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シングルマザーや自殺志願者に追いつめられる物語を作ろう!|『危険な情事』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「危険な情事」をベースに新しい物語を妄想します。

※「危険な情事」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「危険な情事」は不倫相手が恐ろしいストーカーと化すサスペンス映画ですが、「『不倫相手以外の人』がストーカー化しても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体誰をストーカーにするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「男子高校生が、酔った勢いで、地味で目立たないクラスメイトと性交してしまう。そしてストーキングされる物語」、「男子大学生が、何気なく同学科の陰キャを飲み会に誘う。そしてストーキングされる物語」の2案でした。


案③


嘉村 「案③」にまいりましょう!

三葉 はい。「案③」は、「1人暮らしの男子大学生が、ふとしたことから隣人のシングルマザーと親しくなる。そしてストーキングされる物語」です。


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嘉村 シングルマザーがストーカー化する……。

三葉 ええ。詳細をご説明する前に、ここで一度「危険な情事」のストーリーをざっくり振り返っておきましょう。すなわち……。


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嘉村 なるほど。

三葉 さて「案③」ですが……主人公は男子大学生です。彼は東京のアパートで1人暮らしをしている。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ある日の帰宅途中、彼は泣いている女の子と遭遇する。辺りに人影はない。声をかけようとして……思案する。彼の脳裏には「冤罪」「幼女誘拐」「性犯罪者」「社会的な死」などの言葉が次々浮かんでくる。

嘉村 まぁ、こういうご時世ですからね。声をかけるのを躊躇してしまうのも無理ありませんよね。

三葉 ただ、彼は善人です。放っておくことはできない。少しでも怪しまれぬように満面の笑みを浮かべ、手をヒラヒラと振り、近づきすぎると変質者扱いされそうなので1mほど離れたところから、へっぴり腰になって「やっ、やあ、お嬢さん」と声をかける。

嘉村 ……余計怪しい気がしますが。

三葉 女児はそのヘンテコなスタイルに吹き出し、すぐに打ち解ける。

嘉村 ほぉ。

三葉 で、聞けば同じアパートの隣の部屋に住んでいるとのこと。主人公は「世間は案外狭いもんだなぁ」なんて能天気なことを考えながら、女児を家まで送り届ける。そして……彼女の母と会うのです!

嘉村 ふむふむ。

三葉 女児の母は大変に美しい人で、主人公の同級生よりも若く見える。しかし、お高くとまっているわけではない。気さくで親しみやすい人だ。……と、これが物語の冒頭です。

嘉村 なるほど。

三葉 その後、主人公と母子の交流が始まります。「お夕飯まだでしょ?よければうちで一緒に食べない?」なんて誘われたり。女の子が「遊ぼ!」とやってきて、すぐに母が「またお邪魔してる……本当にすみません」と謝りにきたり。

嘉村 ほぉ。

三葉 親交を深める内に、いろいろと明らかになっていきます。隣人がシングルマザーであること。両親を早くに亡くしたこと。結婚と同時に東京に出てきたので近くに親しい友人などがおらず、あまり人と話す機会がないこと。そして、女の子は普段人見知りが激しいのだが、なぜか主人公には懐いていること。だから主人公と仲よくなれたことを嬉しく思っている……などなど。

嘉村 ふむ。

三葉 話を聞いた主人公の友人は、「エロマンガみたいな展開じゃねぇか!クソッ!羨ましい!!」なんて冗談を言う。

嘉村 確かに。

三葉 ただし、主人公は笑い飛ばす。なるほど。確かに母は美人で、女の子はかわいい。一緒に食卓を囲んでいると、「まるで家族みたいだな」と感じることもある。……が、しかし、彼には彼女がいるのだ。それに、彼はまだ19歳。一回り以上年の離れた女性と結婚する?来年小学校に上がる子どものパパになる?……あまりにも現実味がありません。

嘉村 なるほど。

三葉 ところが……母子の言動が次第におかしくなっていく!

嘉村 おっ、きましたね!

