cyocomuffin

映画は見ることはもちろん、批評やエッセイを読むことも好きです。

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記事一覧

2月27日

 韓国文学の翻訳家として知られる斎藤真理子の読書エッセイ。『本の栞にぶら下がる』  フランスの大河小説『チボー家の人々』に始まり、いぬいとみこ『木かげの家の小人…

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3か月前
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2月1日

 川端康成の『雪国』に魅せられて、ルーマニアから日本へ。 今は弘前で家族と暮らしている人類学者その自伝的エッセイ。  子供の頃の自然の中で祖父母と暮らした思い出…

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4か月前
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10月22日

 カタストロフ なんのこと? 何の予備知識もなく読み始めた『カタストロフ前夜 パリで3・11を経験すること』関口涼子著 ⚪︎これは偶然ではない パリで文学的な創作活…

cyocomuffin
8か月前
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8月2日

時々、凄く好きな一冊に出会うことがある。『あの犬が好き』シャロン.クリーチ 最初の書き出しは…僕は少年だし、詩は女の子のものだし、そんなものは書けない。少年ジャ…

cyocomuffin
10か月前
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7月14日

  翼よ、北に       アン・モロー・リンドバーグ  1931年にチャールズ・リンドバーグとともに単葉機でN・Y カナダ アラスカ シベリア カムチャッカ 千島…

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11か月前
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5月11日

花田菜々子  『出会い系サイトで70人と実際に会って    その人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』  離婚というハプニングに会ってしまった菜々子さん、 …

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1年前
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  冬

     アリ・スミス ソフィアは、かつて実業家として成功しだが、今は経済的にはかなり苦労してようだ。 そんな銀行での話から始まる。 …神は死んだ。  愛は死んだ…

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1年前

  秋

       アリ・スミス著 エリザベスとダニエルは隣人同志だった。 隣人でいることの意味を隣人に訊いて作文する、という学校の宿題が出されてからの付き合い。 その…

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1年前

マザリング.サンデー

先日、観た「帰らない日曜日」の映画が好きだったので原作も読んでみた。
グレアム・スウィフト著『マザリング・サンデー』
かなり小説とは違ったように感じた。
逆に映…

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1年前

テヘランでロリータを読む

テヘランで最もリベラルな大学で英文学を教えていたが、スカーフを拒否したことでトラブルになり、結局退職。しかし、大変な社会中で数人の教え子と小さな読書会という形で…

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1年前
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ファミリー・ライフ

         アキール•シャル 1970年代、主に二人の息子たちの将来を考えて、インドからTVと図書館があるアメリカへ移住したラジンダー一家。しかし、2年程過ぎた…

cyocomuffin
3年前

トルコ・コーヒーの沸かしかた

長田弘詩集『食卓一期一会』はめちゃくちゃ好きな本。 食事と言葉、人生と時間、夢と失意のマリアージュって感じの一冊で、 私は、おいしい林檎とこの詩集があればなんと…

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3年前
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愛してるって言っておくね

心の奥底が揺さぶられる、12分のアニメーション。 夫婦が食事をしている。グレイでガランとした空間。 二人の心だろうか、影が怒ったように絡み合う。 洗濯物の中に水…

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3年前
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世界でただ一つの読書

           三宮麻由子 エッセイは主に2つの点にスポットが当てられいる。 1つは信仰。夏目漱石「坊っちゃん」に現れる西洋的な愛、ペルシャの説話集「アラビ…

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3年前
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クララとお日さま

         カズオ・イシグロクララはショートカットのフランス人みたいなAF。まるでテディベアかおもちゃのように買われて病気の女の子ジョジーの家族となっていく…

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3年前
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みどりのゆび

         モーリス・ドリュオン 不思議な力を持った少年、何もかもを植物に変えることができる少年、チト。 その力で少年が住んでいる町を《花の町ミルポワル》…

cyocomuffin
3年前
2月27日

2月27日

 韓国文学の翻訳家として知られる斎藤真理子の読書エッセイ。『本の栞にぶら下がる』

 フランスの大河小説『チボー家の人々』に始まり、いぬいとみこ『木かげの家の小人たち』
林芙美子や郷静子、永山則夫の『土堤』鶴見俊輔、韓国出身の作家や詩人たち(私はまったく知らな人たち)田辺聖子、森村桂など。

