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人は大きな声を出して好きに振るまえる側と、人の顔色を窺ってたちまわる側に分かれている。

千早茜さんの「ひきなみ」より。
正直このフレーズを読んで、ドキッとした。

私は間違いなく後者であって、
今もなお人の顔色を窺い続けている。

※以下、小説の内容に入ります。
  ネタバレにならない程度に
  ストーリーを説明しているつもりですが、
  先入観なしでこの本を読みたいと
  考えている方は回れ右!でお願いします。

千早茜さんの「ひきなみ」

電子書籍で購入して読みました。
通勤時間にコツコツと読んで
大体2週間くらいで読み終えました。

感想としては、
"女"としての生き方を
改めて意識させられた、という感じ。

今まで"性差"について
あまり意識してこなかったけれど
(それはそれでありがたいこと)
良くも悪くも男女の違いって
あるんだろうなと思って。

それが良いとか悪いとかじゃなく。
あなたの生き方はA。
私の生き方はB。
お互い肯定も否定もしない。
そんな線引きができる大人ばかりなら
人が傷つくこともないのかな、と。

物語としては、2部に分かれていて。
前半は小学生〜中学生のお話、
後半は大人になってのお話。

二人の少女、葉と真以が
瀬戸内海の小さな島で出会う。

東京から祖父母の家に預けられた葉と
島に祖父と二人きりで住む真以。

学校で上手く馴染めなかったり、
クラスの子にからかわれたりと
昔誰もが経験したような
「少し嫌だな」と感じる出来事が
詰まっているなあと感じました。

そんな中、脱獄犯と共に
突然真以が島から姿を消してしまう。

大人になった葉は偶然、
真以を見つけ再会を果たす。
大人になってからの二人は
それぞれが全く違う生き方をしていて。

葉は大手の会社に勤めるものの
上司からのセクハラ(性差による威圧)を
受けてしまい、なんともこのシーンは
読んでいるのが辛かった。

会社に行けなくなることも経験したし、
胃が痛くなるのも経験した。

会社を休んだ自分と
どことなく重なる感情があって、
読んでいるのがしんどかったです。(笑)

そんな大人になった葉のお話で
出てくるのがタイトルのフレーズ。

人は大きな声を出して好きに振るまえる側と
人の顔色を窺ってたちまわる側に分かれている。

まさにそうだな、と思う。
これ以上でもこれ以下でもなく、
ただただ、そうだな、と思う。

世の中って公平じゃない。
理不尽なことも多い。
生まれと育ちで決まることも多い。

自分の言葉が思いもよらぬ方向で
受け取られることもあったり。

相手の言葉が、ナイフのように
胸に鋭く突き刺さることもあったり。

なんというか、説明が難しいけれど
淡々とした言葉の真以に
生きる勇気をもらえたような気がしました。

葉は会社で上司からの圧力により、
真以は生まれながらに自分が"女"であることに
苦しみ、嘲られ、悩み続けます。

私はありがたいことに、
"女"であることに劣等感や悩みを
抱えたことはありませんでした。

自分が専門職という立場なので
会社で男女を区別する機会がほとんどなく、
そういう点では平等に
接せられてきたような気がします。

とはいえ、男性より体力はないので
長時間労働や残業は辛いですが……

ただ、改めて、
自分が女性であるとは
どういうことなのか。

考えさせられた気がします。

私も自分の信念を持って
堂々とこの世の中を生きていきたい。

「ひきなみ」は高速船が
海を通った後に立つ白波のこと。

白い波が道のように見えるんだそうです。

一見道のない海でも、
道を作ることができる。
その道を私たちは歩いてゆける。
海の上でも歩いてゆける。

そんなメッセージ性を
タイトルから感じました。

読んでよかった。
そして、また読みたいと思う本でした。

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