言語探偵T 第11話
慣用問題 (中編)
長く日本に住んでいるドルダン(仮名)先生のコメントは、前置詞を考える上で重要な「手がかり」を与えてくれている。
2.「両方使える」の謎
ネイティブは「前置詞を選ぶ感覚」をもっているが、「みんなが使うか」はわからない。
つまり、ある状況に合う前置詞の「候補」は複数ありえるが、どれが定着するかは別問題ということ。
たとえば、「お金をいくらもっているか」を英語で尋ねる場合を考えてみよう。(『ネイティブが教える ほんとうの英語の前置詞の使い方』 デイビッド・セイン 著より)
この場合、withを使うのが「普通」である。
でも、「所持している」というのは「身につけている」とも考えられるので、onも論理的にはOKといえる。
実際、口語ではonも使われる。
つまり、withが「先に定着している」だけで、onも「候補」になれる。
このことからも、「論理的に可能」と「使用されるか」は別問題であることがわかる。
この点は、英語学習を考える上でも重要になる。
以前、前置詞の学習について、このようなコメントをもらった。
日本人の場合、ネイティブのような「直感」が効かないため、前置詞のコアイメージから論理的に考えるしかない。
そのため、こちらが「論理的にはinだよね」と思っていても、実際にはonが使われるというようなことは普通に起こりえるのである。
結局、「ネイティブはその前置詞を使うんだ」と覚えるしかない場合もあるといえる。
話はここで終わらない。
「電話で」を表す英語の前置詞を考えてみよう。
(『ネイティブが使う英語・避ける英語』 佐久間治 著より)
onが圧倒的に使われる(=定着している)が、on the phoneとover the phoneの両方が使える。
では、「どちらでもいい」かというと、overしか使えない状況もある。
この「電話で」問題から、どのようなことが考えられるのだろうか?
1.「両方OK」というのは「使い分けの必要がない」ということ?
2.onが定着しているがoverしか使えない場合もあることをどう捉える?
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