言語学 ガリレオ

『ガリレオ』の湯川秀樹をまったく変人とは思わなかったということは、自分も変人ということ…

言語学 ガリレオ

『ガリレオ』の湯川秀樹をまったく変人とは思わなかったということは、自分も変人ということだろう。湯川准教授と同じく変人であるが、興味の対象は物理学ではなく言語学。そして、決定的な違いはイケメンではないこと(どちらかというと大泉洋)。自称ガリレオとして、言語学版ガリレオを開始。

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記事一覧

第5話 「ザ・~クナイ?」

岸辺露伴に「ザ・ラン」というエピソードがある。 このエピソードは、昨年末に実写版として放送された。 筋肉に憑りつかれた橋本陽馬という男の物語であるが、次のような…

第4話 「行為者 僕-誰」

昨年末にも岸辺露伴の実写版が3話放送された。 NHK制作だけあって、かなりのクオリティーであった。 実写版には取り上げられていないが、「月曜日 天気-雨」というエピソ…

言語探偵T 第12話

慣用問題 (後編) 「phoneの前置詞問題」に対して、いくつかのコメントが寄せられた。 3.at night の謎 「電話で」を表す英語の前置詞に関しては、以下の3つのポイント…

言語探偵T 第11話

慣用問題 (中編) 長く日本に住んでいるドルダン(仮名)先生のコメントは、前置詞を考える上で重要な「手がかり」を与えてくれている。 2.「両方使える」の謎 ネイテ…

言語探偵T 第10話

慣用問題 (前編) 英語を話したり書いたりしていると、ネイティブに「意味はわかるけど変」と指摘されることがある。 この「意味はわかるけど変」という感覚はどこからく…

言語探偵T 第9話

感覚問題 (後編) 「個人差」は確かにある。 でも、コミュニケーションに支障をきたす程の個人差というのは考えにくい。 3.「あまり言わない」の謎 「海釣りをする」と…

言語探偵T 第8話

感覚問題 (中編) 「in-after問題」に対して、いくつかのコメントが寄せられた。 2.個人差の謎 (19) I’ll be back in 30 minutes. (20) I’ll be back after 30 mi…

言語探偵T 第7話

感覚問題 (前編) 前置詞に関する質問は多い。 日本人にとってこれほど難しいものなのに、なぜ英語母語話者は苦も無く使いこなせるのだろうか? 1.コアイメージの謎 …

言語探偵T 第6話

認識問題 (後編) なぜ、「総称」に対して3つの言い方があるのか? この答えは「総称」の捉え方にある。 3. ネイティブの捉え方の謎 「総称」の3つの言い方には、それ…

言語探偵T 第5話

認識問題 (中編) 「聞き手も知っている a 問題」に対して、いくつかの解答が寄せられた。 そのうちの1つを紹介する。 2. 3つの形で表せる「総称」の謎 聞き手の「風…

言語探偵T 第4話

認識問題 (前編) 英語母語話者は無意識で冠詞を使いこなしている。 このネイティブの「直観」の中身を暴き出したいものだ。 1.関係節による限定の謎 時折、以下のよ…

言語探偵T 第3話

特定問題 (後編) 「the sun問題」に対して、いくつかの解答が寄せられた。 そのうちの2つを紹介する。 3.the の特定の仕方の謎 sunにburning (灼熱の)のような形容詞…

言語探偵T 第2話

特定問題 (中編) the は確かに特定できるものを表す。 でも、目の前にいるからといってtheは使えない。 2.特定の中身が不明な theの謎 「タイタン問題」を解くカギは…

言語探偵T 第1話

特定問題 (前編) 言語に関する謎は後を絶たない。 これは信大で起こった言語事件ファイルの記録である。 1.不定ではないa(n)の謎 英語の冠詞のtheとa(n)の違いは「特…

言語学版 ガリレオ 特別編

比較級 Xの献身 ネットでいくらでも情報を得られる時代に、「調べる」とはどういうことなのだろう? この問いに向き合っているのが、この ↓ 本である。 その中で、哲…

