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「やりたいこと」がない子たち

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「やりたいことがない」という子たちが多くいます。なぜそうなのか、どうすればやりたいことが見つかるのか、色々な角度から考えてみました。
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2020年5月の記事一覧

不快をつくりだす

不快をつくりだす

「やりたいこと」がない子を考える(15)どのようにすれば「強力な快感」を体感させることができるのでしょうか。
「これをすれば出来る」という万能の方法はありませんが、手がかりはあります。
フロイトの快感原則によれば、「快感」とは「不快の解消」でした。
つまり、「快感」の前提に「不快」があります。
なので、この体験の再現には「一旦子どもを不快な状態にした後、解消することによって快感を感じさせる」という

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ここまでのまとめ

ここまでのまとめ

「やりたいこと」がない子を考える(14)さて、ここまでをまとめると、「やりたいこと」とは「快感の再現」をしようとすることによって生じるのではないか、ということでした。
「カミナリで撃たれたような衝撃」レベルの「快感」が人生を変えてしまうのは、「快感の再現」ができる人生を歩もうとするためです。
逆にいうと、「やりたいことがない」というのは「再現すべき快感」がないことによって生じると考えられます。

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生きがい 変わるものと変わらないもの

生きがい 変わるものと変わらないもの

「やりたいこと」がない子を考える(13)「生きがい」は常に人生の中で変わっていきます。
僕は中学生の頃、サッカー選手を目指していました。
その頃の僕にとってはサッカーが「生きがい」だったのです。
しかし、今は教育が「生きがい」になっています。
そう、「生きがい」は人生の中で変化します。
現状、最も自分の心を昂らせてくれるものが「生きがい」と呼ばれているに過ぎず、「生きがい」は更新されていくものです

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「生きがい」と「生きがい感」

「生きがい」と「生きがい感」

「やりたいこと」がない子を考える (12)名著『生きがいについて』を書いた精神科医、神谷美恵子は生きがいを次の二つに分けています。
一つは、生きがいの対象になるもの。
例えば、サッカーとか、野球とか、ボランティアなどといった、自分の外にあるものです。
自分のエネルギーを注ぎ込む先、というとよりわかりやすくなるでしょうか。
普通、生きがいというとこちらを想像しがちです。

もう一つは、生きがいを感じ

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生きがいについて

生きがいについて

「やりたいこと」がない子を考える(11)
人生の中で、どれだけ大きな「快感」を感じることができるかが、長期的な意欲の発生に影響します。
「カミナリで撃たれたような衝撃」レベルの「快感」を感じることができれば、その後の人生でずっと続くような長期的な意欲が生じるのではないか、というのが僕の仮説です。
そして、「人生でずっと続くような長期的な意欲」については、すでに言葉があります。
僕たちが「生きがい」

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快感の再現

快感の再現

「やりたいこと」がない子を考える(10)
数学者の岡潔の「研究の中にある純粋な喜びは、幼い頃から私の中につくられてきた」という言葉は象徴的です。
傑出した研究者たちも、幼い頃「あの虫を見つけた喜び」を研究の中で味わおうとしているのです。
「長期的な意欲がなぜ生まれるのか」も今や自明になりました。
長期的な意欲とは、「過去に味わった快感を再現しようとする衝動」に他なりません。
これは僕の周りの子たち

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「やりたい」を生み出すモノ

「やりたい」を生み出すモノ

「やりたいこと」がない子を考える(9)
人生の転機となるような「カミナリに撃たれたような衝撃」とは「快感」に他なりませんが、その「快感」を感じるためには、前提に「不快」がなければいけない、というのがフロイトの主張です。
確かに、「カミナリに撃たれたような衝撃」を感じる時には、その前に悩んだり、苦しんだりと、かなりの「不快」がある感じがします。
その「不快」が大きければ大きいほど、解消されたときの「

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僕が熱中した本当の理由

僕が熱中した本当の理由

「やりたいこと」がない子を考える(8)
フロイトの「快感原則」で僕の例を考えてみましょう。
高校生の時、僕はある哲学書に出会い「僕の考えていたことが書いてある!」と興奮し、それが人生の転機になったと述べました。
しかし、実は僕が興奮した理由はそれだけではなかったことに、最近気付きました。
実はその時、ちょうど父親と喧嘩をしていてずっとイライラしていたのです。
父親は理屈っぽく、こちらが何か主張する

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フロイトの快感原則

フロイトの快感原則

「やりたいこと」がない子を考える(7)
人生の転機には「カミナリで撃たれたような衝撃」がつきものです。
では、なぜ「カミナリで撃たれたような衝撃」が人生の転機に必要になるのか。
これを考えるために、精神科医フロイトの論を参考にします。
フロイトの提唱した「快感原則」によれば、「快感」は「不快の解消」により生じます。
例えば、すごく難しい数学の問題を解いているとしましょう。
答えがわからず、考えてい

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人生の転機

人生の転機

「やりたいこと」がない子を考える(6)
「カミナリで撃たれたような衝撃」について補足です。
僕は今、わりと自分の好きなことをしながらイキイキと生きている自覚があります。
しかし、高校生の頃の僕は無気力な人間でした。
そんなとき、一冊の本と出会い人生が変わりました。
それは哲学書でしたが、僕は「自分が考えていたことが書いてある!」と興奮して、夜も寝れずその本を読みました。
まさに「カミナリで撃たれた

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子どもの頃の原体験

子どもの頃の原体験

「やりたいこと」がない子を考える(5)短期的な意欲と、長期的な意欲の間には断絶があります。
その断絶を乗り越えるために、「カミナリで撃たれたような衝撃」が必要になります。
数学者の岡潔が箱庭作りに熱中していた幼少期の体験が数学という仕事に結びついたと述べています。
「…私が求めてきたことは、研究や発見の中にある純粋な喜びだ。私が数学へ入るようになった要素は、幼い頃から私の中に作られてきたとも言える

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カミナリで撃たれたような衝撃

「やりたいこと」がない子を考える(4)
人間の意欲には「ちょっとしてみたい」という短期的な意欲から、「一生続けたい」という長期的な意欲まで様々なレベルがあります。
しかし、人間は最初から「一生続けたい」という長期的な意欲を持っているわけではありません。
誰でも最初にあるのは短期的な意欲だけです。
長期的な意欲は人生のどこかでポコっと生まれるのです。
だから長期的な意欲は生じるためのきっかけが必要で

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欲求のレベル

欲求のレベル

「やりたいこと」がない子を考える(3)「やりたいこと」は「欲求」という言葉に言い換えられます。
「欲求にはレベルがある」というのが前記事で言いたかったことです。
これはロシアの生理学者ベルンシュタインの運動学を参考にしています。
例えば、バスケットボールでは短期的には反射神経が必要になりますが、中距離的にはもう少し戦術性が必要になり、対局的には長距離で走ることが必要となります。
このように、ベルン

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「やりたいこと」ってなんだろう

「やりたいこと」ってなんだろう

「やりたいこと」がない子を考える(2)まず、そもそも「やりたいこととは何か」を考えましょう。
「やりたいこと」にはレベルがあります。
例えば、「ご飯を食べたい」というのは「やりたい」ことです。
一方で、「医師として海外の貧しい人たちを救う」というのも同じ「やりたいこと」です。
つまり、「やりたいこと」には「ちょっとしてみたい」という短期のものから、「一生続けたい」という長期のものまで、様々なレベル

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