くまざわあかね

落語作家。 1971年大阪市生まれ。 NHK『上方落語の会』 『ラジオ深夜便』第3金曜…

くまざわあかね

落語作家。 1971年大阪市生まれ。 NHK『上方落語の会』 『ラジオ深夜便』第3金曜「上方落語を楽しむ」 『関西ラジオワイド』関西文化情報 https://twitter.com/akane_kuma

マガジン

  • まえに書いたもの

    新聞や雑誌に掲載されたエッセイをまとめています。 ※無断転載・引用は固くお断りいたします。

  • 覚えておきたいこと・忘れたくないこと

    2020年1月から、落語・お芝居などがいつ・どんなふうに中止・延期となったのか。それをどんなふうに受け止めたのか。個人的な心覚えです。 ※無断転載・引用は固くお断りいたします。

記事一覧

固定された記事

ドリフへの裏切り~今さらだけど・追悼志村けん

ドリフターズに対しては、うしろめたい思いがある。 ひとくちに「ドリフターズ」といっても、世代によってイメージするところは違うようで、わたしより少し年上の方は「荒…

大槻能楽堂・特別公演『葵上』~なんでわたしはお能を見るのか

ほぼ一年ぶりに能楽堂でお能を見ました。 一年前に見たのはこちら。 2020年から21年にかけて、歌舞伎・文楽・落語と、さまざまな分野で リモート公演が行われ、家のパソコ…

最近読んだ本 『あざやかな女』円地文子

寄席芸人として育ち、何人かの男性に庇護されながらひたむきに芸を磨き、ついには邦楽の一派の創始者となった生島さよ。 東京下町に生まれた彼女の、明治の末から昭和初期…

2021年 手帳の旅

気に入って使っていた手帳が廃番になってしまったのはこれが三度目のことでした。 大学を出てから使っていたのは、しゃれた文具を扱う近所のデザインショップ・ギャラリー…

2021年文楽初春公演「どじょう!」

今月、国立文楽劇場の初春公演第二部で上演されている『碁太平記白石噺』。個人的にとても思い入れのある演目です。 いったい、どこにそんなに思い入れがあるというのか?…

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その4

2020年の主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。 個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自…

まえに書いたもの その6 『最後のロング』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2015.6.29  掲載のものをば。 ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合も…

「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。

「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。 「巣ごもり」てなんやねん。 うちは鳥や蜘蛛の住み家かちゅうねん。 「おうち時間」てさぶいぼ出る。 自分の家に「お」の…

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その3

2020年の主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。 個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自…

まえに書いたもの その5 『ぐだぐだを生きる』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2017.9.25  掲載のものをば。 ※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合…

まえに書いたもの その4 『赤外線をよみとく』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2017.3.27  掲載のものをば。 ※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合…

角刈りフレンチ

※ 2014年6月、高槻現代劇場での『第11回 レセプション亭 落語会』 パンフレットに書いた文章に、少し加筆しました。 (転載許可いただいております) いつも好き勝手な…

まえに書いたもの その3 『立ち位置はどこ?』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2016.12.26  掲載のものをば。 年末に書いたものなので、忘年会や大掃除などのフレー…

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その2

2020年の1月から、主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。 個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うの…

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その1

自分の記憶に自信がない。 いろんなことをすぐに忘れてしまう。 阪神大震災のとき、大阪にいながらどんなふうに感じて過ごしていたのか。 3.11のときは、誰とどんなこ…

「あれっ、避けられてる?」と思ったときに 『なめくじ長屋捕物さわぎ』都筑道夫

担当の方に許可をいただきまして、これまで雑誌などに書いた原稿をアップします。 今回は、PHP『くらしラク~る♪』2019年10月号 リレーエッセイ 「わたしのそばにある、暮…

