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  秋

       アリ・スミス著

エリザベスとダニエルは隣人同志だった。
隣人でいることの意味を隣人に訊いて作文する、という学校の宿題が出されてからの付き合い。
その時ダニエルはすでに80代のお爺さん。
そして今は老人ホームでひたすら眠っている。木のオーバーコート着て夢の中にいる。

エリザベスは32歳、美術教師。家など持てず、ずっとアパート暮らしだろう、と思っている。
しばらくブランクがあったが二人は再会する。
眠り続けるダニエルに本を読む。『素晴らしき新世界』『二都物語』

二人はアートを愛する心で結ばれていた。
ダニエルはエリザベスにいつも訊ねた。
「何を読んでいるのかな?」

この小説はイギリスが、世界が分断されつつある今をテーマにしていて、しかし
枯葉の中に土の中に豊かな別の世界がある様にイギリスや世界にも希望と光がある。

…もう、枯れたように見える灌木に、まだ薔薇が花開いている。と締めくくられていている。
清々しい読後感。


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