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窓辺語楽シリーズ

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言葉に憑りつかれた男の奇妙な言語談義。窓際でまったり言語学を楽しんでいる内容。
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第5話 「ザ・~クナイ?」

第5話 「ザ・~クナイ?」

岸辺露伴に「ザ・ラン」というエピソードがある。
このエピソードは、昨年末に実写版として放送された。

筋肉に憑りつかれた橋本陽馬という男の物語であるが、次のようなシーンがある。

ここで注目したいのが、「以前と違くないか?」とい露伴のセリフである。
そもそも「~くない」がつくのは「近い」のような形容詞である。
(例:「近い」→ 「近くない」)
一方、「違う」は動詞であるので、否定形は「~わない」に

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第4話 「行為者 僕-誰」

第4話 「行為者 僕-誰」

昨年末にも岸辺露伴の実写版が3話放送された。
NHK制作だけあって、かなりのクオリティーであった。

実写版には取り上げられていないが、「月曜日 天気-雨」というエピソードがある。

奇妙な物語で、次から次へと人が線路に落ちていく(興味がある人は『岸辺露伴は動かない2 』を読んでほしい)。

最初に線路に落ちたのが、露伴である。

この窓辺語楽にとっては、「人が線路に落ちた!」というセリフは注

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第3話 「逆順海岸」

第3話 「逆順海岸」

行動する人のように考え、考える人のように行動せよ
-アンリ・ベルグソン-

次のカッコに入る言葉はなんだろう。

これは、岸辺露伴の「密漁海岸」の1シーンである。

露伴は密漁なんて違法でダメだと言っていることから、
「だが、気に入った」という逆接的な言葉が入ると考えるのが自然だろう。

だが、実際には「だから、気に入った」と言っているのだ。
そして、作者の荒木飛呂彦さんはこのセリフのシーンを描き

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第2話 「被害村」

第2話 「被害村」

洞察力とは、見えないものを見る技のことである
-ジョナサン・スウィフト-

岸辺露伴の物語に「富豪村」というのがある。
奇妙なことに、この村には道がない。

森の中で孤立した村なのである。

同じような「村」が日本語にもある。

その名は「被害村」。

まず、次の2文をみてほしい。

① メアリーはジョンに褒められた。
② 僕は彼女に泣かれた。

まず、①を英語にすると、受け身文を使って書ける。

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第1話 「あの日」の謎

第1話 「あの日」の謎

意味は言葉の中に元々あるのではなく、人によって与えられる
-ヴィトゲンシュタイン-

マンガに憑りつかれた男、「岸辺露伴(きしべろはん)」。
そして、言葉に憑りつかれた男、「窓辺語楽(まどべごらく)」

これは、窓辺語楽が岸辺露伴の物語から言葉の謎に迫る短篇 (snippet)である。今回とりあげるのは「懺悔室」のこのシーン。

露伴は好奇心から教会の懺悔室に入るが、神父と間違えられる懺悔を聞くこ

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