ドリフへの裏切り~今さらだけど・追悼志村けん

ドリフへの裏切り~今さらだけど・追悼志村けん

ドリフターズに対しては、うしろめたい思いがある。

ひとくちに「ドリフターズ」といっても、世代によってイメージするところは違うようで、わたしより少し年上の方は「荒井注がいた初期ドリフ」を思い浮かべるらしい。

1971年生まれのわたしにとっては、ものごころついたときから「ドリフといえば志村けん」だった。

PTAが子どもに見せたくない番組、なんて言われていたけど、幸いわが家はテレビ見放題だったため

もっとみる
大槻能楽堂・特別公演『葵上』~なんでわたしはお能を見るのか

大槻能楽堂・特別公演『葵上』~なんでわたしはお能を見るのか

ほぼ一年ぶりに能楽堂でお能を見ました。
一年前に見たのはこちら。

2020年から21年にかけて、歌舞伎・文楽・落語と、さまざまな分野で
リモート公演が行われ、家のパソコンやテレビ画面で楽しませていただきました。

もちろん、生の舞台がいちばん良いことは重々承知のうえで、それでも
オンライン公演やリモート公演には、会場まで足を運びづらいお客さまにとってのメリットや、
「こんなやり方もあるんやなぁ」

もっとみる
最近読んだ本 『あざやかな女』円地文子

最近読んだ本 『あざやかな女』円地文子

寄席芸人として育ち、何人かの男性に庇護されながらひたむきに芸を磨き、ついには邦楽の一派の創始者となった生島さよ。
東京下町に生まれた彼女の、明治の末から昭和初期、そして戦後にかけての流転の人生を描いた長編小説です。

が。
「小説」とは言い条、完全なる創作、フィクションというわけではありません。
事実に基づいているようなのだけど、それでいてモデルを明記しているわけでもない。
わかる人にはわかるよう

もっとみる
2021年 手帳の旅

2021年 手帳の旅

気に入って使っていた手帳が廃番になってしまったのはこれが三度目のことでした。

大学を出てから使っていたのは、しゃれた文具を扱う近所のデザインショップ・ギャラリーインターフォームさんのオリジナル商品。

↑ この2002年の銀色がとても素敵でした!

文庫本より心持ち大きなB6サイズが手になじみます。
赤、青、銀、と毎年変わるカバーの色もおしゃれで楽しみで、もう生涯ここの手帳を使う!と決めた矢先、

もっとみる
2021年文楽初春公演「どじょう!」

2021年文楽初春公演「どじょう!」

今月、国立文楽劇場の初春公演第二部で上演されている『碁太平記白石噺』。個人的にとても思い入れのある演目です。

いったい、どこにそんなに思い入れがあるというのか?

メインとなるのは、華やかな吉原を描く「新吉原揚屋の段」。
傾城となった姉・宮城野と、田舎から出てきたばかりの妹・おのぶが再会し、ともに父親の仇を討つ相談がまとまります。

わたしが好きなのが、その前段にあたる「浅草雷門の段」です。

もっとみる
覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その4

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その4

2020年の主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。
個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自分の心覚えとして書いています。
前回はこちら。

3月1日。
桂文珍師匠の東京独演会から帰ってきた翌日、そして、大相撲春場所が中止ではなく無観客開催と決まったこの日、中之島の香雪美術館へ出かけた。
前売りチケットを購入していた『上方界

もっとみる
まえに書いたもの その6 『最後のロング』

まえに書いたもの その6 『最後のロング』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム
『女のミカタ』 2015.6.29  掲載のものをば。

ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合もあります。 

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

20代から30代にかけて、のべつ髪型を変えていた。
パーマをあてたり短くしたり、うんと長く伸ばしたり。

背中までの長さをバッサリ切るときには、美容師さんに

もっとみる
「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。

「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。

「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。

「巣ごもり」てなんやねん。
うちは鳥や蜘蛛の住み家かちゅうねん。

「おうち時間」てさぶいぼ出る。
自分の家に「お」の字をつけるか。
「おそとに出たい」て童謡の歌詞か。
「うち」とか「そと」でええやんか。

蟄居は苦でもなかったけど
気色の悪いことばが増えた。
さぶいぼが止まらん。

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その3

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その3

2020年の主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。
個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自分の心覚えとして書いています。
前回はこちら。

