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蠍凛子
2019年9月16日 01:43
ある男は大きな袋を抱えていた。その優しそうな男は、いつもいつもキラキラとした「それ」を袋からとりだしては、街角に座り込んでいる人々に与えるのだった。その座り込んでいる者たちは、男からそれを受け取ると、嬉しそうにしていた。ある者はそれを自分のためだけに使い、ある者はそれを悪いことに使い、ある者はそれをまた別の者に分け与えたりしていた。ただ、男がそれを与えるときには皆笑顔になるのだった。毎
2019年9月15日 00:04
「光の中に何が見えるんだい?」男が聞いた。「たぶん、今は何も見えないよ。だって、眩しいんだもん。眩しくてつい目を瞑ってしまう。でも、キラキラとしているから、また光の中を見たいの。」そう言って、彼女は視力を失ってしまった。「でも、どうして君は笑顔なんだい?」彼女が視力を失った後、男が聞いた。「前は見えなかったものが、たくさん見えるようになったの。目で見えるものには限りがあった
2019年9月12日 11:32
「もうすぐ完成!もうすぐ完成!あとちょっとだから、頑張れ私!!!」暗闇に光るノートパソコンの画面を睨みながら、女は小説を書いていた。ブルーライトのせいで、目が冴えてしまい、半ば興奮気味でキーボードを叩いた。女はここ数日、殆ど寝ずに小説を書いていた。寝たとしても机にうつ伏せか、先日なけなしの金で購入した程よい硬さの椅子に寄り掛かって寝ていたため、それほどしっかりとは寝ていなかった。それから、小
2019年9月14日 02:36
壁が現れた。私の前に、突然壁が現れた。先程までは何もなかったはずであるが、いやはや不思議な事が起きたものだ。壁の両端を見ると、どこまでも続いていて、壁の端は見えず。ただ、天まで届くほど高いものでもなかった。どうやらこれを登り超えるしかないようだ。ただ、周りを見渡せど、周りには何も転がってはいない。当然ハシゴのようなものも転がっているはずはない。何しろ、あたり一面真っ白でデ
2019年9月11日 00:42
ある猫はいつも飼い主の足元を歩き回っていた。飼い主が大好きだったのだ。飼い主の足の臭いが好きだったのかもしれないが、とにかく大好きだったのだ。時々、その飼い主は、その猫をうっかり踏んづけたりしていた。それでも、その猫は飼い主の足元を歩き回るのをやめなかった。そんな日々を、その猫は飼い主と過ごしていた。ある日、猫がいなくなってしまった。飼い主は「腹が減ったら帰ってくるだろう」と玄関先にエサ