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2020年12月の記事一覧

.CALL.あの日の記憶(『.CALLC.』&『.CALLV.』/古川本舗)

2015年9月20日。

東京は新宿FACE。

公演「.CALL.」

ぼくは、その場にいた。

そして、同年12月4日。

ラストライブ「.RESPONSE.」

ぼくは、見届けることができなかったけど。

古川本舗、活動終了。

彼の旅は、終わりを告げた。

語る言葉一つ持たず、君がもし今も、
僕や、僕らの事を忘れてしまおうとしていても。

――『バンドワゴン』より引用

あれから、早5年。

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Happy Birthday,Avu Maria(HBD/女王蜂)

Q.本日、12月25日は何の日ですか?

A.クリスマス。すなわち、イエス・キリストの誕生日です。

Q.不正解です。

実際のところ、正確な日付は不明らしい。そして、クリスマスはそもそもキリストの生誕を祝福する日であって、イコール誕生日ではないらしい。

(まあ、日本人でいちいちそんなこと気にしている人は、あまりいないだろう。たぶん。)

何が言いたいかといえば、12月25日はロックバンド・女王

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それは、誰にも等しく(Merry Christmas/BUMP OF CHICKEN)

クリスマスには、特別なことがしたくなる。

一人で暮らしていたときは、特にそうだった。

神さまは信じていないから、手を合わせることもないのだけど。(そもそも、イエス・キリストには合掌しないものなんだろうか。)

でも。

ケンタッキーのバーレルが入っているだろう紙袋を抱えている人。

腕からぶら下げたビニール袋から、ラッピングされたプレゼントがのぞいている人。

そんな、通りすがりの人達を見かけ

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辿れども、辿れども(死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相/ドニ―・アイカー)

辿れども、辿れども(死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相/ドニ―・アイカー)

1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で起きた遭難事故。
登山チーム9名はテントから1キロ半も離れた場所で、
この世のものとは思えない凄惨な死に様で発見された。
(中略)
最終報告書は「未知の不可抗力によって」死亡と語るのみ――。

――あらすじより引用

”ディアトロフ峠事件”をご存知だろうか。

『死に山』のサブタイトル通り、氷点下の雪山で起こった”世界一不気味な遭難事故”である。

「不気味で

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「ふうふう」なのか「ふーっふーっ」なのか、ソレが問題だ(スイーツオノマトペ/福田 里香、長崎 訓子)

「ふうふう」なのか「ふーっふーっ」なのか、ソレが問題だ(スイーツオノマトペ/福田 里香、長崎 訓子)

ぼくは、「ふうふう」。

パートナーは、「ふーっふーっ」。

おわかりいただけただろうか。

パートナーは、猫舌なのだ。

オノマトペはそれだけで、時々かわいらしいことをネタバレするものである。

ちなみに、本人は「猫舌ではありません」と否定しております。

けれど、必死の「ふーっふーっ」を目撃しているから、説得力ないよ。

そしてぼくは今、2人分のお茶を淹れている。

ティーバッグを使った簡単な

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ぼくらは等しく、檻の中にいる(この庭に 黒いミンクの話/梨木香歩)

ぼくじゃない、誰かの記憶。

白、赤、黒。

白は雪。

赤は血。

そして黒は、



今年は、豪雪になるらしい。

雪は嫌いじゃない。

降雪も嫌いじゃない。

ぼくが嫌いなのは、積雪なの。

異常な積雪は、檻だ。

静謐な檻。

どこへも行けない。

そんなときに限って、

どこかに行きたい。

けれど、それは危ないので。

昼なのか夜なのかわからない、暗い空を見上げるしかない。

他にす

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『氷』と書いて『永』と読め(氷/アンナ・カヴァン)

『氷』と書いて『永』と読め(氷/アンナ・カヴァン)

『氷』と『永』は、よく似ている。

それは、字面だけではなく。

火によって燃やされるのではなく、水で押し流されるのではなく、氷漬けにされたものは、何千何万年経過しても、その姿を維持し続ける。

それは、救いだろうか。

それとも。



アンナ・カヴァンの『氷』では、まさしくその氷によって、世界は終焉を迎えようとしている。

序盤では、まだ氷に浸食されていない地域もいくつかある。しかし、それも

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