記事一覧
モスクワに留学していたら戦争が始まった話-1
はじめに
この記録は、私が2022年1月末から3月末までロシア連邦の首都・モスクワに長期語学留学生(所定修了予定は2022年8月末)として滞在した時のものである。弊ブログ旅行記や本記事の文中にも記載があるが、私には過去にロシアに4回、ウクライナとベラルーシにそれぞれ2回の渡航歴がある。基本的にはどれも旅行なのだが、ウクライナについては西部の都市・リヴィウにて3週間ほどのウクライナ語プログラムに
モスクワに留学していたら戦争が始まった話-7
↑前回 2月24日(開戦当日)の記録
それでも街は美しい
とくに起床後に予定があるわけでもないのに、朝がこれほどまでに恨めしいと思ったことはなかった。まだ空も明けきらない寒い部屋の中で起きだして、学校やアルバイトに向かわないといけない朝の方がまだいくらかマシなような気さえした。どん底近くまで沈み込んだ心中もさることながら、昨日の就寝前に感じ始めた胃と背中の痛みも顕著に表れており、まさしく文字
ふたたび雪のなかで-1
首都は涙を信じない
そろそろ降下が始まるだろうかという頃、冬にしては珍しく眼下に街の灯がとたんに広がった。一体どこの街か、機内モニタの地図で見ても判然としなかったが、薄ら青と橙と、わずかに濃い紅を残した空にぼんやりと擁された街は、長い長いシベリアの横断に終止符が打たれようとしていることを示していた。慎重に冬の空を下っていく最中、機内も俄かに忙しさを帯びてくる。客室乗務員も乗客も、せわしなく機
モスクワに留学していたら戦争が始まった話-5-開戦前夜
↑前回 2月21日(開戦3日前)までの記録
日常・2.23
2月23日はロシアでは祖国防衛の日で、授業は休みだった。授業とはいっても学期が始まってはや1ヶ月、ずっと寮の自室に籠ってオンラインで受講することにも嫌気がさしてきていた。時々「来週から対面授業」という噂が流れることもあったのだが、実際に教室にて授業を受ける日が来ることは一度たりともなかった。
モスクワ市民たちの衛生防疫意識はお世辞
Счастливые города-3
Ленинский проспект
煙突から絶えずもうもうと立ち上り、ひたすらに空を厚く覆う雲に還ろうとする蒸気。それを額縁のごとく着飾ろうと、手前にうっすらと立ちはだかる枯木たち。ビル群はモスクワ都心の周縁らしい、軽い荒涼さを匂わせながらも、十分すぎるくらいに発展しきった街並みを見せている。
寮の1駅手前にある地下鉄駅から地上に出て買い出しに向かう道すがら、ふっと右手に広がるその姿を私は
Счастливые города-2
Лесная
油を熱し、ニンニクを投入する。まだまだ調理の序盤であるが、ふわりと立ち込める香ばしい匂いに既に思わずうっとりとしてしまう。やはり広いキッチンは良いものだと、私は小躍りになりながら鍋を揺らした。
「ナターシャ!マジでいい部屋だな、ここ!」
隣室で荷ほどきをしている親友に声を張り上げて呼びかける。新居での準備に忙殺されている彼女よりも、引っ越しから押しかけてきた客人の私の方がよほ
Счастливые города-1
Архангельск
見渡す限り白色の雪原に、街灯柱が刺さっていた。無限の原野に見えるこの下には大河が眠っており、遠い雪解けの日を静かに待っている。
確かにどうしようもない街だった。規模の大きな地方都市というだけあってショッピングモールは充実していたが、長居する場所ではおそらくない。同僚のイーゴルが「本当に終わってる、ヤク中しかいねえよあんなところ!」と散々こき下ろしていたほどではないにし
モスクワに留学していたら戦争が始まった話-4
↑前回 サンクトペテルブルクでの記録(2月11日)
クレムリンの大統領旗
モスクワは美しい街だ。煌めくクレムリン、正教会たち、ソ連時代に築かれた荘厳なスターリン・ゴシック様式の高層建築たち、そして近未来的な超高層ビル群。その全てが混沌と入り交じりながらも、独特な調和を形成して豊かに日々が過ぎていく。これほどまでに心が躍る街は、私にとってこの星には2つとない愛おしい存在である。
しかし、そ
モスクワに留学していたら戦争が始まった話-3
↑前回 ロシア渡航前夜(1月24日)から2月7日までの記録
古都へ
2月11日、私はロシア第二の街・サンクトペテルブルクに降り立った。前々からずっとあこがれていた古都に、ようやっと足を踏み入れた瞬間だった。
初のペテルブルクは「赤い矢」号に乗ると決めていた。ロシアの鉄道といえばシベリア鉄道、という印象は根強いが、彼の国の鉄道にとってモスクワとペテルブルクを結ぶ寝台列車はやはり看板である。
モスクワでロシアのワクチンを打ってみた話
【注意!】
ロシア製ワクチンは日本では2022年2月現在まだ認可されておらず、報告されている副反応等について日本語で正確かつ十分に知ることができるページは無に等しいと思われます。接種の際は、十分な備蓄と休息を取ることができる環境を整えた上で行ってください。また接種による副反応等について、筆者はいかなる責任を負いませんのでご注意ください。
本情報は2021年1月末時点のものです。今後状況が変化