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フィレンツェでの職人生活に至るまでの回想録

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脱サラ営業マンが職人の町フィレンツェで木象嵌細工職人となり工房を開けるまで、、、とその後
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記事一覧

【回想録】インテリア誌「AD Italia」にて今のインテリアを変える40歳以下のクリエイター20人に選出

【回想録】インテリア誌「AD Italia」にて今のインテリアを変える40歳以下のクリエイター20人に選出

フィレンツェのコルシーニ貴族庭園・職人展に参加したことで仕事にも少し繋がりましたが何より各メディアの取材が終わった後もしばらく続きました。

そんな中でも大きかったのは世界的なインテリア誌「AD Italia」での記事。

イタリア語版ですが日本でもインテリア関係のお仕事をしている方であれば取り寄せている方も多いのでは?

その中の特集記事で今のインテリアを変える40歳以下のクリエイター20人とい

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【回想録】憧れの職人展へ招待参加

【回想録】憧れの職人展へ招待参加

初オーダーはすぐに来たものの現実は厳しく不景気なフィレンツェの町ではなかなか次の仕事までには繋がらない。

そんな中、毎年5月にフィレンツェで開催されるコルシーニ貴族庭園での職人展で若手35歳以下の職人を10組、招待枠として参加させるというコンテスト情報が入る。

普段は一般開放していない貴族庭園の中で様々なジャンルの職人が
実演をしながら展示するという何ともフィレンツェらしいイベント。

通常は

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【回想録】工房での初オーダーは突然に・・・

【回想録】工房での初オーダーは突然に・・・

フィレンツェに工房をオープンして最初の土曜日。
犬を散歩中のお洒落な女性が外から中の様子を伺っている。
とにかく工房の存在を知ってもらいたかったので外に出て声をかけてみると
中に入ってきて作品やストックしている箱などを黙ってゆっくり見ている。

そして唐突に、ストックしてあったシガーレットケースを手に取り、この箱にこのロゴを入れられる?と名刺を差し出してくる。
細いラインのアルファベット3文字だが

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【回想録】ついに夢のフィレンツェでの工房をオープン

【回想録】ついに夢のフィレンツェでの工房をオープン

自営業の滞在許可証が無事に取得できて、次はいよいよ工房探し。
ちなみにZouganistaという名前はこの申請の時に屋号として付けました。

Zougan(象嵌) + 〜ista(イタリア語で専門職の意)

日本とイタリアの文化や感覚、デザイン、技術などが入り混じった古いけれど新しいモノづくりをしていければという気持ちを込めた名前です。

工房探しはとにかく大変で物件を回ること20〜30件。
一番

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【回想録】奇跡の連続でついに自営業タイプの滞在許可証を取得

【回想録】奇跡の連続でついに自営業タイプの滞在許可証を取得

イタリアでの滞在許可証の切り替え。
とりあえず資格はありますよ、という状態になったものの住民票の取得や資本金の証明、銀行口座の開設、専属の会計士をみつけるなど目の前に次々と高いハードルが山のように積まれていく。

イタリアに来て5年経つとは言っても幼稚園児レベルの語学力で、日本語で言われても分からないような専門用語と向き合う日々。

そんな中で自分の選んだ木象嵌という選択肢が功を奏す。

商工会議

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【回想録】いよいよ自営業タイプ滞在許可証へ切替の戦いが始まる

【回想録】いよいよ自営業タイプ滞在許可証へ切替の戦いが始まる

この頃になるとイタリア語も日常会話は問題ないくらいになっていたものの申請など非日常の事となると単語のボキャブラリーが足らない。
妻と二人分のボキャブラリーでなんとか対応しようという作戦でした。

イタリアの移民局は一度体験したことのある方であればわかると思いますが本当に地獄。
本気で出稼ぎに来ている諸外国の人たちにとっては命がかかっているのでビリっビリの緊張感。
そんな中に入ると日本人の自分たちが

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【回想録】完全帰国か、フィレンツェ残留か、ついにそれを決めるタイミングがやってくる

【回想録】完全帰国か、フィレンツェ残留か、ついにそれを決めるタイミングがやってくる

居場所としてはあるがサバイバルのようなフィレンツェでの学生ビザ生活。
5年目くらいからはメンタル的にもう限界だった。

声をかけていただき日本での合同展に参加したのをきっかけに展示会というものにも少し自信はついていた。
自分の作ったモノのために時間をかけて見に来てもらって、ましてや買ってもらえるようになるとは数年前までは全く想像もしていなかったんです。

