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【回想録】家具修復のために五感を鍛える

フィレンツェ留学2年目になっても基本的な生活リズムはあまり変わらず、午前中は語学学校、午後はレナートの家具修復工房という感じ。

期間としてはあまり長くありませんでしたが振り返ってみると本当にたくさんの家具修復の経験をさせてもらいました。

机1修復前

机1修復後

修復前と修復後

天板の隙間を埋めたり欠損パーツを復元したり、磨きの工程まで一通りを経験。
家具修復というのは同じ仕事がほとんど無く修復するものによってそれぞれ仕事の内容は変わります。
修復の数をこなして経験値を上げていかないと仕事にはなりません。

最初の頃と変わらず、ラジオのかかった工房で二人で黙々と作業をする日々。
基本的に作業は自分に任せてくれていたのでよほど難しい部分以外は自分で判断をして手順を考えていきます。

そんな中でとても興味深かったのがレナートが作業を進めていく中で五感をフルに使っているということ。

目はもちろんだが道具を使っている時はとにかく音で作業の良し悪しを判断する。
いい音が出ている時は触感が全く違う。

そして嗅覚。
レナートの得意とするベッコウが使われた装飾家具の修復。
何度も繰り返し修復をされている中で欠損パーツの復元にはベッコウではなく合成樹脂が使われているケースも多い。
その判断はライターで軽く炙ってみると匂いが全く違うのですぐにわかる。

レナートと二人でイベント用に木象嵌の天板を制作している時、オリーブの木を使っていたのだが材料が足りなくなってしまい工房に眠っていた丸太を切ってみることに。
古過ぎて外見からは判断が出来ず半分に割ってみるとオリーブ特有のいい香りが工房に漂う。

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自然素材との付き合いは家具修復には欠かせない事。
それを体感として教えてくれようとしていたんですね。

それまでは目で判断することがほとんどでしたがレナートとの作業の中でどんどん五感が研ぎ澄まされていくのを感じました。

続く

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