くまざわあかね

落語作家。 1971年大阪市生まれ。 NHK『上方落語の会』 『ラジオ深夜便』第3金曜…

くまざわあかね

落語作家。 1971年大阪市生まれ。 NHK『上方落語の会』 『ラジオ深夜便』第3金曜「上方落語を楽しむ」 『関西ラジオワイド』関西文化情報 https://twitter.com/akane_kuma

マガジン

  • まえに書いたもの

    新聞や雑誌に掲載されたエッセイをまとめています。 ※無断転載・引用は固くお断りいたします。

  • 覚えておきたいこと・忘れたくないこと

    2020年1月から、落語・お芝居などがいつ・どんなふうに中止・延期となったのか。それをどんなふうに受け止めたのか。個人的な心覚えです。 ※無断転載・引用は固くお断りいたします。

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ドリフへの裏切り~今さらだけど・追悼志村けん

ドリフターズに対しては、うしろめたい思いがある。 ひとくちに「ドリフターズ」といっても、世代によってイメージするところは違うようで、わたしより少し年上の方は「荒井注がいた初期ドリフ」を思い浮かべるらしい。 1971年生まれのわたしにとっては、ものごころついたときから「ドリフといえば志村けん」だった。 PTAが子どもに見せたくない番組、なんて言われていたけど、幸いわが家はテレビ見放題だったため、土曜の8時はもちろん4チャンネルでスタンバイ(関西エリアです)。 『8時だヨ!

    • 大槻能楽堂・特別公演『葵上』~なんでわたしはお能を見るのか

      ほぼ一年ぶりに能楽堂でお能を見ました。 一年前に見たのはこちら。 2020年から21年にかけて、歌舞伎・文楽・落語と、さまざまな分野で リモート公演が行われ、家のパソコンやテレビ画面で楽しませていただきました。 もちろん、生の舞台がいちばん良いことは重々承知のうえで、それでも オンライン公演やリモート公演には、会場まで足を運びづらいお客さまにとってのメリットや、 「こんなやり方もあるんやなぁ」 と、新しい目を見開かされたことも多々ありました。 ただ。 お能だけは、オンラ

      • 最近読んだ本 『あざやかな女』円地文子

        寄席芸人として育ち、何人かの男性に庇護されながらひたむきに芸を磨き、ついには邦楽の一派の創始者となった生島さよ。 東京下町に生まれた彼女の、明治の末から昭和初期、そして戦後にかけての流転の人生を描いた長編小説です。 が。 「小説」とは言い条、完全なる創作、フィクションというわけではありません。 事実に基づいているようなのだけど、それでいてモデルを明記しているわけでもない。 わかる人にはわかるような書きぶりで、それとなーくにおわせています。 たとえば、主人公の生島さよのモデ

        • 2021年 手帳の旅

          気に入って使っていた手帳が廃番になってしまったのはこれが三度目のことでした。 大学を出てから使っていたのは、しゃれた文具を扱う近所のデザインショップ・ギャラリーインターフォームさんのオリジナル商品。 ↑ この2002年の銀色がとても素敵でした! 文庫本より心持ち大きなB6サイズが手になじみます。 赤、青、銀、と毎年変わるカバーの色もおしゃれで楽しみで、もう生涯ここの手帳を使う!と決めた矢先、その会社自体がなくなってしまいました。 あんなに使い勝手のいい手帳はなかったの

        • 固定された記事

        ドリフへの裏切り~今さらだけど・追悼志村けん

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        • まえに書いたもの
          10本
        • 覚えておきたいこと・忘れたくないこと
          3本

        記事

          2021年文楽初春公演「どじょう!」

          今月、国立文楽劇場の初春公演第二部で上演されている『碁太平記白石噺』。個人的にとても思い入れのある演目です。 いったい、どこにそんなに思い入れがあるというのか? メインとなるのは、華やかな吉原を描く「新吉原揚屋の段」。 傾城となった姉・宮城野と、田舎から出てきたばかりの妹・おのぶが再会し、ともに父親の仇を討つ相談がまとまります。 わたしが好きなのが、その前段にあたる「浅草雷門の段」です。 田舎から出てきたばかりで人を疑うことを知らないおのぶちゃん。 口先だけの悪いヤツ

          2021年文楽初春公演「どじょう!」

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その4

          2020年の主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。 個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自分の心覚えとして書いています。 前回はこちら。 3月1日。 桂文珍師匠の東京独演会から帰ってきた翌日、そして、大相撲春場所が中止ではなく無観客開催と決まったこの日、中之島の香雪美術館へ出かけた。 前売りチケットを購入していた『上方界隈、絵師済々』展へ。 (余談ですが、この前の週ごろから大相撲春場所の中止や無観

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その4

          まえに書いたもの その6 『最後のロング』

          以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2015.6.29  掲載のものをば。 ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合もあります。        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20代から30代にかけて、のべつ髪型を変えていた。 パーマをあてたり短くしたり、うんと長く伸ばしたり。 背中までの長さをバッサリ切るときには、美容師さんに 「本ッ当にいいんですね?」 と100回ぐらい念押しされた。 髪が伸びるのが割に早