でも、その時に何かを買ってもらえたのも自分

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【回想録】クラシックな椅子張り技術

【回想録】クラシックな椅子張り技術

通い始めた椅子張りの工房。
エジプト人の親方はとにかくおしゃべりで永遠と喋っている。
そして手も動かし続ける。。。

椅子張りと言っても仕事の種類はたくさんあるが親方が得意なのはアンティーク家具を昔ながらの材料と技術を使って仕上げていくスタイル。

椅子張りの工房にいて感じたのは仕事の内容として洋服の仕立て屋さんにとても近いという事。

張り地を顧客と選んでそれぞれの家具に対して型紙を引いて椅子の

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【回想録】フィレンツェでの居場所が出来てくる中、将来を模索する日々。

【回想録】フィレンツェでの居場所が出来てくる中、将来を模索する日々。

留学の際、常にネックとなるビザや滞在許可証。
イタリアに関しては留学開始時にはもちろん学生ビザの発行を日本でする必要があります。
そしてイタリア到着後、EU圏の滞在許可証を申請するのですがイタリア留学・滞在中はこの滞在許可証がすべてのベースとなります。
取得した学生ビザの種類によっては日本に帰国することなくイタリアの滞在許可証を延長・更新することによって滞在が可能。
自分の場合も1年目は1年のみの

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【回想録】自分を映し出すのは鏡だけじゃない

【回想録】自分を映し出すのは鏡だけじゃない

フィレンツェに来て3年目くらいまでは美術館の年間パス・Amici degli Uffiziを利用してとにかく時間が空いた時はフィレンツェ内の美術館をひたすら見て回っていた。

初めてウフィッツィ美術館を見た時の感想は、、、重い。
確かに有名絵画だらけなのだけれど順路的にルネッサンス初期から始まるためThe宗教画で気持ちが重くなり、それを後まで引きずってしまった。
もしかすると自分と同じような気持ち

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【回想録】留学2年目の大きな変化

【回想録】留学2年目の大きな変化

フィレンツェ留学2年目に入っていろいろな変化が訪れる。

きっかけは北斎の木象嵌と学生時代からの友人にウェブサイトを作ってもらいブログを始めたこと。

まず北斎の木象嵌を見て、1年目に知り合ったフィレンツェの芸術一家の
当主であるアーティストが合同展に出してみないかと声をかけてくれる。

今考えてもすごいメンバーでCortona/コルトーナでのその展示会に参加させてもらった。

Cortonaはト

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【回想録】木象嵌職人を目指すことを決定づけたイタリアの二つの町

【回想録】木象嵌職人を目指すことを決定づけたイタリアの二つの町

フィレンツェ留学1年目、2年目はイタリア国内・ロンドン、パリなど結構旅行もしました。
ヨーロッパ圏内であれば数十ユーロで格安飛行機があって気軽に移動も可能でした。

そんな中で木象嵌細工職人を目指すことを決定づけたイタリアの二つの町があります。

一つ目はAssisi/アッシジ

アッシジはウンブリア州の小さな町で聖フランチェスコ出生の地として今も宗教色が濃く残っている所。

町に一歩踏み入ると、

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【回想録】先輩修復職人からのメッセージ

【回想録】先輩修復職人からのメッセージ

家具修復の師匠・レナートの所で特に記憶に残っている修復の仕事がこれ。

1800年代の鏡台

輪染みや欠損パーツが多く見られ、全体の塗膜も薄くなっていました。

磨き直しのために鏡を一度外してみると、

1911年のオーストリアの新聞が鏡のクッションとして使われていました。

修復士がよくやる遊び心のようなものでいつどこで修復をしたかが次の修復士にわかるようにこういったものを中に残すことがあるそう

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【回想録】家具修復のために五感を鍛える

【回想録】家具修復のために五感を鍛える

フィレンツェ留学2年目になっても基本的な生活リズムはあまり変わらず、午前中は語学学校、午後はレナートの家具修復工房という感じ。

期間としてはあまり長くありませんでしたが振り返ってみると本当にたくさんの家具修復の経験をさせてもらいました。

修復前と修復後

天板の隙間を埋めたり欠損パーツを復元したり、磨きの工程まで一通りを経験。
家具修復というのは同じ仕事がほとんど無く修復するものによってそれぞ

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