2020年2月末から3月はじめのこと
2月27日の夕方。
政府が突然、全国の小中高校生に対し、3月2日からの一斉休校を要請した。

子どもさんのあるご家庭から「えーーーーー!」「急すぎ

もっとみる
まえに書いたもの その5 『ぐだぐだを生きる』

まえに書いたもの その5 『ぐだぐだを生きる』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム
『女のミカタ』 2017.9.25  掲載のものをば。

※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合があります。

     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

気がつけば夕方、ということがこのところよくある。

あれ、今日いままでなにしてたっけ?と考えるに、掃除して洗濯してごはんの用意して、ネットをチラチラ眺めてい

もっとみる
まえに書いたもの その4 『赤外線をよみとく』

まえに書いたもの その4 『赤外線をよみとく』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム
『女のミカタ』 2017.3.27  掲載のものをば。

※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合があります。

     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 

画面の半分以上を占める暗がりから、スッと現れる藤村志保さんの横顔。

日本髪を結ったその顔が正面を向き、シルエットになったかと思うと廊下を歩く足もとがア

もっとみる
角刈りフレンチ

角刈りフレンチ

※ 2014年6月、高槻現代劇場での『第11回 レセプション亭 落語会』
パンフレットに書いた文章に、少し加筆しました。
(転載許可いただいております)

いつも好き勝手なことを書かせてもらって感謝です!

そのレストランは、近所を自転車でうろうろしていて見つけた。
空色の看板に可愛らしいフォントで
『プティレストラン GIRO』
フレンチのお店らしい。
こじんまりとした雑居ビルの一階にある。

もっとみる
まえに書いたもの その3 『立ち位置はどこ?』

まえに書いたもの その3 『立ち位置はどこ?』

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム
『女のミカタ』 2016.12.26  掲載のものをば。

年末に書いたものなので、忘年会や大掃除などのフレーズが出てきております。季違いじゃがしかたがない。

※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合があります。

     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

とある私鉄の始発駅。早めに到着した電車が「どうぞ」と

もっとみる
覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その2

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その2

2020年の1月から、主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。
個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自分の心覚えとして書いています。
一回目はこちら。

2020年2月23日からの一週間
激動の一週間だった。
土日祝と三連休だったこともあって、週の前半はまだあちこちでいろんな落語会が開かれていた。

わたしは参加できなかった

もっとみる
覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その1

覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その1

自分の記憶に自信がない。
いろんなことをすぐに忘れてしまう。

阪神大震災のとき、大阪にいながらどんなふうに感じて過ごしていたのか。
3.11のときは、誰とどんなことを話したのか。

覚えていることもあるけれど、忘れてしまったことのほうが多い。
( 3.11のときは、その日の晩に大阪で笑福亭三喬師匠と柳家喬太郎師匠の
二人会があって、打ち上げの席で喬太郎師匠が「本当にすみませんが」と、ずっと携帯を

もっとみる
「あれっ、避けられてる?」と思ったときに 『なめくじ長屋捕物さわぎ』都筑道夫

「あれっ、避けられてる?」と思ったときに 『なめくじ長屋捕物さわぎ』都筑道夫

担当の方に許可をいただきまして、これまで雑誌などに書いた原稿をアップします。
今回は、PHP『くらしラク~る♪』2019年10月号 リレーエッセイ
「わたしのそばにある、暮らしの本」

リード文に
『今も手元に置き、生活に彩りを与えてくれる本について、リレー形式でつづっていただきます』
とあるように「暮らしの本」しばりなのですが、わたしが書く意味も考えて演芸の本もこっそり混ぜ込みました。

二回目

もっとみる