 読書はつくづく旅に似ている、と思う。
過去への旅、ビリビリ響く。

いぬいとみこさんのこと、の章は、、、

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2月1日

2月1日

 川端康成の『雪国』に魅せられて、ルーマニアから日本へ。
今は弘前で家族と暮らしている人類学者その自伝的エッセイ。

 子供の頃の自然の中で祖父母と暮らした思い出、
町に出て学校に通いながらチャウシェスク独裁政治に怯えながら暮らした日々。
そして日本で暮らす日々。

 映像作家でもあり、映画の話も多く興味深いエッセイだった。
書かれている映画のタイトルは、『野いちご』『惑星ソラリス』『白樺の林』『

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10月22日

10月22日

 カタストロフ なんのこと?
何の予備知識もなく読み始めた『カタストロフ前夜 パリで3・11を経験すること』関口涼子著

⚪︎これは偶然ではない
パリで文学的な創作活動を続けている作家の3月10日から4月30日までの日記
家族、友人そして、故郷への思いが切実に響いてくる。
それが世界全体の有り様と、過去の歴史的な出来事などに時々広がっていくのは(自然災と人災は別であるけれど)ヨーロッパという地に住

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8月2日

8月2日

時々、凄く好きな一冊に出会うことがある。『あの犬が好き』シャロン.クリーチ

最初の書き出しは…僕は少年だし、詩は女の子のものだし、そんなものは書けない。少年ジャックは、学校で詩の授業を受ける。ウィリアム.カーロス.ウィリアムズ ロバート.フロスト ウィリアム.ブレイクなどなど。(そのどれも正直言って私にも何を言ってるのかよくわかりません。)

それからしばらくして、季節は春のはじめころ、授業でウ

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7月14日

  翼よ、北に
      アン・モロー・リンドバーグ

 1931年にチャールズ・リンドバーグとともに単葉機でN・Y カナダ アラスカ シベリア カムチャッカ 千島 クナシリ 日本 中国へと旅した旅行記です。

暑い暑いこの時に、北への旅行記を読む事は毎日楽しかった。

旅は人との出会いと記してるように、エスキモーの人たち、日本の人たち、中国の人たちとの出会いを繊細な感受性と愛情で書いている。

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5月11日

花田菜々子
 『出会い系サイトで70人と実際に会って
   その人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

 離婚というハプニングに会ってしまった菜々子さん、
空っぽの心を抱えて、たまたま出会った出会い系サイト「X」に登録、街に飛び出した。
書店員だったので、本には詳しい。そんなスキルを活かして、興味のありそうな本を紹介しまくった日々のエッセイ。

久しぶりに本を読んで腹を抱えて笑った。

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  冬

  冬

     アリ・スミス

ソフィアは、かつて実業家として成功しだが、今は経済的にはかなり苦労してようだ。
そんな銀行での話から始まる。
…神は死んだ。
 愛は死んだ。

ロンドンに住む息子アートは、クリスマスには恋人「シャーロット」とコーンウォールの母ソフィアの元に帰る約束していた。そして、公園で見つけたもう一人の「シャーロット」と帰ることになる。
…愛は明らかに死んでいた。

今年のクリスマスに

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  秋

  秋

       アリ・スミス著

エリザベスとダニエルは隣人同志だった。
隣人でいることの意味を隣人に訊いて作文する、という学校の宿題が出されてからの付き合い。
その時ダニエルはすでに80代のお爺さん。
そして今は老人ホームでひたすら眠っている。木のオーバーコート着て夢の中にいる。