三葉 主人公を夫、そして父のように扱い始めるのです。主人公が実家に帰省するときには、当然の如くついてこようとしたり。あるいは、これまた当然の如く「来週はこの子のランドセルを見に行こうと思うの。空けておいてね」なんて言ったり。

嘉村 おおっ……。

三葉 そして事態はどんどんシリアスになっていって……という物語です。

嘉村 なるほどねぇ!「隣人との温かな交流を描いた作品」、あるいは「エロマンガのようなおいしい展開を描いた作品」に見せかけて、徐々にサスペンスに移行していくわけですね。

三葉 そうですね。特に、女児。彼女を上手く動かすとかなり怖い話になると思うんですよ。

嘉村 ほぉ。

三葉 最初は無邪気でかわいらしく見えた女の子が、次第に不気味な表情を浮かべるようになったり、夜道に突然現れたり、夜中にふと目を覚ますとじっと顔を覗き込んでいたり……メッチャ怖いでしょ!


案④


嘉村 それでは、「案④」にまいりましょう。

三葉 「案④」は、「男性会社員が、自殺しようとしている女性と偶然遭遇し、元気づける。そしてストーキングされる物語……!!」です。


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嘉村 今度は自殺志願者ですか。

三葉 はい。主人公は男性会社員。彼が、いままさに自殺せんとしている女性を偶然発見するところから物語は始まります。

嘉村 なかなかショッキングな出だしですね。

三葉 彼は慌てて引きとめ、「バカなことは止すんだ!」とビンタをかます。

嘉村 ほぉ!

三葉 主人公は熱血野郎なんですよ。学生時代はラグビー部、いまは押しの強い営業マン。もちろん弁も立つ。

嘉村 なるほど。

三葉 彼は女性の話を聞き、元気づける。「何かあったらいつでも連絡してくれよな。まっ、オレにできることなんてほとんどないけどさ。ガハハッ!」。

嘉村 ふーん、いいヤツなんですね。

三葉 そうですね。「案③」もそうですが、基本的に、主人公は善人の方がいいと思うんですよ。なぜかというと……。


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三葉 「危険な情事」の主人公もそうです。彼は、確かに不倫をした浮気野郎です。しかしその一点を除けば、ごくごく常識的な善人として描かれています。

嘉村 ふむふむ。

三葉 で、ストーリーの続きですが……その救った女性が次第に常軌を逸した言動を取るようになります。何度も何度もしつこく電話をかけてきたり。夜遅くに帰宅すると、家の前で待っていて「夕飯作りすぎちゃったんで……どうぞ」と冷めた味噌汁を差し出したり。

嘉村 うーむ……なかなか怖いですね、それ。

三葉 「冷えた味噌汁」ってのが怖いですよね。情念がこもっているというか……。

嘉村 ええ。

三葉 あるいは、ふいに手編みのセーターが届いたり。

嘉村 おおっ……。

三葉 もしくは、主人公が墓参りに行くと違和感。よく見ると墓石が妙にきれいだし、お供え物もある。一体どういうことだろう?

嘉村 もしやそれは……。

三葉 ええ。例の女性が定期的に墓参りしているんですね。なぜそんなことをするのか訊くと、「あなたを生んでくれたお母さまに感謝したいから」。

嘉村 ひえっ……。

三葉 とまぁそんな具合ですが、この「案④」には1つ大きなポイントがありまして。

嘉村 伺いましょう。

三葉 すなわち、「相手が自殺志願者だから、強く対処できない」ということです。

嘉村 ああ、なるほど。

三葉 「こいつおかしいんじゃないか!?」と感じることがあっても、「まぁ、この前まで死のうとしていたんだもんな。情緒不安定でも無理ないよな」と思い返す。あるいは、「強く言って死なれたら困るし……優しくしよう」と思いとどまる。……要するに、主人公は遠慮してしまうんですよね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 普通なら「えっ、それはさすがに……」と思うような言動も、この「遠慮」があるからついつい拒否できず、受け入れてしまう。だから、どんどん女性の言動をエスカレートさせることができるのです。


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 「危険な情事」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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