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参加型「音ゲー」展開で地下アイドル界に革命?プログラマーアイドルの挑戦

『プログラミングを世界に拡散する』ことをコンセプトに活動を続ける「プログラマーアイドル(アイドルプログラム)」が、昨年 11 月に 2 年目を迎えた。彼女らはこれからの 1 年を飛躍の年と位置づけ、翌 12 月には、本格的なプログラミング計画を画策していた。

12 月中に具体的な発表はなかったが、年が明け、2023 年 1 月 4 日、遂に、そのベールに包まれたプログラミング計画が公開された。

❚ 他アイドルも参加する「音ゲー」開発を発表

彼女たちからプログラミングの勉強をしている様子が微塵も見られない」「プログラミングを披露するのが稀なプログラマーアイドル」という愛ある汚名(?)を遂に返上か、2 人は高らかに「2023 年、アプリを開発します!」と宣言した。

そのアプリとは所謂「音ゲー」、彼女らの楽曲をベースに遊べるという、アイドルならではの、考え得る限りベストなチョイスだ。これが”お勉強”ベースのツール系アプリなどだったら、ファンも観ていて使っていて面白くないだろうし、面白くないものが世界に拡散されることはないはずだ。

また、何より彼女らが、この開発を楽しめるだろう。自分たちが 1 年目に磨き上げてきた数々の楽曲がゲームになって遊べて、しかもそれを自分たちの手で開発して世に出すのだから、こんなに羨ましいアプリ開発はない。

ところで驚きなのが、「音ゲー参加楽曲(アイドル)も近日募集!」という告知だ。

❚ 地下アイドル業界に革命が起こるかもしれない

この告知で考えられるのは、この 2 点だろうか。「アイドルプログラム」以外の、運営元の異なるアイドルグループから、

  • 積極的に楽曲を提供してもらう

  • 或いは、一緒に地下アイドル専用の音ゲーを作り上げていく

このようなコンセプトで開発を計画しているのなら、これは「アイドルプログラムがやっとプログラミングに着手するのかぁ、頑張ってほしいなぁ」というような微笑ましいニュースでは決して収まらない、特に後者なら、もしかしたら、地下アイドル業界に革命を起こすかもしれない重大な発表ではないだろうか。

前回の記事で私は、他のアイドルグループから「音ゲー」の開発依頼が舞い込むのではないか、という予想を立てていたのだが、資金力の乏しい地下アイドルの運営会社のことを考えたら、それは現実的ではない難しい話だった。

物凄く単純な音ゲーを開発するにしても、まともに依頼すれば最低でも開発に 100 万円は必要になるはずだ。それに加え、維持していく月々のランニングコストもある、音ゲーは配信する楽曲データが大きいので、その費用は安くない。とても地下アイドルに賄えるとは思えない。だから分不相応な地下アイドルの音ゲーは世に存在しないし、地上アイドルでさえ滅多に音ゲーを持っていない。「AKB48」も僅か 4 年で音ゲー事業から撤退している。

しかし、地下アイドル業界で手を取り合って盛り上げるという目的で、身近なアイドルグループから次々に参加してもらい、例えばランニングコストを各運営会社で共有するなどして、一緒に全体で大きなひとつの地下アイドル専用の音ゲーを作り上げるのだとしたら、そのエコシステムは明るい実現性が見えてくるし、「プログラマーアイドル」の存在意義が輝いてくる。営利目的の単なるシステム開発会社ではなく、中心には現役のアイドル自身がいること、アイドル自身の手で開発すること、その点に重要な意味がある。地下ライブの現場で、地下アイドル自身が交流して、その”絆”が音ゲーを発展させていく、こんなに推せる話はない。想像しただけでも鳥肌が立つ。

とにかく、資金力の乏しい運営会社は自分たちのアイドルの楽曲も音ゲーで遊べるようになって懐も傷まないし、ファンは普通ならまず有り得ない地下アイドルの楽曲で音ゲーが遊べるようになるし、ファン同士でスコアを競っても面白いし、今まで知らなかった推し以外のアイドルグループを知る機会にもなるし、アイドルプログラムはプログラマーを名乗れるようになるし、こんな、誰も損しないアプリ開発が、あるだろうか…羨ましい限りだ。

