これ

たまにオリジナルの書き物をしていきます。小説だったり報告だったり。とてつもない遅筆です…

これ

たまにオリジナルの書き物をしていきます。小説だったり報告だったり。とてつもない遅筆ですが、何卒よろしくお願いします。

マガジン

  • 【小説】ロックバンドが止まらない

    オリジナル小説です。 とあるバンドの話です。 何卒よろしくお願いします。

  • スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~

    全201回にわたるオリジナル小説です。アクター部という実在しない部活のことを書きました。ポップに読めるものを目指したので、何卒よろしくお願いします。

  • 【小説】白い手

    全5回のオリジナル短編小説です。 男性身体障害者への射精介助サービスの話です。 note創作大賞2023への応募作でもあります。 何卒よろしくお願いします。

  • 【小説】本当に死ねるその日まで

    全11回のオリジナル小説です。 死ねない体質の主人公たちが活躍するお悩み解決ものです。 ジャンププラス原作大賞に応募したシナリオを小説の形に再編集しました。 何卒よろしくお願いします。

  • 【小説】30-2

    オリジナルの短編小説です。 Youtubeにオリジナルの動画を投稿している28歳が主人公です。 小さいけれど、重大な出来事が数々起こります。 何卒よろしくお願いします。

記事一覧

【小説】ロックバンドが止まらない(101)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(100)  ライブが終わって機材を機材車に積みこむと、神原たちはまっすぐこの日宿泊するホテルに向かっていた。自分の部屋に入…

これ
1日前
2

【小説】ロックバンドが止まらない(100)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(99)  ショートランチのライブが終わってから十数分。フロアの照明は再び落とされた。転換時のBGMの代わってスノーモービル…

これ
3日前
5

【小説】ロックバンドが止まらない(99)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(98)  ショートランチやスノーモービルの機材車がやってきたのは、神原たちが自分たちの機材の搬入をあらかた終えた頃だった。…

これ
6日前
1

【小説】ロックバンドが止まらない(98)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(97)  スプリットツアー初日のSHIBUYA NーEASTでのライブは盛況のうちに終わっていた。自分たちもスノーモービル…

これ
8日前
5

【小説】ロックバンドが止まらない(97)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(96)  楽器を構えた神原たちは演奏を開始するために、少しだけ距離を縮める。登場SEが止んだなかで、神原たちは四人で向き合…

これ
10日前
2

【小説】ロックバンドが止まらない(96)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(95)  リハーサルを終えた神原たちは、いったん楽屋に戻る。すると、そこには次にリハーサルをするショートランチの三人がいた…

これ
13日前
4

【小説】ロックバンドが止まらない(95)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(94) 「神原君、お疲れ様。どうだった? 今日の仕事は」  窓の外からトラックが走っていく音が聞こえる中、四宮が声をかけて…

これ
2週間前
7

【小説】ロックバンドが止まらない(94)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(93)  神原たちがバンド練習を終えてスタジオを出たときには、もうすっかり日は沈み、辺りは暗くなっていた。肌を突き刺すよう…

これ
2週間前
5

【小説】ロックバンドが止まらない(93)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(92)  レコーディングが終わってから初めてのバンド練習の日。神原たちは、四人で無事に顔を合わせることができていた。まだ一…

これ
2週間前
4

【小説】ロックバンドが止まらない(92)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(91) 「レコーディング、お疲れ様」  神原がそう言うと、電話の向こうから「うん、泰斗君もお疲れ様」という声が返ってくる。…

これ
3週間前
4

【小説】ロックバンドが止まらない(91)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(90)  一日だけ休息日を取ると、レコーディングはすぐに再開された。休むことでわずかにでもリフレッシュができたのか、園田は…

これ
3週間前
3

【小説】ロックバンドが止まらない(90)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(89)  アンコールは演奏するのが一曲だけだったこともあって、神原たちは改めて集中した演奏ができていた。園田もわずかな時間…

これ
3週間前
5

【小説】ロックバンドが止まらない(89)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(88)  神原たちが日を改めて話し合った結果、バンド練習を一回だけ全員で休むことが決まった。  二度目のワンマンライブが近…

これ
4週間前
6

【小説】ロックバンドが止まらない(88)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(87) 「では、皆さん。今日はお疲れ様でした。乾杯!」  そう神原が音頭を取ると、四人掛けのテーブルを二つ合わせた席から口…