          まえに書いたもの その6 『最後のロング』

          「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。

          「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。 「巣ごもり」てなんやねん。 うちは鳥や蜘蛛の住み家かちゅうねん。 「おうち時間」てさぶいぼ出る。 自分の家に「お」の字をつけるか。 「おそとに出たい」て童謡の歌詞か。 「うち」とか「そと」でええやんか。 蟄居は苦でもなかったけど 気色の悪いことばが増えた。 さぶいぼが止まらん。

          「ステイホーム」てわたしら犬やないねんから。

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その3

          2020年の主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。 個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自分の心覚えとして書いています。 前回はこちら。 2020年2月末から3月はじめのこと 2月27日の夕方。 政府が突然、全国の小中高校生に対し、3月2日からの一斉休校を要請した。 子どもさんのあるご家庭から「えーーーーー!」「急すぎるーーーー!」 という叫びが乱れ飛んでいたそのころ、われわれは出張の準備をしてい

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その3

          まえに書いたもの その5 『ぐだぐだを生きる』

          以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2017.9.25  掲載のものをば。 ※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合があります。      ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 気がつけば夕方、ということがこのところよくある。 あれ、今日いままでなにしてたっけ?と考えるに、掃除して洗濯してごはんの用意して、ネットをチラチラ眺めていたら「え、もう16時?」てなことが多すぎるのである。 そこから晩ご飯の買い物し

          まえに書いたもの その5 『ぐだぐだを生きる』

          まえに書いたもの その4 『赤外線をよみとく』

          以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2017.3.27  掲載のものをば。 ※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合があります。      ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   画面の半分以上を占める暗がりから、スッと現れる藤村志保さんの横顔。 日本髪を結ったその顔が正面を向き、シルエットになったかと思うと廊下を歩く足もとがアップで映し出される。 足袋の白さが美しい。 襖を開け、部屋に入ると天井からのア

          まえに書いたもの その4 『赤外線をよみとく』

          角刈りフレンチ

          ※ 2014年6月、高槻現代劇場での『第11回 レセプション亭 落語会』 パンフレットに書いた文章に、少し加筆しました。 (転載許可いただいております) いつも好き勝手なことを書かせてもらって感謝です! そのレストランは、近所を自転車でうろうろしていて見つけた。 空色の看板に可愛らしいフォントで 『プティレストラン GIRO』 フレンチのお店らしい。 こじんまりとした雑居ビルの一階にある。 人が2人、すれちがうのがやっとの狭い通路の一番奥、左側に入口ドア。 中の様子はわ

          角刈りフレンチ

          まえに書いたもの その3 『立ち位置はどこ?』

          以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム 『女のミカタ』 2016.12.26  掲載のものをば。 年末に書いたものなので、忘年会や大掃除などのフレーズが出てきております。季違いじゃがしかたがない。 ※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合があります。      ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ とある私鉄の始発駅。早めに到着した電車が「どうぞ」と言わんばかりにドアを開けて出発を待っている。 ガラガラの車内に乗り込みロングシ

          まえに書いたもの その3 『立ち位置はどこ?』

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その2

          2020年の1月から、主に2月以降、どんな公演がいつごろキャンセルになったのか、それをどんな気持ちで受け止めたのか。 個人的な記録でいろいろと抜け落ちもあるかと思うのですが、自分の心覚えとして書いています。 一回目はこちら。 2020年2月23日からの一週間 激動の一週間だった。 土日祝と三連休だったこともあって、週の前半はまだあちこちでいろんな落語会が開かれていた。 わたしは参加できなかったのだけれど、2/24(祝)には新世界・動楽亭の『新世界・南光亭』で、廣澤瓢右衛門

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その2

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その1

          自分の記憶に自信がない。 いろんなことをすぐに忘れてしまう。 阪神大震災のとき、大阪にいながらどんなふうに感じて過ごしていたのか。 3.11のときは、誰とどんなことを話したのか。 覚えていることもあるけれど、忘れてしまったことのほうが多い。 ( 3.11のときは、その日の晩に大阪で笑福亭三喬師匠と柳家喬太郎師匠の 二人会があって、打ち上げの席で喬太郎師匠が「本当にすみませんが」と、ずっと携帯を気にしてらしたことを覚えている。 「すみません」なんて気にしないでほしい、当然の

          覚えておきたいこと・忘れたくないこと2020.1月からの記憶 その1

          「あれっ、避けられてる?」と思ったときに 『なめくじ長屋捕物さわぎ』都筑道夫

          担当の方に許可をいただきまして、これまで雑誌などに書いた原稿をアップします。 今回は、PHP『くらしラク~る♪』2019年10月号 リレーエッセイ 「わたしのそばにある、暮らしの本」 リード文に 『今も手元に置き、生活に彩りを与えてくれる本について、リレー形式でつづっていただきます』 とあるように「暮らしの本」しばりなのですが、わたしが書く意味も考えて演芸の本もこっそり混ぜ込みました。 二回目は 『なめくじ長屋捕物さわぎ』 都筑道夫著 光文社時代小説文庫        

          「あれっ、避けられてる?」と思ったときに 『なめくじ長屋捕物さわぎ』都筑道夫