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書評:(今さらながらの)サピエンス全史

4年前に発刊されたこちらの書ですが、遅ればせながら書評という形でまとめることにしました。
直近の2年半程度は読んだ本全てに感想メモを残しているんですが、あまりにも良い本であったためきちんと書き記しておきたいと考えた次第です。
ちなみに初読時に衝撃を受けたとともに自身の世界史に関する知識不足を痛感したため、数冊の本を通じて世界史の勉強を行った上で再読しました。

どういった本なのか

以下、本文から引用

歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。約七万年前に歴史を始動させた認知革命、約一万二〇〇〇年前に歴史の流れを加速させた農業革命、そしてわずか五〇〇年前に始まった科学革命だ。〜中略〜 本書ではこれら三つの革命が、人類を始め、この地上の生きとし生けるものにどのような影響を与えてきたのかという物語を綴っていく。

人類が初めて姿を現したのは、約250万年前の東アフリカであり、当時の"人類"はアウストラロピテクスと呼ばれていました。
現代の人類はホモ・サピエンスという種でありますがそれは唯一絶対のものではなく、特定の種を指す呼称に過ぎません。
ではなぜ現代において人類=ホモ・サピエンスと呼ばれるかというと、多種との生存競争に打ち勝ち、その歴史を塗りつぶすことに成功したからです。

本書はそうして生存することとなったサピエンスの歴史を描くことを通じて、過去に生じた歴史的転換点の意義や影響の解説、そしてこれから人類が向かうべき未来を描いていく、というものです。

(簡単な)要約

上下巻合わせて4部、20章で本書は構成されています。

【1部】
この部においては虚構(物語)によって人類がいかに発展を遂げたかについて述べられています。
人類は言語やルールという"虚構"への信仰によって、種の共存・協力という手段を獲得します。
その結果、人類は海や山を超え生息地を拡げ続け、多くの動物を絶滅させながらその勢力を強めていきました。

【2部】
この部においては、人類が農耕生活に移行したことによる影響・変化が述べられています。
農業革命によって人類は幸福になったと考えられることも多いですが、それはより良い農地をめぐる争いや栄養や食事量の偏り、富の格差を生みました。
もちろん、人口爆発という種としての成功は収めましたが、個人の幸福に寄与したのかという点では失敗であったと言えます。

【3部】
この部においては世界中に広がっていた人類が統一に向かう道筋が描かれています。
その流れにおいて、大きな役割を果たしたのが貨幣です。
貨幣によって、異なる文化間で共通の"虚構"を持つことが可能となり、それらの交流・統一が盛んになりました。

また、宗教の影響も無視することはできません。
宗教とは超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度であり、人種や文化に関わらず信仰を共有できるものだからです。

上記2つを基盤として、経済的合理性を伴う帝国主義の流行により世界は統一に向かっていきました。

【4部】
この部では科学革命による影響、そしてこれからの人類がどこに向かうのかについて書かれています。
無知の知から生じた科学革命により、、人類は神の支配下から逃れ世界の解像度を向上させていきました。
そして、科学は人類に生産性の向上という希望をもたらし、それが帝国主義のさらなる発展や資本主義の強化に結びつきます。
これらの急激な変化は社会秩序を「流動的なもの」に変容させ、近現代を生きる我々は、とても不安定な状態であると言えます。

科学や文明は果たして人類を幸福にしたのでしょうか。
少なくとも言えることは、科学は人類の生物学的に定められた限界を突破させることが可能だということです。
私達が直面している真の疑問は「私達は何になりたいのか?」ではなく、「私達はなにを望みたいのか?」なのかもしれません。

なぜ素晴らしいと感じたのか

前提として僕が世界史に関してあまりにも無知であったというものがあります。
そういった状態で上記のような内容に触れたことで、大きなカルチャーショックのようなものを感じました。
冒頭でも書いたように初読後に世界史の勉強を行った上で再読したのですが、最初に受けた衝撃が薄まるどころか理解が深まったことでより大きな自身への影響を感じています。

世界は虚構で作り上げられており、僕らが今当たり前だと感じるものはとても儚い、不確かなものです。
例えば今は禁忌として扱われるクローン人間も、いずれ当然のものとして扱われることになるかもしれません。
死という概念すらも、例えば肉体の乗り換えという手段によって、過去の遺物となってしまうかもしれません。
なぜなら現代において存在する倫理観もただの虚構の一種に過ぎず、その物差しに未来を任せるにはあまりにも貧弱なものであるからです。

この本を読んだことにより、世界の輪郭がよりはっきりとしたものとなりました。
毎日の生活に大きな変化を生じさせる類の本ではありませんが、虚構という前提の基に世界は動いているという気づきを得られたことで、自己の生き方をより定めやすくなったと感じます。

まとめ

誰にとっても読みやすい本であるとは言いづらいですが、上記内容に興味がある方にとっては非常に示唆に富んだ本であると感じます。
エネルギーに満ち溢れた本なので、人生を変える一冊に出会いたい方であれば、手にとってみることをおすすめします。

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ITベンチャーに新卒入社後2012年創業 複数回エクイティ・デッドでの資金調達を行い各種事業を行う 2015年に既存事業譲渡と訪日旅行者向けWebメディア立ち上げを並行しつつ、 2016年にフジメディアホールディングスグループに数億円でバイアウト 2019年から福岡で2度目の創業