これ
1か月前
6

スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(201)

前回:スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(200)  陽気な話し声が、あちこちのテーブルからこだまする。午後四時という中途半端な時間帯でも…

これ
1か月前
7

スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(200)

前回:スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(199)  校庭に植えられた桜の木々は小さなつぼみをつけて、間もなく訪れる咲き誇る日をうずうずと…

これ
1か月前
6
【小説】ロックバンドが止まらない(101)

【小説】ロックバンドが止まらない(101)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(100)

 ライブが終わって機材を機材車に積みこむと、神原たちはまっすぐこの日宿泊するホテルに向かっていた。自分の部屋に入って荷物を置いた神原は、ベッドに座り込んで深く息を吐く。

 今日のライブも、またライブイベント全体も客観的に見れば、成功したと言えるだろう。神原たちの演奏も破綻とは無縁だったし、観客にも曲が受け入れられていたから、手ごたえは確かに得て

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(100)

【小説】ロックバンドが止まらない(100)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(99)

 ショートランチのライブが終わってから十数分。フロアの照明は再び落とされた。転換時のBGMの代わってスノーモービルの登場SEが流れる。

 それでも曲に合わせて鳴らされる手拍子も、スノーモービルの三人が登場したときの歓声も、明らかにショートランチのときと比べて小さかった。まったくのゼロではないものの、先ほどのショートランチの盛り上がりを見ているから

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(99)

【小説】ロックバンドが止まらない(99)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(98)

 ショートランチやスノーモービルの機材車がやってきたのは、神原たちが自分たちの機材の搬入をあらかた終えた頃だった。神原たちも二組の機材の搬入を軽く手伝いつつ、全ての機材を下ろし終わったタイミングで、プラチナホールのフロアに向かう。

 プラチナホールは、渋谷のN―EASTよりは少し規模が小さく、三〇〇人が収容できるライブハウスだった。東京よりもキャ

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(98)

【小説】ロックバンドが止まらない(98)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(97)

 スプリットツアー初日のSHIBUYA NーEASTでのライブは盛況のうちに終わっていた。自分たちもスノーモービルも、今のベストに近いライブをした実感が神原にはある。

 それでも、きっと観客からしてみれば今日のハイライトは、最後に登場したショートランチだろう。ショートランチの三人は何曲もの良い曲を間違いのない演奏で披露していて、盛り上がるのも当然

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(97)

【小説】ロックバンドが止まらない(97)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(96)

 楽器を構えた神原たちは演奏を開始するために、少しだけ距離を縮める。登場SEが止んだなかで、神原たちは四人で向き合った。

 息を呑むような雰囲気のなか、神原たちは頷き合って、一斉に最初の一音を鳴らし出す。適当なコードを弾きながらマイクの前に向かい合った神原は、高らかに宣言するかのように「こんにちは! Chip Chop Camelです!」と口にし

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(96)

【小説】ロックバンドが止まらない(96)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(95)

 リハーサルを終えた神原たちは、いったん楽屋に戻る。すると、そこには次にリハーサルをするショートランチの三人がいた。

 神原としてはすぐに楽屋を出たい気持ちもあったが、それでもギター・ボーカルの平井(ひらい)に声をかけられれば、挨拶ぐらいはせざるを得ない。

 顔見せライブで曲がりなりにも共演したからか、平井は神原たちの顔と名前を覚えていた。特に

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(95)

【小説】ロックバンドが止まらない(95)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(94)

「神原君、お疲れ様。どうだった? 今日の仕事は」

 窓の外からトラックが走っていく音が聞こえる中、四宮が声をかけてくる。暖房がかかった事務所は常に搬入搬出口が開いている倉庫とは違い、ぬくぬくとした暖かさがある。

 そんななかで、神原は四宮の机の前に立っていた。四宮の目は細められていて、神原としても、応えるのに大きな緊張はいらなかった。

「はい

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(94)

【小説】ロックバンドが止まらない(94)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(93)

 神原たちがバンド練習を終えてスタジオを出たときには、もうすっかり日は沈み、辺りは暗くなっていた。肌を突き刺すような寒さを、改めて四人は感じる。

  この日はどこにも寄らず解散する流れになって、神原も一人で帰路に就く。ファミリーレストランで夕食を食べてから、家に帰る。

 この日は、コンビニエンスストアで酒を買うことはしなかった。園田の話を聞いた

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(93)

