これは良くできたスピンオフ。Netflix「寄生獣 ザ・グレイ」感想
原作愛に溢れたスピンオフは大歓迎ですね。
岩明均による言わずと知れた名作漫画、「寄生獣」。
2015年には山崎貴によって実写映画化されたものの、クオリティ・興行収入共にそこそこと言った感じでしたが。
そんな「寄生獣」が、原作にインスパイアされたスピンオフとして久々の映像化。
Netflixならではの潤沢な資金力・制作力が炸裂した快作となりました。
原作の世界観を壊すことのない、見事な映像化
まあ、兎にも角にもこれに尽きます。
よくもまあ、ここまで原作の世界観を壊さない上手いスピンオフを使ったものだなーと。
原作では、地球外からやってきた未知の生命体が次々に人間に寄生。
寄生された人間は脳を乗っ取られ、頭が変形する怪物に変身してしまう。
原作の主人公は、脳を乗っ取られることは防いだものの右手に寄生生物を宿してしまった男子高校生・泉新一。
彼は、自分の右手を乗っ取った寄生生物・ミギーと絆を深めながら、悩み傷つきながら寄生生物と戦う。
やがて『何かと寄り添いながら生きる』ことの意味を知っていくことが物語の主軸となっています。
一方、スピンオフとなる本作「ザ・グレイ」の主人公は、29歳の女性・スイン。
彼女も、新一と同じく脳を乗っ取られなかった稀有な存在。
しかしながら、設定が微妙に新一と異なっている。
脳を完全に乗っ取られはしなかったものの、新一より脳に近い部分に寄生された影響か、二重人格のように二つの人格を持ってしまう。
まず、この設定がうまい。
新一と似た設定であれば、彼とミギーとのコンビに勝てるわけがない。そう断言できるほどに、原作のクオリティは高かった。
本作の監督、ヨン・サンホは大の原作ファンである。だからこそ、その偉大さを十分に理解していた。
スインの設定を新一とは全く違うものにすることで、本作を原作とは完全に別物に仕上げた。
しかしながら、多分に原作のエッセンスを残したストーリー・演出が見事である。
抜いた髪の毛を見て寄生生物がどうかを判断する、寄生生物はアルコールを含んだ人間を食すことを好まない、人間と同化した寄生生物は活動時間が短い、といった原作の設定をしっかり取り入れているのも好印象。
他にも、原作と全く同じ冒頭のモノローグや、ストレッチャーに乗せられた寄生生物の死体、寄生生物かどうか判断するための検査シーン等原作を彷彿とさせるシーンが盛りだくさん。
そして、なんといっても寄生生物のビジュアルが原作そのまま。
動きの見せ方やアクションシーン、全体的に非常にクオリティが高いです。
全体に漂うカラッとした不穏な空気感を含め、ここまで原作ファンを納得させるスピンオフ作品も少ないんじゃないでしょうか。
ストーリー展開も雰囲気も◎。ただ、終盤に若干の違和感が
原作はテーマ性と共感性を重視させる狙いで読者が共感しやすい普通の街や学校が舞台となることがほのんのでしたが、本作は序盤からかなりスケールの大きい展開です。
僕は韓国ドラマをほとんど観ないんですけど、本作のような軍事ものは韓国のエンタメが最も得意とする分野ですよね。
アクションシーンや銃火器の扱いにも迫力があるし、安っぽさを感じさせない。
終盤まで裏切りやどんでん返しが続いた展開はいかにもNetflix。
特に、ラストシーンの演出はニクい。原作ファンを驚かせる展開ですし、次シーズンがあるならって考えちゃいます。
ただ、しかし。
終盤の展開は、寄生生物がちょっと人間臭過ぎる気がしました。
特に、主人公のハイジはいくらなんでも優し過ぎる。
原作終盤のミギーでさえもっとドライでしたからね。ちょっと甘過ぎるというか…その辺りはちょっと違和感を覚えてしまいました。
まあ、最後は原作ファンとしてちょっと文句垂れましたが。
全体的には一本のドラマとしても、原作のスピンオフとしても素晴らしい出来でした。
続編があったら、必ず観ると思います。
ラストに登場した彼の活躍も楽しみですしね。
というか、続編観たいからヒットしてほしいなぁ。