マガジンのカバー画像

排泄運動

38
日常の速記。食べて、咀嚼して、排泄する。
運営しているクリエイター

#失恋

元恋人の話、取り扱い注意にて

元恋人の話、取り扱い注意にて

「あなたってよく元恋人の話をするよね」と最近親しくなった人に言われて、一瞬考えこんだあと、そりゃそうだわと思った。20代の大半を共に過ごし、良くも悪くもたくさんの影響を受けてきたわけだから、私の話をしようとすると必然的に元恋人の話が出てきてしまう。

生きづらい世の中であることは分かってはいたけれども、どう生きれば分からなかった頃、インドをふらふら旅をしていて出会ったのが元恋人だった。当時幼かった

もっとみる
同棲の終わり、ペットの忌引

同棲の終わり、ペットの忌引

同棲の終わり、ときいて思い出すのは西日が射す空っぽになった部屋に2人で横たわっていときのこと。その頃の私にはすでに泣き叫ぶ体力なんて残っていなくて、元恋人の胸に顔をうずめて静かに涙を流すだけだった。ずっと私を安心させてきたこの匂い。

冬の日の入りは早く、部屋がだんだんと暗くなる。もうこの家には照明すら残っていなかった。夜の気配が漂う玄関先で、これまでもそうしてきたように、彼にハグとキスをして私は

もっとみる
落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです

落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです

光の方へ久々に朝からひどい落ち込みの波に引きずられて目の前が真っ暗になった。けれども、かわいいシェアメイトが「苺食べる〜?」といつものように朗らかに聞いてくれたので、はっと気持ちが光の方へと向いた。舌から苺の甘酸っぱさが染みわたり、重い身体にかすかな電流が走った。

先日、門司港にアジールをつくりたいという主旨の記事を投稿したが、結局のところアジールをいちばん必要としているのは他でもない私自身なの

もっとみる
失われた日々への追悼

失われた日々への追悼

毎朝バス通勤する度に、前に同棲していたマンションの前を通るのが嫌だ。マンションの前には『入居者募集』の青い幟がたっていて今でも私達の部屋(だったもの)は空いているだろうか。

最上階の2DK、築30年で家賃は4万のオンボロマンション。休日の夕方には西日が射し込む薄暗い部屋でふたりでごろごろするのが好きだった。いま思えばあれを幸福と呼ぶのだろう。喧嘩もたくさんしたけれども、思いだされるのは何故か楽し

もっとみる
6月17日(木)

6月17日(木)

混線している頭の中が大分整理されつつあるこの頃。

最近理解できたのは、人生には理解できないことがあるということだ。すべての行動に理由付けができるわけではないということ。

夜、友達の恋愛相談に電話でのる。自分のことはわからないくせに、人のことは何となくわかってしまう。でも、助言はせずに、終始話を聞くことに徹する。相手をすべて理解したいと思うから、人はこんなに苦しむのかと、まるで自分をみているよう

もっとみる
憂いを帯びた女の顔は美しい

憂いを帯びた女の顔は美しい

22歳の冬、好きな男に振られた。
初めて付き合った人だった。

家にいても、街にでても、
思い出が全力で追いかけてくる。

日常に居場所をなくした私は
ふと思い立って台湾に行くことにした。

初めての外国。初めてのひとり旅。

ガイドブックで見つけた路地裏のゲストハウスに着くと、私の顔を見るなり女主人が尋ねた。

「あら、失恋?」

なぜかばれてしまった。

「陰のある表情に真っ赤なリップ。憂いを

もっとみる