エリザベスは32歳、美術教師。家など持てず、ずっとアパート暮らしだろう、と思っている。
しばらくブランクがあったが二

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マザリング.サンデー

マザリング.サンデー

先日、観た「帰らない日曜日」の映画が好きだったので原作も読んでみた。
グレアム・スウィフト著『マザリング・サンデー』
かなり小説とは違ったように感じた。
逆に映画ってこういう風に作るのか、とも思った。
1924年春、メイドの里帰りの日、その1日を今は作家となったジェーンが振り返る。
イギリスの春の光の描写がとても美しい。
孤児だったジェーンは帰る家はないが、ポールとの忘れられない時間を共有する。


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テヘランでロリータを読む

テヘランでロリータを読む

テヘランで最もリベラルな大学で英文学を教えていたが、スカーフを拒否したことでトラブルになり、結局退職。しかし、大変な社会中で数人の教え子と小さな読書会という形で文学を読み続ける。取り上げてる文学はロリータ、ギャツビー、ジェイムス、オースティンなど。文学者の視点とジャーナリズムの視点が交差する。やがて小説の中に民主主義的構造を見、個人の夢や才能が体制に潰されていく現実を激しい怒りで書きしるしている。

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ファミリー・ライフ

         アキール•シャル

1970年代、主に二人の息子たちの将来を考えて、インドからTVと図書館があるアメリカへ移住したラジンダー一家。しかし、2年程過ぎたころ兄のビルジュが大きな事故に遭い脳を損傷するという悲劇に襲われる。

これは、“おぞましい真実”とともに弟のアジェの視点で語られる少年の成長物語。

「悲しいだと?俺は毎日首を吊りたくなる」と怒る父。
「神様はなんだってできるのよ

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トルコ・コーヒーの沸かしかた

トルコ・コーヒーの沸かしかた

長田弘詩集『食卓一期一会』はめちゃくちゃ好きな本。

食事と言葉、人生と時間、夢と失意のマリアージュって感じの一冊で、

私は、おいしい林檎とこの詩集があればなんとかなるな、っていつも思う。

そして『トルコ・コーヒーの沸かしかた』

 コーヒーは強く炒って

 できるだけ細かくくだいて・・・・

と丁寧にコーヒーのいれ方が詩われていて、

砂漠の革命家の言葉が胸にせまる。

砂漠で飲むコーヒーっ

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愛してるって言っておくね

愛してるって言っておくね

心の奥底が揺さぶられる、12分のアニメーション。

夫婦が食事をしている。グレイでガランとした空間。

二人の心だろうか、影が怒ったように絡み合う。

洗濯物の中に水色のTシャツを見つけて泣き崩れるお母さん。

壁に水色のボールの跡。じっと見つめるお父さん。

元気なサッカー女子がボールを蹴る。

幸せな、ありふれた時間が思い出が描かれる。

星条旗がアップされ、停止する。

銃の音。携帯に流れる

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世界でただ一つの読書

           三宮麻由子

エッセイは主に2つの点にスポットが当てられいる。
1つは信仰。夏目漱石「坊っちゃん」に現れる西洋的な愛、ペルシャの説話集「アラビアンナイト」で語られる「容赦ない光と闇」のなかで守る信仰、与謝蕪村の宇宙観、「南の島ティオ」に描かれる島の神々との対話など。

もう一つは音。幼くしてシーンレスになった著者に「麻由にも読んで欲しい本があるんだ」と言ってカセットテープに吹

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クララとお日さま

         カズオ・イシグロクララはショートカットのフランス人みたいなAF。まるでテディベアかおもちゃのように買われて病気の女の子ジョジーの家族となっていく。そんなジョジーとの出会いと別れの物語。クララはお日さまととても近い。いつもいつも光の模様を探し求め心に描いている。ジョジーと暮らすようになって、つまりは現実の世界で暮らすようになってからは、いつの間にかそれが祈りになっていった。「お日さ

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みどりのゆび

         モーリス・ドリュオン

不思議な力を持った少年、何もかもを植物に変えることができる少年、チト。

その力で少年が住んでいる町を《花の町ミルポワル》に変え、争う二つの国の武

器を植物だらけにして戦争を止めました。

しかし、大好きなムスターシュおじいさんの死を乗り越える事ができません。

「花をいくらさかせても、消すことのできない悪がひとつある、ということをき

みは発見したんだ

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