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2023年10月の記事一覧

渋谷区の「ハロウィン規制」に不可欠な観光の促進と地域の美観の維持の視点

今日はハロウィンです。

10年ほど前は一部の人たちのみが参加する行事のように思われたハロウィンも、現在では幅広い層から支持を得て、人口に膾炙しているかのようです。

これに対して、2019年には4万人が訪れた渋谷駅周辺では、今年9月に渋谷区の長谷部健区長が「渋谷はイベント会場ではない。ハロウィーンを目的にして来ないでほしい」と訴え、10月5日(木)にも日本外国特派員協会で同様の主張を行い、外国の

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「岸田首相による定額減税実施の指示」はどのような意味を持つか

昨日、岸田文雄首相は政府与党政策懇談会において2024年6月に所得税と住民税の定額減税を実施することを表明するとともに、自民党及び公明党の幹部に減税を含む家系支援の具体策を今年末までに決定するよう指示しました[1]。

岸田首相が示した方針では、所得税を1人当たり3万円、住民税を1万円減らし、減税対象とならない住民税非課税世帯には1世帯当たり7万円を給付するとともに、所得税が非課税の子育て世代には

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注目されるマイク・ジョンソン米国連邦下院議長の手腕

現地時間の10月25日(水)、米国の連邦議会下院は新しい議長に共和党のマイク・ジョンソン氏を選出しました[1]。

これにより、ケヴィン・マッカーシー氏が米国史上初めて下院議長を解任された10月3日(火)から22日にわたり空席であった下院議長の座が埋まることになりました。

ジョンソン氏はルイジアナ州の選出で現在51歳であり、弁護士を経て2016年の連邦議会下院選で初当選し、現在4期目を務めていま

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「改憲への意欲」を示した岸田文雄首相の意欲は本物か

昨日、衆議院本会議で代表質問が行われ、岸田文雄首相が憲法改正について責任を持って取り組むという趣旨の答弁を行いました[1]。

10月23日(月)の所信表明演説においても憲法改正に取り組む意欲を示しているだけに[2]、重ねて改憲への取り組みが強調された形です。

しかし、岸田首相が会長を務めるだけでなく、その一員であることを強く誇りに思っている宏池会は、伝統的に憲法改正問題に対して距離を置いている

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岸田文雄首相の第212回国会における所信表明演説の持つ意味は何か

昨日、衆参両院本会議において、岸田文雄首相が第212回国会における所信表明演説を行いました[1]。

所信表明演説であれ施政方針演説であれ、事実上形式的なものであり、各省庁の要望を網羅した内容になりますし、取り上げる話題もガソリンの価格から憲法改正問題まで多岐にわたるのは周知の通りです。

そのため、今回の所信表明演説に対して「空々漠々とした文字の羅列はもう結構だ」[2]と批判することは、むしろ批

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「指名代走」は「野球の魅力の向上」に寄与するか

去る8月21日(月)、日刊ゲンダイの2023年8月22日号27面に連載「メジャーリーグ通信」の第145回「「指名代走」は「野球の魅力の向上」に寄与するか」が掲載されました[1]。

今回は、今季独立リーグのアトランティック・リーグで導入された指名代走制度について、野球の魅力の向上という目的を達成するためにどのような貢献をなしうるかについて検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しま

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札幌市とJOCの立場から考える「冬季五輪年の一括開催」の得失

国際オリンピック委員会(IOC)が2030年及び2034年の冬季五輪の開催地を一括して決定することになった点について、IOC側の判断の妥当性については昨日の本欄について検討した通りです[1]。

一方、2030年の招致を断念し、2034年以降に向けた活動を行うと表明した札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)にとっては、公式発表の4日後にIOCの総会が一括決定の案を採択するとともに、2034年に開

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「冬季五輪開催都市の一括決定」は適切な施策か

去る10月15日(日)、国際オリンピック委員会(IOC)の年次総会がインドのムンバイで開催され、2030年と2034年の冬季五輪の開催地を同時に決定する案が採択されました[1]。

今回の措置は、気候変動により安定して冬季五輪を開催できる都市が限定されつつある中で、早期に公的な開催地を確保しようというIOCの判断の結果とされています[1]。

確かに、IOCにとって唯一にして最大の競争力を持つ商品

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札幌市は2034年以降に冬季五輪を招致できるか

本日、札幌市の秋元克広市長と日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が記者会見を行い、2030年の冬季オリンピック及びパラリンピックの招致を断念し、2034年以降の大会を目指すことを正式に表明しました[1]。

2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックにおける大会組織委員会の汚職事件や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中で大会の開催を強行したかのように見えた国際オリンピック委

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埼玉県議会自民党県議団の「子ども放置禁止」条例案の取り下げはいかなる意味を持つか

本日、埼玉県議会自民党県議団は、小学3年生以下の子どもを自宅に残したまま保護者が外出することなど報知を禁止する虐待禁止条例の一部改正案について、「県民はもとより全国的に不安と心配の声が広がった」などとして改正案を取り下げる方針を明らかにしました[1]。

今回の改正案については、例えば母子家庭、父子家庭を考えるだけでも、子どもを一人にすることができない場合の保護者の負担を念頭に置けば、保育や教育の

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「鈴木宗男氏の訪ロ問題」の問題点は何か

昨日、日本維新の会は党紀委員会を開催し、今月1日(日)から5日(木)にかけて党に必要な届出を行わず無断でロシアを訪問した鈴木宗男参議院議員から事情を聴取するとともに、委員会に先立って開催した役員会で処分の内容を馬場信幸代表と藤田文武幹事長に一任することを決めました[1]。

日本維新の会の首脳は、鈴木氏がウクライナ問題に関し、現地の報道機関に対してロシアの勝利を確信するかのような発言を行ったことを

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下野竜也さんのNHK交響楽団正指揮者就任に寄せて

本日、NHK交響楽団は下野竜也さんを正指揮者に迎えることを発表しました[1]。

今年7月に外山雄三さんが調整したことで尾高忠明さんのみとなっていた正指揮者だっただけに、どなたかが就任するか注目しておりました。

現在の70歳代以上の日本の指揮者で、NHK響とのかかわりが深いのは、尾高さんを除けば井上道義さんだけとなります。

ただ、井上さんは2024年に引退することを表明しているだけでなく、その

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「ジャニーズ問題」に対してわれわれに求められるのはいかなる態度か

昨日、ジャニーズ事務所が性加害問題からの立て直し策を発表し、所属芸能人のマネジメント業務を手掛ける新会社を設立するとともに、同事務所は被害者救済に専念し終了後に廃業することを明らかにしました[1]。

前回の記者会見でジャニー喜多川氏による性加害を認めたことを考えれば、現在のジャニーズ事務所を新社と旧社に分け、旧社は問題への対応に一定の目途だ着いた後に廃業するという方法は、他の企業においても用いら

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大谷翔平選手の「アジア出身選手初の大リーグ本塁打王」を讃える

現地時間の10月1日(日)、大リーグの2023年のレギュラーシーズンがすべて終了し、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が44本塁打を記録してアメリカン・リーグの本塁打王となりました。

アジア各国・地域出身の選手が本塁打王となるのは大リーグ史上大谷選手が初めてです。

これまでアジア出身の選手は他の国や地域の出身の選手に比べて打撃術では遜色がないものの長打力の点で劣るというのが、球界での通年で

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