第3話 「逆順海岸」

行動する人のように考え、考える人のように行動せよ -アンリ・ベルグソン- 次のカッコに入る言葉はなんだろう。 これは、岸辺露伴の「密漁海岸」の1シーンである。 露…

第5話 「ザ・~クナイ?」

第5話 「ザ・~クナイ?」

岸辺露伴に「ザ・ラン」というエピソードがある。
このエピソードは、昨年末に実写版として放送された。

筋肉に憑りつかれた橋本陽馬という男の物語であるが、次のようなシーンがある。

ここで注目したいのが、「以前と違くないか?」とい露伴のセリフである。
そもそも「~くない」がつくのは「近い」のような形容詞である。
(例:「近い」→ 「近くない」)
一方、「違う」は動詞であるので、否定形は「~わない」に

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第4話 「行為者 僕-誰」

第4話 「行為者 僕-誰」

昨年末にも岸辺露伴の実写版が3話放送された。
NHK制作だけあって、かなりのクオリティーであった。

実写版には取り上げられていないが、「月曜日 天気-雨」というエピソードがある。

奇妙な物語で、次から次へと人が線路に落ちていく(興味がある人は『岸辺露伴は動かない2 』を読んでほしい)。

最初に線路に落ちたのが、露伴である。

この窓辺語楽にとっては、「人が線路に落ちた!」というセリフは注

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言語探偵T 第12話

言語探偵T 第12話

慣用問題 (後編)
「phoneの前置詞問題」に対して、いくつかのコメントが寄せられた。

3.at night の謎

「電話で」を表す英語の前置詞に関しては、以下の3つのポイントから考察を進めてみよう。

1. on the phoneとover the phoneの両方が使える
→ 「電話で」という状況はonとoverの2つの前置詞で捉えられる。

「両方OK」という場合は、「電話で話す」と

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言語探偵T 第11話

言語探偵T 第11話

慣用問題 (中編)
長く日本に住んでいるドルダン(仮名)先生のコメントは、前置詞を考える上で重要な「手がかり」を与えてくれている。

2.「両方使える」の謎

ネイティブは「前置詞を選ぶ感覚」をもっているが、「みんなが使うか」はわからない。

つまり、ある状況に合う前置詞の「候補」は複数ありえるが、どれが定着するかは別問題ということ。

たとえば、「お金をいくらもっているか」を英語で尋ねる場合を考

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言語探偵T 第10話

言語探偵T 第10話

慣用問題 (前編)
英語を話したり書いたりしていると、ネイティブに「意味はわかるけど変」と指摘されることがある。
この「意味はわかるけど変」という感覚はどこからくるのだろうか?

1.違和感の謎

「結婚してください」を英語にする場合、複数の言い方が考えられる。

しかし、この中で自然な言い方は I want to marry you.のみである。
(『英語教師のための第二言語習得論入門』 白井恭

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言語探偵T 第9話

言語探偵T 第9話

感覚問題 (後編)
「個人差」は確かにある。
でも、コミュニケーションに支障をきたす程の個人差というのは考えにくい。

3.「あまり言わない」の謎

「海釣りをする」という場合にどの前置詞を使うかについて、ネイティブは次のようにコメントしている。(『英語教育』 2012年 2月号 より)

これらのコメントから読み取れることを考えてみよう。

① 個人差というが、コアイメージは使っている。

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言語探偵T 第8話

言語探偵T 第8話

感覚問題 (中編)
「in-after問題」に対して、いくつかのコメントが寄せられた。

2.個人差の謎

(19) I’ll be back in 30 minutes.
(20) I’ll be back after 30 minutes.

inのコアイメージが「内部」であるなら、in 30 minutesをwithin 30 minutesと考えるのは自然であろう。

実際、そう捉える

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言語探偵T 第7話

言語探偵T 第7話

感覚問題 (前編)
前置詞に関する質問は多い。
日本人にとってこれほど難しいものなのに、なぜ英語母語話者は苦も無く使いこなせるのだろうか?

