係はうまくいきにくいのは、自分の事ばかり主張してしまうからで、理性があれば、相手の立場も慮ることができます。

 昨今、いろんな事件が起こっていますが、自分の立場だけ理解してもらう事を、主張する人が多いからではないかと思います。トラブルを避けるためにも、理性的に相手の立場を考えてみることは大事なことなのです。「東京喰種」を見ながら、そのことを学んでみてはいかがでしょうか。


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