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四月日記

25
思いついたままに書きつけた日記
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#エッセイ

4月20日「幽体離脱」

4月20日「幽体離脱」

ゆっくりと目覚めたせいで時間がなかった。カーテンを開けた向こうはあまり気持ちのいい天気ではなく、鈍色の雲が向こうまで広がっていた。
茶けた山々には緑が差し始めているけれど、さらに奥にある、より高い山のてっぺんには、まだ冬の名残が白く残っていた。季節が動いているのがよく分かった。花粉症の時期であるから、幾ばくかの憂鬱が心を支配した。その反面、暖かくなっていくこれからの日々には嬉しさを感じる。

さっ

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4月5日「抽象画」

4月5日「抽象画」

職場までの道のりには、もはや夏の雰囲気があった。雪は残っているけれど、照りつける日差しの強さが、春をうっかり忘れてしまったみたいに容赦なく僕まで届いた。
春物の羽織にしてよかった。何年も前にGUで買った安物だった。もうそろそろ買い換えたいけれど、致命的に壊れたり、未だにボロくなっていないせいで、なかなか手が伸びなかった。

仕事を終えてご飯を済ませ、夏目漱石の『明暗』を読み始めた。漱石の未完の絶筆

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4月3日「600円」

4月3日「600円」

いつもより少し遅くに目が覚めた。
不意にお腹が鳴った。僕にとっては珍しいことだった。基本的に朝ごはんはほんの少量で済ましてしまうから、ホテルの朝食ビュッフェすら持て余してしまうのに、当たり前の顔してお腹の虫が鳴くのは不思議だった。
仕事の準備をしながらうどんを作った。具材は長ねぎだけの、しみったれたうどんができた。

急いですすりながら、ここ数日、白米を口にしていないことに気づいた。おとといの朝は

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5月26日「ポケットパーク」

5月26日「ポケットパーク」

朝、7:30時頃に布団から起きる。
彼女が仕事の支度をしている間にコーヒーを淹れる。昨日の夜に散歩で買ってきた、たまごサンドとチョコデニッシュを半分こずつ口にしながら、朝のワイドショーを何となく見流す。
早朝の情報番組ってほとんど興味のないことをやっているんだけど、逆に、興味を刺激するような内容だったらテレビにかじりついて会社に遅刻してしまうから、むしろこれで正解なのだろう。狙って作っているテレビ

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5月25日「みょうが」

5月25日「みょうが」

たまには日記みたいなものでも書こう。

夜中の三時までどうにも寝付けず、ハーラン・エリスンの『愛なんてセックスの書き間違い』を読んでいた。SF作家として活躍する著者のSFではない短編集、というのが売り文句だが、そもそも彼の小説を読んだことがないのでその辺はどうでもいい。

タイトル一発のインパクトで購入した。思春期真っ盛りの赤っ恥みたいな言葉をドヤ顔でのたまっているような題名。かと言ってどれかの短

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