1.コアイメージの謎

前置詞は基本的な意味を「コアイメージ」で表すことができる。
中学校の教科書にもそのようなコアイメージが載っている。

でも、コアイメージをおさえても、どう使ったらいいか迷うことが多い。
(『英語独習法』 今井むつみ 著より)

ここで

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言語探偵T 第6話

言語探偵T 第6話

認識問題 (後編)
なぜ、「総称」に対して3つの言い方があるのか?
この答えは「総称」の捉え方にある。

3. ネイティブの捉え方の謎

「総称」の3つの言い方には、それぞれ次のような特徴がある。
(『実践ロイヤル英文法』 より)

まず、「総称」は複数のものを取り上げているので、複数形が使われることは自然である。
実際、「総称」には複数形がよく使われる。
(『わかりやすい英語冠詞講義』 石田秀雄

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言語探偵T 第5話

言語探偵T 第5話

認識問題 (中編)
「聞き手も知っている a 問題」に対して、いくつかの解答が寄せられた。
そのうちの1つを紹介する。

2. 3つの形で表せる「総称」の謎

聞き手の「風邪」のことなので、聞き手も当然知っているのに a が使われるのはなぜか。

You’ve got a terrible cold. (ひどい風邪を引いてしまったんですね。)

冠詞の使用はあくまで「話し手の捉え方」である。

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言語探偵T 第4話

言語探偵T 第4話

認識問題 (前編)
英語母語話者は無意識で冠詞を使いこなしている。
このネイティブの「直観」の中身を暴き出したいものだ。

1.関係節による限定の謎

時折、以下のような質問を受ける。

関係節が使われると限定(説明)されるので、theをつけるのか?

しかし、関係節で説明されているからといって、必ずしもtheがつくわけではない。

次の2つの文の違いについて考えてみよう。
(『わかりやすい英語冠

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言語探偵T 第3話

言語探偵T 第3話

特定問題 (後編)
「the sun問題」に対して、いくつかの解答が寄せられた。
そのうちの2つを紹介する。

3.the の特定の仕方の謎

sunにburning (灼熱の)のような形容詞がつくと、「太陽の1つの状態」を表すから a がつくといえる。

しかし、sunは「1つしかないからtheがつく」といえるのだろうか?

固有名詞も1つしかないものであるが the はつかない。
たとえば、ミ

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言語探偵T 第2話

言語探偵T 第2話

特定問題 (中編)
the は確かに特定できるものを表す。
でも、目の前にいるからといってtheは使えない。

2.特定の中身が不明な theの謎

「タイタン問題」を解くカギは、theの「特定」の中身にある。

それは、聞き手も「すでに知っている」ものを表すということである。

目の前にいるものを指すならthatやthisなどの指示詞を使えばいい。
指示詞ではなくtheを使うなら、聞き手もすでに

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言語探偵T  第1話

言語探偵T 第1話

特定問題 (前編)
言語に関する謎は後を絶たない。
これは信大で起こった言語事件ファイルの記録である。

1.不定ではないa(n)の謎

英語の冠詞のtheとa(n)の違いは「特定できるかどうか」とされている。

まず、theが使われた場合は話し手も聞き手も特定できるものを表す。

一方、a(n)の場合は注意すべきことがある。

それは、「話し手」が特定できるパターンがあるからである。
そのため、

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言語学版 ガリレオ 特別編

言語学版 ガリレオ 特別編

比較級 Xの献身
ネットでいくらでも情報を得られる時代に、「調べる」とはどういうことなのだろう?

この問いに向き合っているのが、この ↓ 本である。

その中で、哲学者の萱野稔人さんは「知性の本質は、アウトプットに宿る」としている。

調べた情報をもとに、自分の考えをまとめあげ言語化することが重要との指摘である。

しかし、言葉の方は言語化しないことが多い。
しかも、その「隠された」部分が言

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第3話 「逆順海岸」

第3話 「逆順海岸」

行動する人のように考え、考える人のように行動せよ
-アンリ・ベルグソン-

次のカッコに入る言葉はなんだろう。

これは、岸辺露伴の「密漁海岸」の1シーンである。

露伴は密漁なんて違法でダメだと言っていることから、
「だが、気に入った」という逆接的な言葉が入ると考えるのが自然だろう。

だが、実際には「だから、気に入った」と言っているのだ。
そして、作者の荒木飛呂彦さんはこのセリフのシーンを描き

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