記事一覧
【長編小説】#14「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《二人の関係》
「惚れた?」
「え?」
唐突な彼女の質問に、動揺するように変な声が出た。
彼女はくすっと笑って、
「ハヤトくん。好きになっちゃった?」
と聞き直した。
「え、いや、えっと…。」
あからさまに困惑した私の様子を見て、
「うそうそ、ごめん。」
と、彼女は冗談っぽく笑った。
「あ、でもさ、ハヤトくんってかっこいいの?灯莉ちゃんからみてどう思う?」
興味深々
【長編小説】#13「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《向日葵の奇跡》
「やっほー!灯莉ちゃん、もう来てる?」
ドアが開き、明るい声が飛び込む。同時に、陽の光が差し込み、柔らかい春風が舞い込んできた。
今日も彼女の左側には、真っ白で、おとなしい、ラブラドール・レトリーバーがいる。穏やかな顔をしつつも、いつも凛とした雰囲気で、私の目には気弱そうだなんて映ったことは、一度もない。
その姿は、まるで彼女を守るボディーガードのようだった。
この
【長編小説】#12「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《待ち合わせ③》
「世界を…彩った…?」
私は、疑問に思っていた言葉の答えを聞いても、意味がわからなかった。
一体、どういうことなのだろうか。
私の頭の上にいくつものクエスチョンマークが浮かんでみえたのか、彼はクスッと笑って、
「君が、彼女の生活を豊かにしたってことだよ。」
と言った。
ようやく理解が追いつく。言葉の意味はわかった。だけど、
「え、でも、どうしてそうなるんです
【長編小説】#11「私の生まれ変わりは、君がいい。」
やっと!投稿できました…!!😂
前話一部編集しております。
よろしければ前話からお読みください〜☺️
________________________________________
《待ち合わせ②》
「いらっしゃいませ。」
突然の声に、ハッとする。
カウンターの奥から男性が出てきた。20代後半くらいだろうか。スラっとした、黒髪の優しそうな顔をした人だった。真っ白いシャツに、黒いズボン
【長編小説】#10「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《待ち合わせ①》
一週間後。私達は会うことになった。
連絡先を交換した後日、わりとすぐに彼女の方から電話がかかってきた。「いつなら空いてる!?」と、結構前のめりな様子で。
私はまだ自分の病気のことで気分が落ちていたし、もう少し落ち着いてから会いたかったけど、彼女が「じゃあこの日はどう?」とどんどん聞いてくるもんだから、いつの間にか彼女のペースに流されてしまい、気づいたらあれよあれよという
【長編小説】#9「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《新村優葵②》
「お姉さん、名前教えてくれますか?」
まあ、名前くらいなら…。常連さんだし。
「…風原灯莉です…。」
「なるほど。あかりさんの『莉』がジャスミンなんですね。素敵です。」
言われて嬉しくなってしまった自分に照れる。
「灯莉さん、おいくつですか?」
「今年十八になります…。」
彼女がギョッとした顔をした。あからさまに驚いている。
「うっそ!私とタメなの!?」
【長編小説】#8「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《新村優葵①》
「わあ。いい香り。」
目の前に広げられたハゴロモジャスミンの香りを、手であおいで嗅いでいる。私の前にも、甘い香りが強く漂う。
「この花は、『香りの王様』と呼ばれるほど香りが強いです。お嫌いではないですか?」
ハゴロモジャスミンは、甘くて良い香りだが、普通のジャスミンよりも香りが強い。今は満開時期で、その香りは強すぎると感じる人も多い。正直、好き嫌いが分かれる花だと思う。
【長編小説】#7「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《希望③》
「あの、大丈夫ですか。どうかしたんですか。」
彼女が慌てる。必要以上に、心配そうに私を見ている。
それはそうか。視えない彼女にとって、目の前の人が突然泣き始めたら、困惑するのは当然のことだ。いや、視えていても困惑するだろう。だからこそ、必要以上に怖いのだ。何があったのかわからないから。気づけないから。どうしたらいいのかわからないから。
「大丈夫です。すみません。お見苦しいとこ
【長編小説】#6「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《希望②》
「でしたら、ホワイトのガーベラはいかがでしょうか。」
「ホワイト…ですか…?」
彼女がきょとんとする。
「はい。実は、ハゴロモジャスミンという花が四月から五月にかけて開花時期でして。今、とても綺麗なんです。私の名前にジャスミンの花が入っていたので思い出して…って、そんなことどうでもいいですね。」
余計なことを話してしまった。すみません、と謝り、説明を再開した。
「その花
【長編小説】#5「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《希望①》
最近確かに、見にくくはなっていた。だけど、日常生活にそこまで支障はなかったんだ。きちんと、今までも普通に生活を送れていた。
なのに―。
四月の健康診断のとき、初めて視力検査で引っかかり、病院に行った。そしたら―。
若盲症?私が?どうして…。なんで治らないの…?近年若者にみられるようになった病気?知らないよ、そんなの。なんでそんな病気があるの…?どうして、こんな突然…。
【長編小説】#4「私の生まれ変わりは、君がいい。」
《五年前②》
その翌日。私はいつも通り、放課後に花屋でバイトをしていた。
あの後―。先生は若盲症という病気について説明した。
「―お母様。大変申し上げにくいのですが…。娘さんの視力が戻ることは、この先ないと思われます。目は…、悪くなる一方かと…。」
え…。今、なんて…?
呆然とする私。自分の中に、一滴の黒い雫が落ちた。石のように固まってしまい、思考が停止する。言葉の意味を、先に理