❚ 「半年」という納期のストーリー性

具体的な日程については言及されていなかったが、「半年で音ゲーを作ります!」という強気な宣言も同時になされた。プログラミング経験が皆無で、アイドル活動を並行しながら勉強し、この納期を達成するのは、かなり難しいはずだ。しかし、だからこそ、目標へ邁進するストーリー性があり、面白い。

それを踏まえると、具体的な日程が発表されなかったのは、少し不安が残る。玄人のエンジニアたちは、日々、納期に追われている。残業して、休日出勤して、徹夜して、何が何でも納期を守る。納期を過ぎれば、報酬を得られないどころか、多額の賠償金を請求される可能性もあるからだ。

「プログラマーアイドル」を名乗るなら、こういった玄人のエンジニアたちの想いを少なからず共有してほしい。状況に応じて、しれっと納期の変更を繰り返すのは興醒めなので、本当にやめてほしい。厳しい話になるが、反感を買っているケースはあったと思う。「プログラマー(というキャラ設定の)アイドル」が、玄人のエンジニアたちの想いを代弁・表現するなと、理解もできないくせにと。

なので、この「半年」という具体的な納品日は早々に発表してしまって、逃げられない玄人のエンジニアたちの想いを抱きながら、最後には達成する姿を見せてほしい。個人的には一日フルタイム(8 時間)でプログラミングする生配信企画などを熱望したい。それを毎日続け、残業が当たり前で、休日出勤もしなければならない玄人のエンジニアの大変さを身をもって知って、より身近な存在になってほしい。

とにかく「半年」という納期、達成できれば「プログラマーアイドル」としてステージが確実に上がると思う。シンデレラストーリーとして大げさではない。

❚ 試される運営の本気度

「プログラマーアイドル」のコンセプトが発表されてから、もうすぐ 3 年程になるが、どうやらこれまでに「プログラマーアイドル」の手で世に放たれた成果物は何もないようだ。「プログラマーアイドル」を応援し、そして失望から離れていったファンも少なくないだろう。いつもの肩透かしではない、いよいよ本気のプロダクトを残さなければ、嘲笑されたまま終わってしまう。

アイドル自身の手で本当に開発したのかどうかは、エンターテインメントとしても重要だ。実は裏で、運営のエンジニアが開発してました、では目も当てられない。しかし潔く、「プログラマー(というキャラ設定の)アイドル」をマスコット広報に置いた展開とするのも、悪くないとは思う。どの方面にも、振り切るのが大事で、現状の、プログラミングをやっているかもしれないし、やってないかもしれない、特にプログラミングも拡散していない、という中途半端な状態から脱却する良い機会だ。

ところで、運営の体力の無さが、地下アイドルの所以だろう。音ゲーのサービス運営で赤字になるようなことがあれば、早々に破綻してしまう。前述で予想した革命案だと、ランニングコストを参加会社に求め共有するのは前提として、実務の開発費用を、どの程度捻出できるのかが気になるところだ。

音ゲーに有料コンテンツを盛り込みすぎると、ただでさえ少数しか居ないファンの財布事情を疲弊させてしまう。これはファンが離れてしまい本末転倒だ。支えてくれるファンの財布に優しく、且つ、「プログラマーアイドル」が財政破綻しないラインを考えるのは、難しい課題だ。

大多数のファンから、大手なら薄利多売で運営もできるだろうが、その戦略はできない。昨今は、広告モデルではサービスが成り立たないと言われているが、ゲームアプリと親和性の高い広告で少しでも資金を得る方法を模索するのは必要かもしれない。ファンはどこまで理解してくれるだろうか。そのさじ加減を探るのも、現場で踊って歌う現役アイドルの手で開発する大きな利点だ。

「アイドルプログラム」の挑戦ではあるが、同時に運営の挑戦でもある。これが成功すれば、運営はアイドルをアプリリリースできるまでのプログラマーに育て上げる能力を有する会社だというポテンシャルを大体的に示せる。アイドルが卒業してしまっても、裏方へ周り、地下アイドル業界をそのまま支える未来も見える。

どこまで本気なのか、「アイドルプログラム」からも運営からも、目が離せない。

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