【小説】ロックバンドが止まらない(93)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(92)

 レコーディングが終わってから初めてのバンド練習の日。神原たちは、四人で無事に顔を合わせることができていた。まだ一〇連勤のただ中にある園田も平気そうな顔をしていて、実情はどうであれ神原は少し安堵する。

 スタジオに入っても四人ともが澱みのない演奏をしていて、アルバイトなどそれぞれの事情がありながらも、ちゃんと全員が自主練習を積んできたことが神原に

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(92)

【小説】ロックバンドが止まらない(92)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(91)

「レコーディング、お疲れ様」

 神原がそう言うと、電話の向こうから「うん、泰斗君もお疲れ様」という声が返ってくる。その言葉だけで、神原の胸はまたじわりと温められた。

「大変だっただろ、今回のレコーディング。特にお前は始まる前もずっとバイトしてたんだから。正直、疲れただろ?」

「まあ、疲れなかったって言ったら嘘になるね。特に昨日はやばかったかな

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(91)

【小説】ロックバンドが止まらない(91)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(90)

 一日だけ休息日を取ると、レコーディングはすぐに再開された。休むことでわずかにでもリフレッシュができたのか、園田は爽やかな表情をしてレコーディングスタジオに現れていた。

 神原が「大丈夫か?」と声をかけても、「うん、大丈夫」と気丈に答えてくれる。疲労がリセットされたかのような雰囲気に、神原たちもその言葉を素直に信じることにした。

 そして、実際

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(90)

【小説】ロックバンドが止まらない(90)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(89)

 アンコールは演奏するのが一曲だけだったこともあって、神原たちは改めて集中した演奏ができていた。園田もわずかな時間でも休めたからか、最後まで引き締まったタイトな演奏をしていた。

 フロアの雰囲気も多少なりとも持ち直していて、ステージを降りたときに後味の悪さは、少なくとも神原は感じなかった。

 楽屋に戻って、四人して椅子に座りこむ。誰もが疲れてい

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(89)

【小説】ロックバンドが止まらない(89)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(88)

 神原たちが日を改めて話し合った結果、バンド練習を一回だけ全員で休むことが決まった。

 二度目のワンマンライブが近づいてきているなかで、貴重な全員での練習の予定を取り消すことは神原には不安しかなかったが、それでも背に腹は代えられなかった。きっと何とかなるだろうと、神原たちは自分たちを信じるしかない。

 幸い一度休んだことで、園田も調子を取り戻し

もっとみる
【小説】ロックバンドが止まらない(88)

【小説】ロックバンドが止まらない(88)

前回:【小説】ロックバンドが止まらない(87)

「では、皆さん。今日はお疲れ様でした。乾杯!」

 そう神原が音頭を取ると、四人掛けのテーブルを二つ合わせた席から口々に、「乾杯」との声が上がる。神原も与木たちやCLUB ANSWERのスタッフらと、生ビールが入ったジョッキを突き合わせる。

 苦味を伴った喉ごし。でも、それが気持ちいいと思えるくらいには、神原は打ち上げで飲む酒に慣れてきていた。

もっとみる
スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(201)

スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(201)

前回:スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(200)

 陽気な話し声が、あちこちのテーブルからこだまする。午後四時という中途半端な時間帯でも、千葉中央駅近くのファミリーレストランは満席に近かった。店内を埋め尽くさんばかりの制服たち。

 卒業式を終えた上総台高校の学生たちが、別れを惜しむかのように大勢やってきているのだ。三〇〇円のドリンクバーは場を持たせるにはちょうどいい。

もっとみる
スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(200)

スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(200)

前回:スポットライトが見えずとも~上総台高校アクター部がいる!~(199)

 校庭に植えられた桜の木々は小さなつぼみをつけて、間もなく訪れる咲き誇る日をうずうずと待っている。晴れ渡った空は見上げるだけで眩しく、晴明たちがいる体育館にも暖かな日差しを届けてくる。

 気温が上がったこの日は朝から暖房いらずの暖かさで、生徒たちは誰一人として寒さに震えることなく、そのときを待つことができていた。

 

もっとみる